ドローン・アグリテック業界の「現在」と「未来」
国内市場は約1,800億円。国交省がレベル4を解禁
ドローンの利用には航空法が適用され、定義された飛行レベルが1から4まである。レベル1は、目視内で操縦飛行するもので、農薬散布や映像撮影などで使われている。レベル2は自動・自律飛行による目視内飛行で、空中写真測量、太陽光パネルの点検などの利用例がある。レベル3は無人地帯での目視外飛行で、離島や山間部への物資や荷物配送などで一部実用化している。レベル4は有人地帯でも目視外飛行できるもので、都市部での配送、災害支援の拡大などが想定されている。
ドローン市場は、機体メーカー、ドローンを使用したサービス提供、管理や保険、機体整備などを行う周辺サービスで構成される。民間調査機関によると、ドローンの世界市場は2018年の約1兆6,000億円から、25年には2兆9,000億円、国内市場は2020年度の1,800億円から、25年度には約6,500億円に成長すると予測している。国内では機体よりも、サービス市場が大きいという。
国内市場の拡大を見込むのは、国による規制緩和だ。国土交通省は22年12月、航空法改正を受けて、強度や構造、性能などの機体の認証、知識や技能などを証明する操縦者技能証明の取得を前提として、レベル4を解禁。無人配送などの物流、インフラ設備の維持管理、測量だけでなく、自動巡回による警備、立ち入り困難な場所での災害対応、医療分野など新規サービスの拡大が期待されている。
機体の国産化が進む。標準機体開発で低コスト化
一方で、機体の国産化が急速に進みそうだ。ドローンの機体は、国を挙げて開発してきた中国製が世界市場の8割程度を占めている。しかし、日本政府が20年9月、情報漏えいなどのセキュリティ対策が担保されたドローンの政府調達を行う方針を表明したことにより国産の機体供給への期待が高まった。
国もドローンの国産化を支援している。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020 ~ 21年度の2年間、政府調達を想定した小型の空撮ドローンを民間企業と共同で開発し、21年12月から販売を開始した。このプロジェクトには機体や主要部品の標準化、設計・開発、さらに量産体制への支援も含まれており、標準技術を利用することで、中国製などと比べコスト高とされる国産ドローンの低コスト化も図る考えだ。こうした国の方針もあって、すでに大手企業やベンチャー企業などが続々と参入し始めている。機体の技術開発や新しいドローンサービスが今後拡大していきそうだ。
農業のドローン利用が進む。アグリテックで新規就農を支援
国内のドローン利用は、農業分野が比較的早かった。農薬や肥料散布への自動化のためで、従来の無人ヘリコプターに比べて小型で安価なドローンが使用されている。現在では農薬散布だけでなく、肥料や種まき、苗木の運搬、農作物の育成状況のデータ収集、害獣対策などに用途を拡大している。
ドローン利用だけでなく、人手不足や高齢化に直面する農業ではIT技術の導入が進められている。アグリテックと呼ばれるもので、ロボットやビッグデータ、AIなどのICT技術の活用が進んでいる。
農林水産省は「スマート農業」プロジェクトとして19年度から全国205地区で実証事業を展開。自動走行トラクターや田植機、自動収穫機などの導入に加え、人工衛星で撮影した農場の画像解析、生育状況の診断など、これまで経験や勘に頼っていた作業を可視化。重量物の運搬などでは、農業用ロボットスーツも実用化された。アグリテックにより、農業への参入ハードルが下がり、新規就農者の拡大が期待されている。