鉄道・航空業界の「現在」と「未来」
鉄道事業の売上金額約8.1兆円。2021年度の旅客輸送は回復傾向
総務省・経済産業省の経済構造実態調査によると、2020年の鉄道事業の売上金額は、前年比3.8%減の8兆1,990億円だった。ただ、国土交通省の鉄道輸送統計では、2021年度の旅客輸送は前年度比6.4%増の約188億539万人と3年ぶりに増えた。内訳は、JR各社が同5.3%増の約70.6億人、民間鉄道が同7.1%増の117.4億人。JRのうち、新幹線は同25.0%増の1.9億人と、いずれも前年のコロナ禍の打撃から回復傾向を示している。鉄道貨物輸送は同0.5%減の約3,891万トン。
非鉄道分野を拡大。時間帯別定期なども検討
テレワークやテレビ会議の普及、出張の抑制などで、鉄道旅客はコロナ前の水準には戻らないとの予測もある。このため、鉄道各社は駅構内にワークスペースを設けたり、物販店舗を増やしたりなどの増収策を講じているほか、不動産やホテルなど非鉄道分野を強化する動きが相次いでいる。
運賃でも、混雑緩和を目的とした時間帯別定期券、回数制限があるものの割安な定期券発行や、季節・時間帯別の料金制など、多様なサービス展開を検討している。
航空運輸業の売上金額は約3.8兆円。ANAがLCCの新ブランドを立ち上げ
2020年経済構造実態調査によると、航空運輸業の売上金額は、前年比3.8%減の3兆8,405億円だった。国交省の航空輸送統計によると、2021年度の国内定期航空旅客数は前年度比47.2%減の4,969万人、国際旅客は同20.6%減の176万人。こうした中で、LCC(格安航空会社)のソラシドエアとAIRDOが22年10月に共同持ち株会社「リージョナルプラスウイングス」を設立するなど、業界再編も起きている。ただ、国の水際対策緩和に加え、羽田空港の国際線発着枠拡大など国際線需要復活への期待は高い。ANAホールディングスは中距離のLCCブランドとして、子会社エアージャパンの国際線を23年後半に新ブランド「Air Japan」として強化する方針だ。
燃料の脱炭素化も課題。バイオ技術の開発が進む
航空業界は脱炭素化が課題。国際民間航空機関は、航空機による二酸化炭素排出量を21年以降は19年レベルに抑える方針。日本も30年の航空機燃料使用量のうち、10%を廃食用油やエタノールなどを原料としたバイオ燃料とする計画で、航空会社や石油会社などがバイオ燃料の技術開発に取り組んでいる。