業界研究・職種研究徹底ガイド 業界研究

ソフトウエア・情報処理・ネット関連業界

業界の現状と展望

企業から依頼され、システムやソフトウエアを提供する

企業から依頼され、システムやソフトウエアを提供する

ソフトウエア・情報処理業界では、「効率的に仕事を進めたい」、「消費者とのコミュニケーションをスムーズにしたい」など、企業経営に関わる悩みや課題を解決するべく、システムやソフトウエアを開発・販売している。今や、企業での仕事はコンピューター無しでは考えられない。画面に沿って入力すれば書類ができたり、手続きができたりするのは、便利なシステムやソフトウエアがあるからこそ。ソフトウエアには、WindowsやiOSなど機器操作の基本となるOS(オペレーティングシステム)、OS上で動作する表計算や写真撮影、ゲームなど特定の用途や目的のために作られたアプリケーションソフトウエア、両者の中間に位置するミドルウエアの3種がある。

クライアントである企業から依頼され、効率的に仕事ができるよう、また関係者がすぐに同じ情報を得られるようシステムやソフトウエアを企画・設計したり、プログラミング言語を使って開発したりするのがこの業界の主な仕事だ。
業界の構造はピラミッド型といわれ、大規模な情報システムの企画から開発・運用までを一手に請け負う「システムインテグレーター(SIer)」を頂点とし、ソフトウエア分野は「ソフトウエア開発」企業へ、計算処理やデータ入力は「情報処理サービス」会社へ、というように、得意分野ごとに中小企業が業務を分担、最終的に大規模な情報システムができ上がる仕組みになっている。
多重下請け構造が問題だという指摘もあるが、規模の小さな企業の立場が必ずしも弱いというわけではなく、専門分野でのノウハウとスキルを評価されている企業も多い。

拡大傾向のソフトウエア市場規模。近年はSaaSを軸に市場が拡大

富士キメラ総研の「ソフトウェアビジネス新市場2022年版」は、業務システム14品目、CX/デジタルマーケティング9品目、情報分析3品目、コラボレーション11品目、プラットフォーム/インフラ12品目の計49品目の市場について、パッケージ/SaaSの二つの提供形態別に捉え、ソフトウェアビジネス市場の将来を展望。2022年度の国内ソフトウエア市場は、前年度比10.2%増の1兆8,643億円と見込んでいる。うち、SaaSが、同17.5%増の1兆891億円、パッケージが同1.5%増の7,752億円となっている。ペーパーレス化DXの推進、在宅勤務の浸透に加えて、電子帳簿保存法の改正もあり、全体では二桁を超える伸びとなった。提供形態別では、SaaSによる導入案件が増えている。SaaSでは、他社(ベンダー)が作ったクラウドサーバーのソフトウエアを利用するため、サービスの導入コストを安く抑えることができ、短期間での導入も可能。またメンテナンスやアップデートもベンダー側が行うので、そうした面の利用者側コストも抑えることができる。パッケージにも根強い需要が見られるものの、今後もSaaSを軸に市場は拡大すると見られている。
同総研では、2026年度の市場規模は2021年度比で45.5%増の2兆4,607億円にまで拡大、SaaS比率も市場の約68%まで上昇すると予測している。

重要性が増すICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)戦略

コロナ禍で、外出やイベントの自粛が呼びかけられ、社会環境が大きく変化。企業ではテレワークを積極的に導入、学校ではオンライン授業を、医療機関ではオンライン診療の実施と、これまでオンライン化が進んでいなかった領域にもオンライン化が浸透し、デジタル化が進行。また行政でも、デジタル庁を中心に、国や地方自治体が行政サービスをデジタル化するデジタル・ガバメント実行計画が進行している。情報通信技術(ICT)は、国民生活や経済活動の維持に必要不可欠な“Essential Tech”として、これまで以上にその重要性が増している。

ICTには、利用者の接点となる機器・端末、電気通信事業者や放送事業者などが提供するネッ トワーク、クラウド・データセンター、動画・音楽配信などのコンテンツ・サービス、さらにセキュリティやAIなどが含まれる。総務省の「令和4年版情報通信白書」によれば、世界のICT市場(支出額)は、スマートフォンやクラウドサービスの普及などにより、2016年以降増加傾向で推移しており、2021年は前年比12.5増の465.2兆円となっている。
また、国内民間ICT市場規模は、コロナ禍にあっても堅調に推移している。コロナ禍の影響の大きかった2020年度でも前年度比で0.6%増の12兆9,700億円、2021年度は同2.8%増の13兆3,300億円、2022年度も同2.3%増の13兆6,400億円、2023年度は13兆8,800億円と予測している。

