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世界を
沼落ちさせる企業
漫画の世界進出はまだ入口!?

[株式会社小学館]

時代にフィットしながら、
普遍的な作品を、世界へ。

世界に誇る日本文化としてよく取り上げられるアニメ。しかし、その原作にもなっている日本の漫画は、ビジネス的には意外にもまだまだ世界進出の入口辺りにいるのだとか。今回、世界を沼落ちさせる企業として紹介するのは、2022年に創業100周年を迎えた小学館です。小学館といえば、漫画でも数々のヒット作を世に送り出している大手出版社。その中で現在、「マンガワン」という漫画アプリのプロデューサーを務める坪内さんに、世界における日本漫画の立ち位置や今後の可能性についてお話を聞きました。

お話を聞いた人

マンガワン編集部プロデューサー 坪内崇
マンガワン編集部プロデューサー
坪内崇

1970年生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、1994年に新卒採用で小学館に入社。主に少年漫画誌の編集者として数多くのヒット作を担当する。その後、「ビッグコミック・スピリッツ」の編集長を務め、2019年からは漫画アプリ「マンガワン」のプロデューサーに就任し、新たな挑戦を続けている。

INDEX

日本漫画の世界進出はそう簡単な話じゃない。

小学館の漫画アプリ「マンガワン」は2014年にスタート。現在では数多くのユニークユーザーを抱え、ここでしか読めない作品も多く掲載されています。しかし、漫画が紙からアプリに変わったからといって、そう簡単に日本の漫画を世界に発信できるわけではないと坪内さんは言います。
「日本はそもそも国内市場が大きく、かつドメスティックなテーマを扱った作品がヒットする傾向があります。だから、マンガワンでも海外の読者を意識した漫画を一部展開していますが、まだ実験の域を超えていません。漫画の世界進出という意味では、お隣の韓国の方が強いのではないでしょうか。漫画アプリの開発や多言語対応も進んでいますし、K-POPもそうですが、自国のエンタメ市場には限りがあるため、漫画を制作する段階から戦略的に世界を意識していますよね」
坪内さんが言うには、当然、海外でヒットするには、どんなテーマがうけるかといったマーケティングが欠かせない。さらに、それぞれの国の文化や習慣に溶け込むよう細かな設定のローカライズや、言葉のニュアンスをどう翻訳するかといった研究ももっと必要だと言うのです。
マンガワン ユニーク・ユーザー数 310万人 1日あたりのユーザー数110万人 ※小学館調べ
小学館のオリジナル漫画を毎日配信する漫画アプリ「マンガワン」。デイリーユニークユーザーは110万人を超える。
ユーザー数は取材当時(2023年12月)のものです

バリエーションの豊富さは、世界でも群を抜いている。

それでも、日本のアニメや漫画が世界で高い評価を受けているのは、「単に読者のニーズに応えているからではない」とも坪内さんは言います。
「先ほど、韓国が世界を見据えて漫画を制作しているという話をしましたが、作品のバリエーションの豊富さという点では、日本が世界でも圧倒的に群を抜いていると思います。それは、日本の漫画はマーケティングだけを頼りにつくっているわけではないからです。日本では、作家が描きたいもの、編集者が面白いと思うものを一つずつ丁寧に漫画にしていき、誰も見たことのないような作品を生み出し続けてきた土壌があります」
「そもそも、誰かに向けて描かれた作品なんて面白くないし、人気漫画を真似したからといって人気が出るわけでもありません」と、数々のヒット作を世の中に送り出してきた坪内さんの声にも熱がこもります。
そこで、ヒット作を生み出すため、日本の漫画を成長させるため、出版社がどういう役割を果たしているのかを改めて聞いてみました。

作家さんとの信頼関係が、日本の漫画を広く深くする。

「僕たち出版社が一番大切にしなくてはいけないのは、漫画を描いてくれる作家さんたちです。編集者は、彼ら彼女らの価値を最大限に引き出すためにいるのです」と坪内さん。さらに、ヒットした漫画をアニメ化やグッズ化によってより大きく育てたり、その作品で得た利益をもとに次世代の作家さんたちを育てたり。多種多様な作家さんとの長きにわたる信頼関係があるからこそ、日本独自の幅が広く、奥が深い漫画業界があるのだそうです。
なるほどと感心しつつ、続けて「ちなみに、ヒット作を生み出すコツはあるのですか?」というど直球の質問に対しては、「それはもう人によってやり方は全然違うと思いますよ」と坪内さん。「編集者の仕事は属人性が高いですし、面白いと思うことも3回、4回と続けると飽きますよね?だから僕たちも日々やり方を変え、アイデアを出し続けなければなりません。毎回ゼロから生み出す仕事は簡単ではありませんが、それがこの仕事のやりがいでもあります」と教えてくれました。
マンガワンの編集部の様子。世界を沼落ちさせる漫画を生み出す現場の一つ。

良い作品というのは、草の根のように広がっていく。

坪内さんにこれからの日本の漫画の未来について尋ねると、「作家さんは常に一人でも多くの読者に、自分の漫画を読んでほしいと思っています。そういう意味では、世界に発信していく流れは今後ますます増えていくと思います」と坪内さん。
「ただ、僕個人としては、良い作品というのは草の根のように世界中に広がるもの。一瞬で広まるものは、一瞬で飽きられると思っています。しかも、スマホだって10年後、20年後はきっと形が変わっていますよね。最近では生成AIのような新しい技術もどんどん生まれてきています。だからこそ、編集者はそういう変化も見据え、今という時代にフィットしながらも、もっと普遍的なものをつくり続けていかなければと思っています」。
最後に、就活生に向けてメッセージをもらうと、「未来は明るいと信じて進んでほしいですね。人間はそれほど馬鹿じゃない。いい意味で楽天家になってほしい。そして、そのためにも学生時代に漫画に限らずたくさんのコンテンツにふれてほしいですね。若い頃に面白いと思ったことって、ずっと記憶に残るんです。まっさらな自分が感じた気持ちは、きっと将来の自分の大きな財産になっていると思います」と素敵な言葉を授けてくれました。

マイナビ編集部の声

漫画はまだまだ世界進出の入口辺りにいるという話は驚きでした。でも、だからこそ、「日本の漫画文化を世界に発信したい」という熱い思いがあれば、マーケティングや言語、情報技術など、様々な分野を学んでいる学生にもチャンスがあるという話が印象的でした。