食品業界の「現在」と「未来」
売上金額は35.4兆円超。冷凍食品が伸びる
総務省・経済産業省の2020年経済構造実態調査によると、食料品製造業の売上金額は、前年比0.1%減の35兆4,282億円。企業数は1万9,936社と多い。売上金額の大きい順では、畜産食料品製造業が9兆9,490億円、パン・菓子製造業が5兆2,415億円、水産食料品製造業が4兆8,033億円、酒類製造業が3兆4,913億円、調味料製造業が2兆7,746億円などとなっている。全体の市場が安定して推移しているのは、生活必需品という側面が大きい。
特に市場が伸びているのが、冷凍食品だ。日本冷凍食品協会によると、21年の国内生産額は同5.2%増の7,371億円。このうち家庭向けは3,919億円で、初めて業務用を上回った。外出自粛や女性の社会進出による内食需要の拡大を表している。
生産性向上と人員不足が課題。農水省はスマート産業化を支援
ただ、農林水産省は食品製造業共通の課題として、低い労働生産性と人員不足を指摘している。労働生産性については、1人当たりの年間付加価値額が製造業の740万円に対し、食品製造業は480万円と、6割程度にとどまると指摘。人手に頼る製造工程が多く、多品種少量生産のため自動化も難しいことなどが要因だ。人員不足は、非正規やパートタイマーが多く、流動性が高いことも一因。
そこで農水省は19年に「食品製造業における労働力不足克服ビジョン」を策定。AIやロボット、IoTなどで製造・品質管理過程を自動化するスマート食品産業実証事業や、食品産業イノベーション推進事業などを展開し、自動化などの革新を支援している。
清涼飲料、2年ぶりプラス。加工食品・酒類の輸出拡大続く
全国清涼飲料連合会によると、21年の清涼飲料販売額は前年比2.5%増の3兆8,909億円と、2年ぶりにプラスとなった。内訳は、炭酸飲料が同4.9%増の7,495億円、ミネラルウォーターが同8.5%増の3,319億円など。
一方、国内の酒類市場は若年層のアルコール離れなどで減少傾向だ。国税庁の酒レポートによると、20年の成人1人当たり消費量は75リットルと、ピーク時の1992年(101.8リットル)に比べ、約26%減っている。
食品、清涼飲料、酒類とも、人口減により国内市場は減少が予想され、収益源の多角化や海外市場の開拓が必要だ。農水省によると21年の農林水産物・食品輸出額は前年比25.6%の1兆2,382億円と、初めて1兆円を超えるなど輸出については好調。このうち、加工食品は同22.8%増の4,594億円。酒類もウイスキーが同70.2%増の461億円、日本酒も同66.4%増の401億円となっている。