“思い出”に寄り添うために始まったリユース事業。 「新宿 北村写真機店」はカメラのキタムラの旗艦店。様々な種類のカメラがずらりと並ぶ様子に、とくに写真好きでなくても心がワクワクします。その中には中古カメラも。カメラのキタムラでは、20年近く前から中古カメラを買い取って点検後に販売するリユース事業に取り組んできたそうです。事業が始まった背景を尋ねてみると、この会社が大切にする思いが起点になっていました。 カメラのキタムラ全体で約12万点もの中古カメラ・レンズ等を取り扱う。世界でも有数の在庫数を持つ。 「私たちは写真・カメラを通じて人の“思い出”に寄り添うことをなりわいにしてきました。カメラというのは趣味性の高い商品なので、いろいろなカメラを試したいというニーズがある。そこで始めたのがリユース事業です。お客さまが大切に使ってきたカメラを買い取らせてもらい、新しいカメラに買い替えるための支援をする。そして、買い取らせてもらったカメラを整備して、また新しいお客さまのもとへ送り出す。こうして“思い出”をつないだ結果、環境面でもサステナブルなサービスになったというわけです」 “思い出”に寄り添う方法の一つとしてリユース事業が始まったとのこと。そして、リユースは直接的にいえば、新しいカメラをつくる際に排出される温室効果ガスや原料の削減につながり、地球に優しいというメリットもあるそうです。その結果、循環型社会を目指す世の中の流れも後押しし、リユース事業は右肩上がりで成長しているとのことでした。
成長の原動力は人・店舗網・テクノロジー。 そんなカメラのキタムラのリユース事業の大きな成長には、3つの理由がありました。1つ目は「人」。カメラの専門知識を持つスタッフによるハイレベルな接客力です。2つ目は全国600店以上を展開する「店舗網」(スタジオマリオを除く)。身近な場所にお店があれば、利用者は街の写真屋さんに行くように気軽に訪ねられます。そして、3つ目は「テクノロジー」。これについて中島さんは次のように教えてくれました。「中古品は一つひとつ状態が異なるだけに、同じ機種のカメラであろうと一つずつ別の商品として分けて管理する必要があります。さらに、私たちはこの管理によって蓄積される膨大なデータも活用しているんです。活用の一例が、AI査定。店舗に持ち込まれた中古品をスタッフが撮影すると、AIによって買取額が査定される仕組みです。これによって査定のばらつきをなくし、正確な値付けが行えます」 リユース商品ごとの個性をテクノロジーで管理し、スムーズな査定を実現。商品の個性を管理できるからこそ、「ここが壊れていてもこの機能だけ使えればいい」といったニッチなニーズにも応えられるため、これまであまり流通しなかったいわゆるジャンク品の取り扱いも活発になったそうです。テクノロジーの活用によってますますサステナブルな事業になった上に、顧客の価値観の多様化にも対応しているとは、すごい。
リユース事業を支える修理・点検の高い技術と物流網。 このビジネスの鍵を握るのが、修理・点検の高い技術力。リユース商品の点検・修理を担当するのは、カメラのキタムラのグループ会社であるユー・シー・エスという会社です。「ユー・シー・エスでは、熟練の技術を備えたベテラン技術者が壊れたところを直したり、点検・整備を行ったりしています。店舗のスタッフには接客に集中してほしいこともあって、専門部隊がハイレベルなメンテナンス対応を行う体制を構築しました」 ベテラン技術者の手にかかれば、60年前のカメラだって修理できてしまうんだとか! この技術力がリユース商品の信頼性を高めているんですね。「弊社の技術は本当に信頼できるものだと自負しています。実際に私も戦後間もない時期のカメラを使えているほどです。この優れた技術力を若い人材に継承していくことが今後の課題ですね」 もう一つ、リユース事業を支えているのが、カメラのキタムラの効率的な物流網。ネット販売やA店にある商品をB店へ移すといった機能のほか、顧客からリユース品を買い取る際にも一役買っています。「お客さまのご自宅に眠るカメラの掘り起こしに取り組むため、ご自宅からカメラのキタムラへ商品を送っていただく直送買取の仕組みをつくったのですが、これが大好評。店頭買取以外では、スタッフがお客さまのご自宅へ出向く出張買取も行っています」 カメラのキタムラでは、3種類の買取方法を実施。顧客の自宅に眠るカメラの掘り起こしにも力を入れている。
時計やブランド貴金属も。カメラ以外にも広がるリユース事業。 最近では時計やブランド貴金属のリユース事業もスタートしたカメラのキタムラ。時計とカメラには共通点があるのだとか。「カメラが好きな方には、時計も好きという方が多いんです。だから、これまで築いた信頼をきっかけにカメラのキタムラに時計を持ち込んでくれるお客さまが想像以上に多くて。カメラと同様に、お客さまの大切な思い出の品を新たなお客さまへつなげようと始めたわけですが、それがブランド貴金属にも広がりました」 リユース事業の対象はカメラ以外にも広がっており、今後もさらに新たなジャンルに拡大する可能性があるといいます。サステナブルなビジネスの範囲が広がっていくのは楽しみですね!「とはいえ、私たちの本分は写真屋。その他の領域はビジネスパートナーとの連携を考えています。それから、フィールドをグローバルに広げることも検討中です。世界でメード・イン・ジャパン商品の人気が高いことは有名ですが、日本の中古品であるジャパン・ユーズドも人気。グローバルな商品循環が理想ですね」 思い出が海の向こうに広がる可能性もあるんですね! 最後に、「世界を代表するフォトライフ・カンパニー」を目指すカメラのキタムラだからこそ、写真を通じて取り組むサステナブルな社会への思いについて聞いてみました。「“思い出”には自然が欠かせません。美しい自然を写真に撮って残すことで、自然環境に対する人々の意識を変えていけたら。こうして様々な角度から“思い出”に寄り添うことで、人々と地球に貢献し続けたいと思います」