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「生成AI」という新たな仲間を連れて。深海の謎に迫る、終わりなき探求

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科学技術の現場では、生成AIの活用が進んでいます。文部科学省の「令和6年版科学技術・イノベーション白書 本文(HTML版)」によれば、バイオテクノロジーや材料科学など、さまざまな分野でAIの導入が加速し、研究の進め方や着眼点にも変化が見られるようになりました。

中でも注目されているのが、テキストを読み取り、意味をとらえながら自動で文章を組み立てる大規模言語モデル(Large Language Models)です。これまで人の手で行っていた観察や記録、分析といった工程の一部を生成AIが担うことで、研究者はより創造的な探究に時間を使えるようになっています。

こうした技術の広がりは、海を舞台にした研究においても例外ではありません。国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、深海で長年記録されてきた写真や映像データに着目。深海生物や海底ごみの識別作業が、手作業からデジタル化へと移行し始めています。

今回は、JAMSTECの付加価値情報創生部門で、生成AIを用いた映像データ解析に取り組む川會悠生さんに、技術の可能性と研究の未来について話を聞きました。
プロフィール
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川會 悠生

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)
付加価値情報創生部門 国際海洋環境情報センター データ基盤技術開発グループ
2024年入社

深海映像や画像データを扱うシステムの開発・運用を担当。膨大な映像に映る生物やごみを自動で識別し、情報を付ける仕組みを、分類基準や被写体検出AIによる検出結果を使って構築している。また、開発中の各種システムにおけるデータベースツールと連携した検索機能の拡張にも取り組んでいる。

国立研究開発法人が担う
役割

非営利法人と営利法人の違い

私たちの暮らしを支える「研究開発」は、分野や目的に応じて、多様な場所で進められています。企業の研究所、大学の研究室、医療機関など、目的や役割によってその姿はさまざま。その中の一つに、国が設立した「国立研究開発法人」があります。

国立研究開発法人とは、これからの時代に起こりうる課題に向けて、中長期的な視点から研究開発に取り組む公的な機関です。令和6年4月時点で27法人あり、それぞれが環境、医療、エネルギーなどの分野で専門性を発揮しています。JAMSTECもその一つで、海洋と地球に関する科学技術の研究開発を専門とする機関です。

国立研究開発法人と民間企業とでは、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特長を比べてみましょう。
非営利法人と営利法人の違いの画像
上記のように、両者が異なる角度からアプローチすることで、日本の科学技術はより多角的に発展していくのです。

水族館の展示が興味のきっかけに

JAMSTECの研究や開発、業務の舞台となっているのは、海。水深数千メートルの深海から、環境変動や海底資源の探究まで、多岐にわたる研究が行われています。研究や活動の成果は、科学館や博物館などの展示施設で公開。川會さんが興味を持ったのも、そうした取り組みがきっかけだったそうです。
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川會
私がJAMSTECを初めて知ったのは、水族館でした。もともと生物が好きで、よく足を運んでいたんです。そこで、JAMSTECが水族館と共同で研究していることや、有人潜水調査船で得られた成果が紹介されているのを見て「こんな機関があるんだ」と、ワクワクしました。
さらに、メディアや映像資料を通じて海底に広がる独自の環境や生態系を知るたびに、川會さんは深海の魅力に引きこまれていきました。

深海の世界を読み解く、
AIの映像解析技術

鮮やかな赤い傘を持つリンゴクラゲや半透明な体で水中を漂うユメナマコ……。深海には、いまだ解明されていない自然の営みや、目にしたこともない生物たちが無数に存在します。

JAMSTECでは、有人潜水調査船や無人探査機によって撮影された深海の映像を体系的に蓄積。収集された映像は、深海映像・画像アーカイブス「J-EDI(ジェダイ)」を通じて一般にも公開され、誰もが自由に見ることができます。

生成AIを用いた映像データの解析

生成AIを用いた映像データの解析の画像
J-EDIで公開されている映像の多くには、映り込む多様な生物やごみの情報が付与されています。そのためには映像を識別して整理する作業が必要ですが、全てを人の目で確認し、情報を付けていくには膨大な労力がかかります。

この課題に対し、川會さんが取り組んでいるのは、生成AIを用いた映像データの効率的な解析です。
川會の画像
川會
情報を付与するために、深海映像に映る魚類やエビ、そしてプラスチック片や漁具などの人工物を、自動で検出し分類できる仕組みを開発しています。現行の手法ではJAMSTECで蓄積された約5万時間分の映像から約8,000枚の画像を抽出し、これを「教師データ」として学習した被写体検出AIを用いています。この仕組みに生成AIを組み合わせることで誤検出を減らすような分類性能向上やこれまでの仕組みでは得られなかった新たな情報の抽出ができないか取り組んでいます。
教師データとは、AIが学ぶための「見本」のようなものです。たとえば、1枚の画像に対して「フレームの左端に写っているのはエビです」といった説明を付けて、どこに何があるのかをAIに伝えます。こうした見本をたくさん学ばせることで、AIは少しずつ正しく見分けられるようになっていきます。
深海生物検出のための画像AI教師データセットの画像
川會の画像
川會
始めのうちは、生成AIによって画像から対象物の詳細な分類をしようとしましたが、思うような結果が得られませんでした。生成AIへの指示を工夫して抽出する情報の粒度や種類を変えることや分類したい対象物に関する外部データの利用によって活用するための方向性が少しずつ分かり始めました。
意味を理解し、情報を生成できるAIの登場によって、技術は新しい段階へと進みつつあります。しかし、どのようなデータを学習させ、どんな目的に生かすのか。それを選択するのは、あくまで人なのです。

研究者や外部機関と広がる連携

映像データの解析プロジェクトは、川會さんと先輩職員の2名体制で進行中。プロジェクトの性質や進行状況に応じて、連携は多方面に及ぶこともあるそうです。
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川會
私が担当するのは、生物やごみに情報を付与する部分ですが、システム全体や、データ基盤の整備などを担うチームもあります。研究の進み具合やテーマによって、他部署や専門家とのやりとりが増えていく形です。中には、研究者と密にコミュニケーションを取りながら開発を進めている職員もいます。
時には、外部からの要望を起点に新しいテーマが生まれることもある、と言葉を続けます。
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川會
たとえば、ほかの公共団体から「こういうデータを提供・活用したい」といった相談があり、それに合わせて新しいシステム開発やデータ整備のテーマが生まれるケースもあります。研究者との協働が、ごく自然な流れで起こるのも、研究開発を専門とする私たちならではと言えるかもしれません。

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)

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