次世代自動車業界の「現在」と「未来」
EV、PHVは世界で660万台。各国とも電動化目標を掲げる
次世代自動車は、電気モーターとガソリンエンジンで走るハイブリッド車(HV)、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)、電気モーターだけで走る電気自動車(EV)、水素と酸素の反応でエネルギーを得る燃料電池車(FCV)などを指す。このうち、HVは日本メーカーが先行し、2021年には世界で300万台以上の市場となっているが、温室効果ガスの一因となるガソリンエンジンも駆動源とするため、今後の主流は電気駆動性能を高めたPHV、EV、FCVだ。
各国とも脱ガソリン車政策を進める。欧州は35年までに新車販売の全てをEV、FCVに規制。アメリカは30年までに新車の半数をEV、FCVに、中国も30年のEV化率を40%とする計画。日本も35年までに電動車を100%とする目標だ。IEA(国際エネルギー機関)によると、21年のEVとPHVの世界販売台数は、前年比2.2倍の660万台で、30年には新車販売の35%、累計で2億5,000万台に達すると予測する。中でも、中国のEV販売は急速に伸びており、21年で291万台と世界で最も多く、輸出にも力を入れている。日本や欧米メーカーも開発に躍起で、今後も市場競争が激化していく。
一方のFCVは、EVと比べて航続距離が長く、水素の充填時間が短いなどの特長を持つ。現状では価格が高いことから普及度はEVに比べて遅いが、量産化が進めばコスト低下が進むとみられる。
EV、FCVに共通する課題は、充電、水素供給の体制整備だ。IEAによると、21年の充電設備は世界で180万カ所。このうち中国が65%を占め、最も多い。PHVは家庭の充電設備の普及と、急速充電設備の整備が待たれる。一方の水素ステーションも設置が増え、次世代自動車振興センターによると、日本は163カ所で最も多い。経済産業省は30年までに900カ所の整備を計画しており、EVとともに、FCVの拡大も目指す。
自動運転はレベル3に。IT企業も開発に乗り出す
次世代自動車のもう一つの重要技術が自動運転だ。自動運転の水準はレベル1から5までに分かれる。レベル1は前走車追従などの運転支援、レベル2は加減速とハンドル操作を支援する部分自動運転、レベル3は緊急時にドライバーの補助が必要な条件付き自動運転だ。日本では20年からレベル3の公道走行が解禁されており、すでに商用車の販売も行われている。
さらにレベル4は、専用道路や一定の敷地内などで運転者なしで運行できるもので、すでに国内外で実証実験が始まっている。レベル5はこれらの条件なしで、無人運転できるレベルだが、法規制の整備や安全性の担保などの課題が多く、実現時期は見通せていない。
ただ、自動運転はセンサーやAI、運転ソフトなどIT関連の技術が不可欠なため、自動車メーカーだけでなく、広い分野の企業が開発に乗り出しており、企業間で連携する動きも活発化している。
「空飛ぶクルマ」の開発が進む。ドローンへの応用を期待
旧来の夢の実現として期待されるのが「空飛ぶクルマ」だ。ドローンを発展させて、無人で遠隔・自動制御するもので、タイヤを付けて陸上でも走るタイプも開発されている。こちらもレベル1から4まであり、1は目視で遠隔操縦、2は目視で自動・自律飛行、3は無人地帯で目視によらない自動飛行、4は有人地帯での自動飛行となっており、中には複数の人を乗せて飛行する計画もある。レベル4を実現するには航空法の規制、落下防止、空中の安全確保、離着陸場の確保などハードルは高い。日本を含めてベンチャー企業などが開発を進めているが、当面は開発過程で生まれた飛行制御技術をドローンなどに応用することが期待されている。