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精密・医療機器業界

業界の現状と展望

身近なものから産業用まで幅広い製品を提供

精密機器業界は、ソフトウエアや電子制御によって精密な精度で動作させる機器をつくり、国内外に販売している。身近な存在の時計やデジタルカメラなどの光学機器から、産業用の計測機器検査機器など、精密機器業界がカバーする範囲は広く、医療機器も含まれる。精密機器は日本がこれまで得意としてきた分野で、国内外でさまざまな産業の発展を支えてきた。

厳しい状況のデジカメ市場で、ミラーレスカメラが健闘

厳しい状況のデジカメ市場で、ミラーレスカメラが健闘

高画質の高機能・高性能カメラには底堅いニーズはあるものの、スマートフォンのカメラ機能やレンズ性能も向上しており、厳しい状況が続いているデジタルカメラ市場。コロナ禍もあって、カメラ需要自体が大きく減少した。
一般社団法人カメラ映像機器工業会のデジタルカメラ統計によると、2022年のデジタルカメラの総出荷数は前年比4.2%減の801.2万台となったものの、金額では国内外とも好調で、同39.3%増の6,812億3,264万円と前年を大きく上回った。総出荷数のうち、日本向けの出荷数は同19.6%減の92.9万台ながら金額では29.8%増の604.0億円。日本向け以外の出荷数は同1.7%減の708.2万台で、金額は40.3%増の6,028億3,340万円と大きく伸びた。高額のミラーレスカメラの売り上げが好調だったことに加えて円安も影響したと思われる。
レンズ一体型カメラの総出荷数は前年比30.8%減の208.5万台、金額ベースでは同2.9%減の710億476万円と、引き続き厳しい状況だが、一方で、レンズ交換式では、ミラーレスカメラの販売が好調だ。先行していたソニーに対して、キヤノンとニコンも新製品を投入、ラインナップを拡充させている。さらに、富士フイルム、パナソニック、オリンパス、シグマもミラーレスカメラ市場で独自の存在感を発揮している。レンズ交換式では、一眼レフの総出荷数が前年比17.3%減の185.3万台、金額が同4.9%減の867.8億円とマイナスになったが、ミラーレスカメラの総出荷数は31.1%増の407.4万台、金額は61.3%増の5,234億5,159万円と大幅に増加している。ミラーレスカメラの総出荷数は全体の50.8%だが、平均単価が高いため出荷金額では76.8%を占めており、ますます存在感が高まっている。

時計市場と測定機器市場は、新型コロナウイルス感染症の影響から回復基調へ

時計業界には世界的にさまざまなブランドが存在するが、多くはLVMHリシュモンスウォッチの3大グループの傘下にある。完全に独立した自社の生産ラインを持つ会社はそれほど多くないのが実情で、海外ではロレックスやパテックフィリップなどが、国内ではセイコーやシチズン、カシオといった企業が、独立を保つ会社として知られている。
時計市場も、コロナ禍を乗り越えて徐々に出荷を増やしつつある。一般社団法人日本時計協会によれば、2022年の完成品総出荷(輸出と国内出荷の合計)見込みは、ウオッチ(どんな姿勢でも作動し、かつ携帯することを目的とした時計)は前年比5%増の5,500万個で、金額は同17%増の2,669億円と前年を上回った。クロック(置時計や掛時計など、一定の姿勢で使用する時計)の完成品出荷数は同9%減の700万個と減少したものの、金額は前年並みの176億円としている。

日本精密測定機器工業会の生産販売統計によると、2021年の精密測定器(光学測定器を含む)の生産・出荷とも、年間ベースでは2020年を上回り、2021年の生産は前年同期比1.7%増の899億5,700万円、出荷は同6.4%増の913億8,500万円となった。月間ベースでは2021年の4月から生産が、5月から出荷が前年同月を上回り始めた。前年同月比で30%を超える月もあり、好調に推移している。2022年の上半期(1月~6月)の集計では、生産は前年同期比で16.1%増の503億3,300万円、出荷は同17.5%増の504億3,500万円となった。

新興国への拡大が期待できる医療機器市場

新興国への拡大が期待できる医療機器市場

医療機器メーカーは、内視鏡などの診療機器や手術などに使われる治療機器などをつくり、国内外の医療機関に販売している。医療機器には、CT内視鏡のような「診療機器」、カテーテルやレーザー治療、手術などに使用されるメスなどの「治療機器」、ペースメーカーや人工骨などの「生体機能補助・代行機器」、ウイルスや血液などの検査を行う「検査用機器」、眼科用品や家庭用医療機器など「その他の機器」がある。中でも、日本のメーカーは「診療機器」に強いといわれており、キヤノンやオリンパス、富士フイルムなど、カメラで培った映像技術や画像処理技術を活かして医療機器市場で活躍する企業もある。

医療機器は、高齢化に伴う需要増もあり、緩やかな拡大が見込まれるが、国内では医療費抑制政策が実施され、経営が悪化する医療機関が増えている。国内市場だけで医療機器業界が金額ベースの大きな拡大を遂げるのは簡単ではない。
もともと医療機器の市場はアメリカやEU、日本などの先進国に偏っていた。今後は、さらなる医療の高度化を進める先進国だけでなく、急成長を続ける中国やインド、医療水準の向上が期待できる新興国などへの輸出が事業拡大のカギとなりそうだ。