これまでもDXを通じて、産業の効率化や高付加価値化は進められており、サイバー空間とリアル空間の融合が進んでいた。アフターコロナでは、人々の活動の場がリアル空間からサイバー空間へと移行していくと想定されている。メタバースと呼ばれる仮想空間の中で様々な活動ができる技術開発が進行しており、ゲームやSNSだけでなく、様々な形でビジネスに取り入れようとする動きが加速している。
そうした移行を妨げる規制や慣行を見直し、垣根を最大限取り除くことが、今後の重要な取組みとなってくる。第5世代移動通信システム(5G)の普及に加えて、IoT、ビッグデータ、AIといったデジタル技術の活用が、これまで以上に重要なものとなっていく。

消費者にとって魅力的なコンテンツを提供する

消費者にとって魅力的なコンテンツを提供する

インターネットやクラウド上の情報、他の機器と連携して機能、動作する電化製品が開発されるなど、新しいメディアとして定着したインターネット。
ネットワーク環境が発達したこともあり、さまざまな情報だけではなく、画質の高いオンラインゲーム、音楽や動画配信など、コンテンツの種類が増えている。
こうしたユーザーにとって便利で楽しいコンテンツやサービスを企画・制作し、提供するのがネット関連業界の主な仕事。他にも、課金や決済の代行、サーバーの維持管理なども行っている。

経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によれば、インターネット附随サービス業(サーバーハウジング・ホスティング業務、セキュリティサービス業務、課金・決済代行業務、ASP業務、サイト運営業務、コンテンツ配信業務など)の2022年売上高は前年比0.8%増の2兆2,605億円、常用従業員は同3.1%増の4万3,875人となっている。

インターネット広告の伸びが順調

スマートフォンの普及で広告市場のあり方も従来とは異なってきている。
テレビと同じく、インターネットコンテンツはほとんどが無料のため、ネット関連企業は、企業から依頼されるコンテンツ内広告やマーケティングなどで利益を出している。

例えば、ファッション通販サイトには自然におしゃれ好きなユーザーが集まるため、広告を出すアパレル企業にとっては、高い広告効果が期待できる。

大手広告代理店の電通がリリースした「2022年 日本の広告費」によれば、2022年の日本の総広告費は、前年比4.4%増の7兆1,021億円と2年連続のプラス成長となった。これまで広告業界を牽引してきた、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ(地上波テレビ・衛星メディア関連)のマスコミ四媒体広告費は、前年比2.3%減の2兆3,985億円とマイナス成長となった一方で、インターネット広告費は、同14.3%増の3兆912億円と3兆円を突破。動画広告需要は引き続き高まっており、2兆円を超えた2019年からわずか3年で1兆円の売上増となった。社会のデジタル化を背景に、総広告費の中に占めるインターネット広告の割合は年々高まっており、39.8%だった2021年からさらに増加し2022年は43.5%を占めている。

業界関連⽤語

ビジネスチャット

テキストによってコミュニケーションをとるためのツールで、従来のメールでのやりとりと比較して手軽に使えることが特徴。顧客からの問い合わせといった社外の人たちとのやりとりだけでなく、社内での情報共有やコミュニケーションツールとしても需要が高まっている。さらに、勤怠管理や経費精算などのソフトと連携させることで業務の効率化を図る企業も増えている。

データサイエンティスト

最近はインターネットやスマートフォンの閲覧記録、各種カードの利用履歴など大量の情報がビッグデータとして収集・蓄積されている。こうしたビッグデータを分析・解析し、有効活用できるよう整理する専門家がデータサイエンティスト。ビッグデータの活用は社会や企業にとって重要な課題。IT技術はもちろん統計解析能力、問題解決能力、ビジネスセンスなど幅広い知識や能力が求められ、世界的に人材不足。

SaaS(サース)・PaaS(パース)・IaaS(イァース)・XaaS(ザース)

ユーザーがソフトウエアをパッケージ製品として購入することなく、ネットワーク経由で提供され、利用料を支払うサービスがSaaS。
PaaSは、アプリケーションを稼動するためのOSやハードウエアを含めたプラットフォーム一式をインターネット上で使えるようにして提供するサービス。IaaSは、仮想サーバーやネットワーク用機器などの情報サービスインフラをインターネット上で提供するサービスのこと。

また、XaaSは、SaaSの概念をさらに拡大したもので、PaaSやIaaSなども含んだ、情報処理に用いられるハード、ソフト、アプリ、開発環境などもインターネットを通じて提供する。

O2O(オーツーオー)

Online to Offlineの略で「On2Off(オンツーオフ)」と呼ばれることもある。 ネット上の人を、実店舗などに誘導するといった、インターネット上の情報から実際の購買に影響を与えるようなマーケティング施策。販売店や飲食店がネット上でクーポンを発行し来店を促すというケースで、口コミ情報や位置情報を集めたサイトにも、こうした手法を取るケースが多い。

情報収集に敏感なスマートフォンユーザーほど、買物や食事前にクーポン情報に触れるなど、行動に結びつきやすいとされる。

RPA

Robotic Process Automationの略語で、繰り返し行うキーボード入力やクリックなど、定型的なホワイトカラーのデスクワークを、パソコン内のソフトウエア型のロボットが代行・自動化すること。付加価値の低い事務作業や反復作業をロボットに代行させることで、労働生産性の向上を目指している。

