メタバース・デジタルマーケティング業界の「現在」と「未来」
ゲーム、ビジネスで活用が始まる。法体系の整備などが課題
メタバースとは、超越を意味する「メタ」と、世界・宇宙を意味する「ユニバース」を合わせた造語で、コンピュータの中に構築された三次元の仮想空間と、それを用いたサービスを指す。利用者はアバターなどと呼ばれる自分の分身を用いて、仮想空間の中で人とコミュニケーションを取りながらゲームをしたり、買い物をしたりできる。すでにゲームやビジネスの場では実用化が進んでいる。
ゲームの場合、ネット上の取引を相互に監視し合い、データの改ざんを防ぐブロックチェーン技術が応用される例もある。この技術は暗号資産の取引で使われているが、ゲーム内ではデジタルデータを作者や所有者がNFTと呼ばれる固有の資産として認定することで利用できる。NFT化されたメタバー
ス上のアイテムや土地、建物などを使って勝敗を競ったり、アイテムを仮想通貨で売買したりするなどの楽しみ方ができる。仮想通貨取引所も開設されており、現金化も可能という。国内外の企業がソフト開発に乗り出しており、実際に販売されているものもある。
ただ、楽しむためだけでなく、金銭を伴う取引が広まるには課題もある。経済産業省は2021年7月「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析」をまとめた。その中で、仮想空間内の所有権や著作権、権利侵害や損害賠償などは現行の法体系では不十分と指摘。メタバースゲームを普及させるにはこれらの法整備を進めるほか、VR(仮想現実)を気軽に楽しめる機器の低価格化、三次元ソフトの人材不足の解消などが課題としている。
VR技術でよりリアルに。バーチャル展示会も開催
メタバースはビジネスへの活用も始まっている。コロナ禍によって移動しにくい環境が続いているため、アバターでオンライン会議に参加して話し合ったり、VR空間を利用して、自宅にいながら同僚と作業環境を共有するなどリアルな環境も可能に。バーチャル観光や旅行、アバターが接客する仮想店舗、ショールームなどのサービスも始まっている。
三次元空間を利用すれば、バーチャル展示会も可能だ。21年には「バーチャルマーケット」という展示会も開かれ、延べ100万人が来場し、80以上の企業やアーティストが出展するなどの成果を収めた。仮想空間を構築するためのプラットフォームを提供するサービスも出ており、今後も活用する事例が増えそうだ。
デジタルマーケティングに注目。リアルとWEB データの双方を活用
一方、デジタルデータをフル活用するデジタルマーケティングも注目を集めている。これまでも、広告やSNSなどによりWEBサイトにアクセスしたユーザーの動向を分析するWEBに特化したマーケティング手法はあった。これに対しデジタルマーケティングは、実店舗での商品やサービスの購買履歴や広告による販売効果など実際のデータに加え、サイトへのアクセス、ネット広告、メール、SNSなどのWEBデータを活用し、ビッグデータ技術やAIなどを使ってデータを属性別に検証する手法。販促効果を定量的に分析して、さまざまなタイプの顧客に対して戦略的にマーケティングを行う手法だ。リアルとWEBの双方のデータを活用するため、オムニ(全ての)チャンネルと呼ばれている。
スマートフォンの普及により、ネット取引が増えているほか、SNSや口コミサイトを利用した購買行動も増えていることから、ユーザーの行動に合わせた広告やクーポンなどの配信が可能となる。前述したバーチャル展示会もデジタルマーケティングの一環といえ、今後もさまざまなサービスが展開されていくことが予想される。