どんなビジネスも、ニーズからはじまる。 商社の最大のビジネスは、クライアント(商社の顧客/売り先)とサプライヤー(提供メーカーなど/仕入れ先)の橋渡しです。ある時は世界中を駆け巡ってクライアントの要望に合ったサプライヤーを探し出し、またある時は、海外で見出した新たな商材やサプライヤーをクライアントに提案する。常にクライアントとサプライヤーの間に立ち、「ビジネスを円滑に進めるために何ができるか」を模索し続けることが商社の役割なのだそう。そして、そのビジネスの出発点となるのは、どんな時も“ニーズ”なのだと玉置さんは言います。 「自分が面白いな、可能性があるな、と思ってもニーズがなければ受け入れられません。だからこそ重要なのは、いかにニーズをキャッチできるか。クライアントとのコミュニケーションはもちろん、展示会や情報誌、通関のデータなどから、マーケット規模やトレンドなどの情報を掴みにいくことが大切です」
“絶対にもっと良くなる”その確信が大きな一歩に。 では、実際に玉置さんはタイという異国の地でどのようにビジネスを展開してきたのでしょうか。 玉置さんがタイで扱っていたのは、主に食品添加物や化粧品原料といった暮らしを豊かにする化学品。これらは、その国の人々の生活水準が上がっていくにつれて広がっていくため、玉置さんが赴任した2017年当時のタイではまだまだ普及していないものも多かったのだとか。そんな中、玉置さんは2つのビジネスに挑戦しました。1つ目は皆さんもよく知る食べ物です。 「現地のコンビニで売られていたフライドチキンです。揚げてから時間が経っていたのか、すごく硬くて。食べた瞬間に“もっと、おいしくなる”って確信しましたね。日本では一般的なのですが、時間が経ってもおいしさを保つには食品添加物が欠かせません。“体に悪いもの”というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、今やそんなことはなく、むしろ食感や日持ちの面でなくてはならないものなのです。そこで私は、当社がタイで製造を手配していた食品添加物の提案活動を始めることにしました。ただ、食品添加物そのものが広く知られていない状態。まずは日本の柔らかくてジューシーなフライドチキンを食べてもらって、その美味しさを実感してもらうところから始めました」 そして、玉置さんがもう一つ挑戦したビジネスが化粧品原料です。こちらも、そもそも国が発展しなければ化粧をする文化は根付かないですし、国内の化粧品市場が大きくならない限り、化粧品メーカーも育ちません。そこで、玉置さんは日本の高品質な化粧品原料メーカーとタイの化粧品メーカーをつなぐことが、タイにおける化粧品市場の拡大、文化の発展の大きな一歩になると考えたのです。
心を動かせるのは、人の情熱だけ。 しかし、どちらの場合も、今までなかったものの価値を理解して受け入れてもらうのは、簡単なことではありません。「私がタイのメーカーを訪ねても、すぐには自分たちのやり方を開示してくれないんです。だからこそ、何度も足を運んで、まずは日本でどんなふうに商材が活用されているか、どのくらい認知されているかを伝えながら、“もっと良くなりますよ”って説得し続けましたね」と玉置さん。そのコミュニケーションに欠かせなかったのは“情熱”だったと力強く答えます。 「会社と会社のビジネスですが、決めるのは人で、人の心を動かすのも人です。日本のメーカーとタイのメーカーをつなぐにしても、間に立つ私に情熱がないとどちらからも任せてもらえないし、うまくいかない。いかに情熱を持って、他者を巻き込んでいけるかが成功の鍵なんです」 聞いているこちらまで惹きつけられるほどの、玉置さんの熱量。その結果、大きな実りがあったそうです。 「タイのコンビニで売られているフライドチキンは格段に美味しくなって、もっと売れるようになりました。この手応えから、マレーシアやベトナム、インドネシアにもビジネスを展開しているところです。また、化粧品原料においても、日本の高品質な原料が広まりつつあることで現地の化粧品の質向上に貢献しています」
日本と世界に、豊かさを届ける。 さらに、玉置さんは日本と世界をつなぐ商社の仕事の未来について「日本の商材や技術はもっと海外で売れるはず。現地の方と話していても“レベルが高いですね”“さすが日本人ですね”と言ってもらえるんです。それをいかに海外に発信していけるか、価値を実感してもらえるか。そこにこそ、私たち商社の存在意義があると考えています」と展望を話してくれました。 また、「日本の技術を活かして海外でつくられたものが、日本に輸入されることで、海外の人たちだけでなく、日本人の暮らしを豊かにしていく仕事でもある」と玉置さん。最後に、そんな仕事の背景には蝶理という会社の風土もあるのだと熱く語ります。「どんな挑戦でも、裁量を与えて背中を押してくれるこの環境がモチベーションの源泉にもなっています。やりたいことに仕事として取り組めて、クライアントの役に立てるだけでなく、各国の豊かさにも貢献できる。情熱を持って携われる仕事に出会えてよかったと思っています」