数秒の差が、救う命の数を変える。 安全・安心に対する本気度が違う。それが今回、YORiSOSの話を聞いて率直にセコムに抱いた感想でした。YORiSOSのメイン機能は「セコムSOS(緊急通報)」と呼ばれ、これは事故や事件に遭遇したとき、なにか身体的な危険を感じたとき、すぐにセコムに通報できるというもの。アプリを立ち上げ、画面いっぱいに現れる通報ボタンを3秒間長押しすると、セコムに緊急通報されるシンプルなつくりです。 じつはYORiSOS以前にも、同様の機能を持った携帯電話型やペンダント型などのデバイスをすでに展開していたセコム。ですが、取り出す動作や操作手順を考えたとき、これまで以上に日常的で、かつ緊急時通報を素早く実現できる手段としてApple Watchに注目。2022年6月にYORiSOSの開発はスタートしました。 佐藤さんによると「これまでは防犯面を中心にサービスを提供してきたセコムですが、YORiSOSが目指したのは、より日常的な安心感。つまり、時間や場所を問わず、すぐに駆けつけてもらえるという安心感です。それを実現したいと思ったときに一番最適なものがApple Watchでした。通報までにかかる時間は従来機と比べて数秒の短縮ですが、その数秒の差で救える命の数が変わることがあるんです」とのこと。佐藤さんのその言葉の裏に、セコムが背負っている使命の大きさを感じます。
非日常の機能のために必要な日常の機能。 しかし、緊急通報はあくまで非日常の機能。佐藤さんによると、「いざというときにこのアプリを起動してもらうためには、日常の機能こそが大切なんです」とのこと。 「毎日アプリにふれていただくことが、とっさの行動へとつながります。そう考えて着目したのが、Apple Watchのヘルスケア機能でした。ただし、YORiSOSの想定ユーザーは主に50代以上のシニア層。操作が複雑になったり、画面の情報が増えすぎると、日常的に使ってもらうこと自体が難しくなりかねません」 分析と検討を重ねた結果、リリース時に実装させる機能は、健康の一番の基本である睡眠と歩数のみに絞り、一日の合計達成率をグラフとして可視化。そうすることで、“日常的な健康状態を管理するためのアプリ”として使ってもらえるように、と佐藤さんたちは考えました。
根底にあるのは、挑戦を後押しする想い。 そもそも、佐藤さんたちはYORiSOSで実現したい世界観やストーリーからしっかり構築していったとのこと。そして、その想いは「挑むに、寄りそう」というキャッチコピーの中に込められているそうです。 「シニアの方は不安な気持ちが原因で、やりたいことを諦めてしまうケースが意外と多いんです。YORiSOSはそんな方たちの不安を取り除き、自分のやりたいことを思いっきり楽しめるようにと思って企画したアプリです。家事、運動、外出、娯楽、旅行、そして生活。“私たちがいつでも寄り添っているので、どんなことでもやってくださいね”という気持ちで開発しました」 すごい、素敵だ。と、感銘を受けているのも束の間、「たとえば、YORiSOSには見守る側のご家族が活用する専用アプリ『いつでもみまもり』アプリと連携する機能もあります。これは“一人で暮らしたい”というシニアの方と、離れて暮らすご家族がお互い干渉しすぎず、だけどいざというときには助けに行ける形を実現するものです。転倒検出や緊急通報を受信すると、ご家族の元へ位置情報付きで通知が出ます」。 なるほど。YORiSOSがあれば、家族も安心して本人のやりたいことを叶えてあげられる…。セコムがYORiSOSで変えたかったものは、セキュリティのあり方といったものではなく、誰もが何歳になっても安心してやりたいことができる社会そのものなんだと気づかされました。
安全・安心のあり方は時代によって異なる。 事実、YORiSOSリリース後にApple Watchを使い始めるお客様も少なくなかったそうです。その姿を目の当たりにして、「その方に合う選択肢をつくれたことがうれしかった」と話す佐藤さん。最後に、安全・安心とデジタル技術をはじめとする最先端技術の融合について質問してみました。 「もともと、安全・安心というのは時代によって変化するものだと思いますし、セコムはその時代における不安や悩みの種を常にキャッチアップして解決し、安全・安心を届けてきました。ただ間違えてはいけないのは、最先端技術を活用することが大事なのではなく、不安解消の手段として最先端技術による可能性を常に探ることが大切だということ。知識や情報はアップデートし続けておかないと、選びたくても選べないですからね」