教育業界の「現在」と「未来」
学習塾の売上高は5,536億円。集団から個別指導へ
教育産業は、資格スクール、語学教室、通信教育、学習塾、保育園など幅広く、その市場規模は2.5兆~2.8兆円と推測されている。このうち、経済産業省の特定サービス産業動態調査によると、2021年度の学習塾の売上高は前年度比8.7%増の5,536億円、受講生は同5.0%増の延べ1,476万人だった。受験指導の進学塾と、学校の学習を補う補習塾に分かれる。子どもへの教育費は増加傾向で、安定した需要が見込める。ただ、少子化による受講生の奪い合い、集団指導から個別指導への流れによるコスト増、20年から開始の小学校での英語・プログラミング教育など新規需要への対応が課題だ。
資格取得の給付対象拡充。外国語教育に塾も参入
資格スクールは、資格取得や、転職講座の受講者が増えている。資格取得に給付金を出す厚生労働省の教育訓練給付制度も、給付対象の拡充が続いていることも追い風となっている。外国語会話教室の21年度売上高は、特定サービス産業動態調査によると、前年度比2.6%増の714億円、受講生は同8.6%減の延べ450万人。大手が運営するチェーン教室や個人経営、そして小学校の英語教育が始まったことで、学習塾の参入もあり、受講生獲得の競争が激しくなっている。
EdTechでICT化が進行。リカレント、リスキル教育が拡大
学習塾、外国語会話教室、通信教育などでは、ICTやAIなどの最先端技術を活用したEdTech(Education+Technology)が進む。パソコン、スマートフォン、タブレット端末を利用し、どこでも教育を受けられることを指す。英会話やプログラミング教育、さらに社会人向けリカレント教育でオンライン化が進んでいる。AIで最適化できるデジタル教材や定額制のオンライン教育サービスなども始まっている。
これに伴い、社会人向けのリカレント(recurrent)、リスキル(re-skill)教育が拡大している。リカレントとは、いったん職場を離れたり、夜間や休日などを利用したりして個人が教育機関で学び直すこと。これに対しリスキルは、業務に関する内容を専門の教育機関でより深く学び、自社の生産性向上や新規事業の創出などにつなげることが目的だ。
増え続ける保育需要。待機児童は減少続く
一方、保育園は共働き世帯の増加により需要が増えている。厚生労働省の保育所等関連状況によると、2022年4月時点の保育所定員は前年同期比2.7万人増の約304万人、待機児童は同2,690人減の約2,944人。政府の新子育て安心プランでは、24年度までに14万人の保育の受け皿を確保する目標だが、すでに13万人分を確保済みとなる計算だ。ただ、保育士の養成や確保が課題となっており、待遇改善などが求められている。