スーパーアプリ

一つのアプリの中に多種多様な機能を持つアプリを統合して、生活に必要なあらゆるサービスを提供できるよう開発されたアプリ。個別に複数のアプリを使わなくても、スーパーアプリがあれば事足りるため、ユーザーにとっては利便性が高まる。スーパーアプリは欧米ではなく、アジアや中南米、アフリカなどで普及しており、中でも中国テンセント社のWeChatとアリババグループのAlipayは有名だ。他にも、インドネシアのGojek、インドのPaytm、シンガポールの「Grab」、コロンビアのRappiなどがある。

ハイブリッドクラウド

異なる複数の利用者と共有するパブリッククラウドや、利用者が専用で使うプライベートクラウド、利用者自身が管理する機器で運用するオンプレミスなどを組み合わせて、アプリケーションやシステムを稼動させるための制御や自動化を実現するクラウドインフラのこと。なお、複数のクラウドを利用することをマルチクラウドと言い、プライベート・クラウドも含め、複数のパブリック・クラウド間を連携するハイブリッド・マルチクラウドという概念もある。

CRM

Customer Relationship Managementの略で、顧客との関係を維持・管理するためのシステム。連絡先や購入履歴、メールなどのやりとり、商談情報など、従業員と顧客との関係を一元的に把握することができる。営業やマーケティング、経営戦略に活用することができ、近年はクラウド化が進んでいる。

IT導入補助金

業務の効率化やDXの推進、セキュリティ対策のためのITツールなどの導入費用を支援する制度。インボイス制度導入時や、安価のITツールの導入時でも利用が可能で、補助額は最大で450万/者、補助率は1/2~3/4。

ChatGPT

ChatGPT(Generative Pre-trained Transformer)は、アメリカのスタートアップOpenAIが開発した、Chatbot(チャットボット:人工知能を活用した自動会話プログラム)。2022年11月にリリースされるや、幅広い質問にまるで人間と対話しているかのようなクオリティーの高い回答を返してくれることから、わずか5日で100万人ユーザーを、2023年1月には全世界で1億人を超えるユーザーを獲得したとされる。ChatGPTは、音楽、小説、脚本、詩、歌詞、さらには設問に人間の平均同等、またはそれ以上の解答を生成することができるなど、高い能力と幅広い機能を持ち合わせていることが確認されている。一方で、質問者に架空の店舗を紹介するなど、ファクトチェックが必要な事実誤認も多いと言われており、賛否が分かれている。無料版と機能を向上させた有料版(ChatGPT Plus)があり、日本でも2023年2月には、有料版がリリース(リリース時の月額利用料は20ドル)されている。

どんな仕事があるの︖

ソフトウエア・情報処理業界の主な仕事

・システムエンジニア
営業、IT、人事、会計など、業務に使うコンピューターシステムやソフトウエアを企画し、コンピューター言語による開発や導入を提案・管理する。文理問わず採用を行っていることが多い。経験を経て、プロジェクトマネジャーになるケースが多い。

・プログラマー
プログラミング言語を使いこなして、実際にシステムを開発する。

・ネットワークエンジニア
コンピューターをつなぎ、情報をスムーズにやりとりできるネットワークをつくり上げる。

・営業
クライアントの要望や課題を聞き出し、その要望をかなえる情報システムを提案・販売する。セールスエンジニアやシステムエンジニアとチームで仕事をすることが多い。

・セールスエンジニア
クライアントの要望や課題を聞き出し、その要望をかなえるソフトウエアや周辺機器の詳しい情報を提供する。営業やシステムエンジニアとチームで仕事をすることが多い。

・データサイエンティスト
ビッグデータの中からクライアントのニーズに合ったデータの取得方法や利用方法などをアドバイスしたり、データの解析などを行ったりする。ビッグデータの活用に注目が集まるとともに、データサイエンティストにも注目が集まっている。

ネット関連技術業界の主な仕事

・プランナー
新しいコンテンツを企画したり、「もっと便利に」「もっと使いやすく」など改善したりするためのプランを立てる。

・法人営業
広告主である企業に効果的な広告プランを提案したり、法人向けのインターネットサービスがある場合は、その効果的な使い方やサービスを案内・販売したりする。

・マーケティング
ユーザーをさらに増やすための調査や、さまざまなメディアを使ったサイトの知名度向上を行う。

・WEBエンジニア
ユーザーがサイトを快適に操作できるように、WEB技術を使ってネットワークやシステム、アプリケーションを整える。

・WEBデザイナー
サイトや広告を、WEBのプログラミング言語や技術を使ってデザインする。

ソフトウエア・情報処理・ネット関連業界の企業情報

※原稿作成期間は2022年12⽉28⽇〜2023年2⽉28⽇です。

業界研究・職種研究 徹底ガイド

ページTOPへ