化学・石油業界の「現在」と「未来」
2020年の出荷額は約38.7兆円。機能性化学品を強化
総務省・経済産業省の2020年経済構造実態調査によると、化学工業の売上金額は、前年比1.5%減の38兆7,495億円だった。総合メーカーは、石油製品のナフサからエチレンなどの基礎化学品を製造。約半分が石油化学原料となり、残りは化粧品・薬品原料、塗料、化学肥料などに向けられる。ただ、石油化学事業は競合が多く低収益のため、各社とも半導体素材やリチウムイオン電池材料、液晶ディスプレー用フィルムなどの高付加価値の機能性化学品を強化している。
石化事業で再編の予想。求められる環境への配慮
石油化学事業では、業界再編も予想される。業界最大手の三菱ケミカルグループは23年、石油化学とコークスなどを製造する炭素事業を子会社化。本体は半導体材料やヘルスケアなどの成長分野に特化する戦略だ。これに伴い、他社との連携などが起きそうだ。
一方、22年にはプラスチック資源循環法が施行され、製造事業者などは自主回収・再資源化計画の作成など環境配慮が求められている。生分解性プラスチックや植物などの有機資源の利用拡大が業界共通の課題だ。
2020年度の売上高は約14兆円。 ガソリン需要の減少続く
石油連盟によると、石油産業の2020年度売上高は14兆866億円、石油精製と元売り合わせた従業員数は約2万2,200人。売上高はコロナ禍で民生・産業用とも減少。前年度比で約5兆円余り減少したが、巨大産業には変わりない。ただ、主力のガソリン需要は低下傾向だ。経済産業省によると、国内需要は26年度で4,080万キロリットルと、21年度実績見込み比で9.8%減ると予測している。自動車の燃費改善に加え、ハイブリッド車や電気自動車などエコカーの普及が要因だ。
2030年の石油シェアは31%。脱化石燃料事業を拡大
それでも国の政策の根幹となる第6次エネルギー基本計画では、2030年の1次エネルギー供給に占める石油のシェアを31%とし、引き続き重要な位置付けとしている。
ただ、政府のカーボンニュートラル政策により、化石燃料である石油やガス需要の大幅な拡大は見込めない。そこで各社とも、洋上風力発電や新燃料として期待されているアンモニア事業など、脱化石燃料事業を強化している。これに加え、水素と二酸化炭素を原料とした合成燃料などの技術開発を進める。