なお、医療機器業界も、コロナ禍で影響を受けた。人工呼吸器体外式膜型人口肺(ECMO)などの新型コロナウイルス関連医療機器の需要が増えたものの、医療機関への外来・入院患者は減少、手術の延期も多かった。経営が厳しい医療機関も多く、新しい医療機器への投資を控える動きも見られた。
一方で、コロナ禍において、パソコンなどを利用して患者の診断や薬の処方を行うオンライン診療(遠隔医療)が普及しつつある。医療機器業界では、オンライン診療用の機器やシステム、アプリの開発などにも着手している。

手術支援ロボットに成長の可能性

医療の高度化に伴い、さらなる市場拡大が期待されているのが手術支援ロボット市場だ。2030年には医療用ロボット市場は約11兆円にまで拡大するという調査報告もある。これまでは、アメリカのインテュイティブ・サージカル社の「ダヴィンチ」が世界市場を席捲していたが、2019年までに諸特許の期限が切れたことから、国内外のスタートアップ企業から大手医療機器メーカーまで、様々な企業による開発競争が熱を帯びている。中でも注目は、国産初の手術支援ロボットhinotoriTM サージカルロボットシステム」(以下ヒノトリ)。川崎重工業とシスメックスが折半出資するメディカロイドが開発した手術支援ロボットで、すでにヒノトリを使った手術も多数実施されており、遠隔手術の実証実験にも成功している。

業界関連⽤語

N-NOSE

嗅覚に優れた線虫という生物が、がんのにおいに引き寄せられることを利用した検査で、わずか1滴の尿からがんのリスクを86.3%もの高精度で判定することができると言われている。ただし、がんであるかどうかは判定できるが、がんの種類までは特定できない。そのため、発見後は別途精密な検査が必要となるが、ステージ0や1の早期がんも検知、簡便で身体的負担も少ない。さらに、安価で全身を網羅的に調べられるとあって、期待が高まっている。

ウエアラブルカメラ

身体やヘルメットなどに取り付けてハンズフリーで撮影する小型カメラ(ビデオカメラ)で、スポーツカムアクションカメラなどともいわれている。通常のカメラと異なり小型で軽量なため、簡単に自分目線での撮影ができる。
また、自転車やバイクのハンドル、サーフボードなどに取り付けて周囲の風景などを撮影したり、動物に取り付けたりして撮影できるものもある。コンパクトデジタルカメラ市場が厳しい中、迫力映像が撮影できるとあって人気になっている。

3Dプリンター

コンピューターで作成した3次元の設計データを基に、樹脂などを使って立体造形物を作ることができる3Dプリンター。金型を使わなくても、複雑な構造の立体物を作り出せることから、製造業を中心に幅広い分野での導入が期待されている。
日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク(MDB)の調査によれば、世界市場において、樹脂3Dプリンターは2020年度の680億円から2026年度には1,430億円まで市場規模が拡大、金属3Dプリンターも2025年度には2,500億円の市場規模になると見込んでいる。

医療クラウド

多くの医療機関では、セキュリティーの観点から、病院外から病院内のデータにアクセスすることができなかった。これまでと異なり、電子カルテや、レントゲンCT画像など医療情報データを、外部のクラウド上に保存し、複数の医療機関が患者データを活用しようという試み。異なる地域や病院で情報を共有することができ、救急搬送された場合にも過去の治療履歴を知ることができる。また、外部の専門医に遠隔診断を依頼することも可能になる。

ドローン

ドローンとは、航空法で、「無人であり、遠隔操作または自動操縦で飛行できる、200g以上の重量の機体」と定義されている。軍事用に使用されることもあるが、今では娯楽用、産業用など様々な用途でドローンが開発されている。国内では農薬散布など農業用の利用が多いが、インフラ設備の点検や測量などにも活用の場が広がっており、将来的には物流分野への導入も期待されている。インプレスの「ドローンビジネス調査報告書2022」によれば、機体・サービス・周辺サービス(なお、サービスはドローンを活用した業務を提供した企業の売上、周辺サービスはバッテリー等の消耗品やメンテナンスの費用)を合わせた2022年度のドローンビジネスの市場規模は、前年度比34.3%増の3,099億円で、2027年度には7,933億円まで加速すると見込んでいる。

フォトンカウンティング検出器搭載のⅩ線CT(フォトンカウンティングCT、PCCTとも)

フォトンカウンティング検出器は、これまでの測定方法と異なり、X線の光子(フォトン)を直接電気信号に変換してX線を測定する感度の高い測定方法。次世代型CTで、この検出器を搭載した機器は、従来の装置よりも被ばく量が少なく、画像もより高精細化できるため、診断精度の向上が期待されている。ドイツの シーメンスヘルスケアや日本のキヤノンメディカルシステムズの機器は、すでに病院への導入が始まっている。

どんな仕事があるの︖

精密機器業界の主な仕事

・営業
自社商品を、顧客である販売店や企業に提案・販売。顧客の要望を聞き出し、商品の改善や新商品企画に役立てる。

・ハードウエア設計
機器全体の仕組みを設計する。

・ソフトウエア設計
機器がうまく動くように、ソフトウエアを設計する。

・システム設計
機器がうまく動くように、ソフトウエアを含むシステムを設計・開発する。

・生産管理
スケジュールや計画を立てて、スムーズに生産できるよう手配をする。

医療機器業界の主な仕事

・営業
自社商品を、顧客である販売店や企業に提案・販売。顧客の要望を聞き出し、商品の改善や新商品企画に役立てる。

・開発
ハードウエア、ソフトウエアなどを使って、商品を設計開発する。

・サービスエンジニア
自社製品のメンテナンスや点検を行う。

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※原稿作成期間は2023年12⽉28⽇〜2024年2⽉29⽇です。

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