日本経済新聞 連動特集 新卒採用広告特集 企業から学生へのメッセージ

育て、育つの時代 「納得できる選択」へ価値観深めて

「エントリーシート(ES)の書き方」以前に書くことが苦手。インターンシップと本選考はどう違う?就活軸どころか「やりたい仕事」が分からない……今さら聞くに聞けずに悩む就活生も少なくないはずだ。そうした疑問へ、企業の人事・採用に詳しい人材研究所の曽和利光社長が答えた。大上段に構えずとも「好き嫌い」のような身近な心から自分を見つめ、価値観を深める―。回答からは「納得できる選択」に必要な心構えが見えてきた。

PROFILE

人材研究所 社長曽和 利光

企業人事部へのコンサルティングや新卒・中途採用の就職活動者に向けた情報発信を各種メディアで行う。

Q1:重要なESの作成、生成AI(人工知能)を使ってもいいの?

A:結論から言えば、生成AIを使ってESを書くのは「アリ」です。文章作成やプレゼンなどのコミュニケーション能力は入社後にも伸ばせる「結晶性知能」で、それらを業務で直接問われるマスコミやコンサルティングなど一部の業界を除けば、さほど重視されないと考えていいと思います。

昨今は業務で生成AI利用を進める企業も増えています。採用担当者が見るのは、頭の回転や暗記力など生まれつきの「流動性知能」や、価値観・性格と自社の相性です。重要なのは内容で、文章技法は二の次。自力で書くに越したことはありませんが、分かりやすい文章にするために生成AIで作成するのも、知り合いに添削を頼むのも、企業にとって大差はないということです。

考えるべきはむしろ、学生の皆さんの気持ちです。生成AIで作ったESが選考を通過しなかったら、自分の力で書かなかったことを後悔するかもしれません。自分が納得できる行動をとることが何よりも大事でしょう。

Q2:インターンの選考、結果は本選考にも影響する?

A:企業の魅力ややりがいを知る機会として多くの人がインターンに応募、参加したことでしょう。そこで選考に通らなくとも、本選考の道が閉ざされるわけではないので、心配することはありません。インターンで学生が諦めてしまうのを危惧し、本選考への再応募を呼びかける会社もあります。再挑戦の価値は十分にあります。

時期が早く、ES作成や面接に慣れていない学生が多いインターンでは、自然と自己アピールの得意な人が採用されやすくなります。でもその後、自分で練習し、また他社の選考などで経験を積めば、そうした点はどんどん改善されるはずです。インターンのESや面接を通過できなくても、本選考で評価が変わる可能性は高いのです。

半面、インターンは企業もじっくりと学生を観察できます。面接より精度の高い分析をしているので、ES・面接は突破したものの、インターンに参加した際に確かな手応えを得られなかった、という人は、本選考へしっかり対策を練り直す必要があるかもしれません。

Q3:「やりたいこと」「やりたい仕事」が分からないのです……

A:最近はやりたいことややりたい仕事など自分の「就活軸」を早くから固めている人も多いようですが、それがなくても焦る必要はありません。選択肢が広いということでもあるので、自分が「やりたい」でなく「できる」ことから考えてみましょう。

具体的には自分の能力や性格、価値観を洗い出し、それぞれどんな職業が向いているかを分析します。他人に相談しても、職業適性の診断ツールを使っても構いません。「できること」が分かれば、それに適した職業を考えます。それを足がかりに企業選びを進める、というやり方です。

頭で考えず、心に聞くのも手です。誰でも好き嫌いはあるはずで、就活軸はそれを企業に当てはめるということです。就活軸が見えないという人は、価値観を言語化できていないだけなのだといえます。例えば、人気企業ランキングなどを見て「何となく」でよいので好きな企業と嫌いな企業を10社ずつ選ぶ。10社には何か共通性があるはずで、そこから見えてくる方向性が自分の価値観、就活軸となっていくでしょう。

Q4:初めての企業研究、各社のデータはどう読む?

A:毎年、就活生の意識調査やアンケートを見ると、学生の7〜8割が企業選びの決め手に「一緒に働く人」を挙げている印象があります。入社後のエンゲージメントにも関わる職場のリアルな雰囲気は、事前にしっかり把握しておきたいところ。その際に参考になるのが、企業が公開している各種データです。

従業員の平均年齢や男女比は、とくに職場をイメージしやすい数字といえます。新卒採用の比率が高ければ同年代が一体感を持って働いている、中途採用者の比率が高い企業は自立したプロ集団、などといった分析も可能です。もっとも数字への評価は人それぞれ。例えば、定着率の低さは安定志向の人からすればマイナスかもしれませんが、切磋琢磨できる環境で成長を望むなら好材料です。自分のキャリア観と照らし合わせて判断することが大切です。

企業のトップ層の多くは職歴も公開しています。優秀な人材になるためにどのようなキャリアを積んできたのか。職歴と結果を見比べるのも参考になりますよ。

Q5:複数社から内定、どこに入社するか悩みます。

A:最終的に入社企業をどう選ぶか。仕事をする以上、やはり「達成」を体感できることが大切です。山登りに例えるなら、一つの方法は高い山を登り切ることです。長い道のりでしょうが、やりきる力がある人は売り上げや事業規模が最も大きい企業で能力を伸ばせると思います。

自分でリスクをとれる人や、うまくいかなくてもすぐ切り替えられる人なら、発展過程にある成長企業に身を置き、会社と共に高みを目指す方法も選択肢です。小さい山を数多く登る道もあります。好奇心が強い人は、多角的な事業を展開する企業で経験を積み、高くはなくても複数の山で頂上を目指すのも面白いでしょう。

それでも迷うなら、面接時の自分の感触や、内定者同士の情報交換を基に、自分を一番求めてくれている会社を選ぶのも手です。採用時の評価が高ければ入社後、大きな案件を任される機会も多いはずです。ぜひ自分らしい働き方ができて、自分の市場価値を高められる職場を選んでほしいと思います。

企画・制作=日本経済新聞社Nブランドスタジオ

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