高専生の就職事情

就職と進学、どちらを選ぶ?

広がる選択肢

5年間にわたって実践的な技術教育を受けてきた高専卒業者が、技術者に求められる体系的な知識と専門的な技術を備えた「即戦力」としてさまざまな業界で活躍していることは、「学校推薦と自由応募、どちらを選ぶ?」でご紹介した通りです。一方、卒業後の進路として専攻科進学や大学編入などを選ぶ高専生も増えています。では、専攻科進学や大学編入を選んだ場合、就職にどのような影響があるのでしょうか。ここでは、高専卒業後の進学状況や就職活動のポイントなどをご紹介します。

高専卒業者の5人に2人は進学を希望し、専攻科や大学で学びを深める

高等専門学校の状況別 卒業者数
(出展)文部科学省・厚生労働省「学校基本調査(令和3年3月卒業者 9,710名対象)」

2022年3月に高専を卒業した9,710人の学生のうち、大学などへの進学を選んだ人は3,725人。全卒業者数の38.4%を占めており、およそ5人に2人が進学を選んでいることになります。現在、高専に通っている皆さんも、一度は進学を検討したことがあるかもしれません。

高専卒業生に進学の道が開かれたのは、今から40年ほど前のこと。長岡技術科学大学および豊橋技術科学大学が設置され、高専卒業生を受け入れるようになりました。その後、さまざまな大学が高専からの編入学を受け入れており、今では大学編入は一般的な進路の1つとなっています。実は大学編入の場合、高専で学んだ分野に該当する学問領域だけでなく、他学部にも門戸が開かれています。そのため、「高専で機械工学を学び、大学では経済学を専攻する」といったことも可能です。高専で実践的技術を身に付け、さらに他分野を大学で研究できるのですから、卒業後のキャリアにも広がりを持たせることができます。

もちろん、高専卒業者が専攻科進学や大学編入を選ぶ大きな目的は、高専で学んだ分野をさらに究め、研究能力を高めることにあります。専攻科や大学卒業後、大学院の修士課程に進む学生も珍しくありません。

では、高専を卒業してすぐに就職する場合と、専攻科や大学などを経て就職する場合では、どのような違いがあるのでしょうか。

職種や初任給…。専攻科や大学などへの進学を選んだ場合のメリットとは?

高専卒業後、大学などに進学した場合の最大のメリットは、最先端の研究に取り組めることにあるでしょう。加えて、大学や大学院なら、他学部の学生と交流することでさまざまな価値観に触れ、コミュニケーション力も高められます。高専で身に付けたものづくりに関する実践的な技術と、大学や大学院で身に付けた研究能力やコミュニケーション力を生かして、研究・開発職を目指す学生もいるようです。

また、学部や大学院を修了予定の学生であれば、就職活動時、高専卒の採用枠をもっていない企業にもエントリーできます。「幅広い選択肢の中から志望する企業を選びたい」「研究職や開発職に就きたい」と考えているのなら、大学や大学院などへの進学を検討することをオススメします。

また、同じ企業でも学部卒、大学院修了者、高専卒で初任給に差があるケースもあります。気になる企業があったら、まずはマイナビで初任給など待遇面の情報をチェックしてみましょう。

入社して10年、20年経った時、キャリアに違いは出るのか?

キャリアの違いについても考えてみましょう。当たり前のことですが、「就職」は皆さんの人生において大きなターニングポイントとなるものです。自己分析を行ったり、企業や業界の研究をしたり、さらにはエントリーシートを書く練習や模擬面接を受けたりと、準備だけでもやるべきことがたくさんあります。しかし、就職はあくまでも社会人のスタート地点に立つことに過ぎません。志望する企業から内定をもらって満足するのではなく、就職する企業でどのようなキャリアを築いていきたいのか、長期的な視点で考えておくと良いでしょう。

例えばメーカーに就職し、機械設計のエンジニアとしてキャリアをスタートしたとします。数多くの製品開発プロジェクトに参加し、設計のスキルを磨いた後、どのようなキャリアが開かれているのでしょうか。エンジニアの道を極める人もいるかもしれません。プロジェクトのリーダーや所属部門の責任者など、マネージメントに携わる人もいるかもしれません。マイナビや企業の採用サイトなどで、教育・研修制度やキャリアパスなどもチェックしてみましょう。

これまでご紹介したとおり、高専卒業者の多くが技術職に就いているものの、大学や大学院などに進学して研究能力を養って開発職を目指す学生もいます。高専で学んだ技術を生かして、どのような仕事に就きたいのか。そして、どのようなキャリアを築いていきたいのか。卒業後のキャリアをイメージして、望む職種に就くために何をすべきかを調べ、早い段階から準備しておきましょう。

最後に、実践的技術者の養成を目的に設立された高専は、設立から60年近く経った今も優秀な人材を社会に送り出し、“ものづくりの現場”を根底で支えています。つまり、高専生の皆さんは、社会に求められる人材であるということ。自信を持って就職活動に臨み、「こうなりたい」と心に描いたキャリアをかなえてください。

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