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「問い」から見つけるジブン軸
インタビュー
俳優 吉沢亮さん
2027年卒の新卒採用は今日3月1日から説明会などの広報が解禁された。就職活動の先にあるのは内定を得ることだけではない。どんなキャリアや人生を望むのかを常に意識して節目節目で決断する、選択の連続が待ち構えている。喜びも悲しみも「ジブン軸」次第だ。映画「国宝」に主演した俳優の吉沢亮さんは「しなやかでありながら強いというものは、本気で仕事に向き合った先にある」と語り、社会に出ようとする若い世代にエールを送る。
準備は裏切らない
歌舞伎役者の半生を描いた映画「国宝」は邦画実写の歴代興行収入を更新する大ヒット。
日本中を魅了した主演俳優はしなやかだ。
こだわりを持つのは良いことです。でも、現場ではこだわりを捨てる覚悟も持つようにしています。1人で成立する仕事ってほとんどないですよね。主張が衝突することもあるでしょう。役者をやっていると、多くの関係者が集まって良い作品を生み出そうとする過程で、ぶつかる場面もよくあります。特に準備期間が長いと、時間をかけて役に向き合った分、どうしてもこだわりが強くなってくる。意見を主張するだけでなく周囲の声を聞きながら進めていくようにしています。
以前は自分が現場でどういうお芝居をするかばかり考えていましたが、だんだん周囲の人やスタッフの動きにまで気を配れるようになりました。主演を任せていただく機会が増えたことが一つの理由ですかね。現場の空気にも敏感になるというか。責任感が生まれて意識を向ける先が増えたように思います。
映画「国宝」では撮影前から歌舞伎役者の役に向き合ったが、監督からは稽古と違う演技を求められた。
「感情で演じる」ため、準備してきたものを一度手放す。
いかに歌舞伎役者として美しく表現できるかを1年半の稽古で学びました。ところが、いざ撮影で舞台に上がったら、監督から「美しくやれるのは分かったから、もっと感情で演じてくれ」と言われました。監督の指示は様式美とされる、現実をそのまま描くのではない歌舞伎ならではの見せ方とは違うんです。歌舞伎役者が実際に舞台上で泣いているところを見たこともない。だから監督の言葉を聞いて最初は内心「何を言っているんだろう」と思いました。でも、そこに監督の表現したいものがある。だから準備してきたものを一旦捨てて、現場で新たに役を作り上げていきました。
要求に応えられたのは、しっかり稽古してきたからこそ。準備は裏切らないと分かっていたから、現場で変わっていくことを恐れずに演技の型やこだわりを捨てられたんだと思います。
実は、監督から求められた「感情を出す」演技自体は、そう難しく感じませんでした。歌舞伎ではない、普段やっているお芝居に寄せていくような作業でもあったので。これまでの演技で培った力が生かせた部分ですかね。歌舞伎役者ではない役者として、自分が演じる意味を強く感じた作品でした。
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会
自分の道 歩み方次第/後悔しても前へ
どんな業界・職種であっても誇りを持って働く人は大切にしたいものを自覚している。最短で答えにたどり着きたいだろうが、気づきは簡単に生まれるものではない。役作りのために学び続ける俳優・吉沢亮さんは、人生の分岐点で良い選択ができたとしても、納得できるかどうかは歩み方にかかってくるのだと説く。
NHKの連続テレビ小説「ばけばけ」では教師役として英語を流ちょうに話し、映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」では耳の聞こえない両親と暮らす青年役として手話を操った。
学びを後押しするのは「役のため」との思いだ。
プライベートで勉強しろと言われてもやらないでしょうね(笑)。僕はもう本当に役のためにしか頑張れない人間なんです。責任を持って引き受けた仕事ですし、自分がスキルを身に付けないと現場に迷惑もかかる。緊張感が原動力になっています。
今は夏に控えるミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」に向けてボイストレーニングに通い、ひたすら練習しています。難しい歌がたくさんあるので、かなりのチャレンジです。本番までに仕上げていきます。
マルチタスクで勉強をこなすコツは「優先順位」と「切り替え」。
自分のペースに合った管理で、あらゆる役柄を演じるためのスキルを身に付ける。
仕事が重なると、ジャンルの異なるスキルを並行して習得しなくてはならない場合もあります。ただ、すべて同じ熱量で学び続けるのは難しいんですよね。やるべきことがたくさんある時には優先順位を付けるようにしています。急ピッチで進める必要がある勉強は別として「今日はこれをやろう。これは明日にしよう」と1日単位で整理して取り組むことが多いかな。
行き詰まったら一度、距離を置くようにしています。自分の時間まで削ってしまうとあまり頑張れなくなっちゃうタイプなので趣味の時間もしっかりとります。仕事や勉強から離れて、自分の好きなゲームに多い時には1日5~6時間費やすこともあります。目標に向かっている時には何かを犠牲にする必要もあるかもしれませんが、頑張り続けるには心の安定も大切だと思っています。
次にやってみたい役は「あまりない」。
様々な役を経験してきた今は、役の設定よりも人物像やストーリー性に注目している。
20代前半の頃は医者や刑事など、やってみたい役がたくさんありました。今はどちらかというと役が持つ人間性に魅力を感じます。自分の心が動いて面白いと思える作品をやりたいというスタンスはずっと変わりません。強いて言うなら、自分が愛せる作品で愛せる役をやっていきたいです。ジャンルのこだわりもあまりないです。好きなジャンルが多いからかもしれません。
興味関心の広さは仕事にも役立っている気がします。例えば、僕は漫画もアニメも好きでよく見ているので、声優のお仕事をさせていただいた際には経験が生かせたように思います。声だけのお芝居と、いつものお芝居は違うと理解したうえで挑んだこともあり、自分で言うのもなんですが、なかなかうまくできたんじゃないかな(笑)。やっぱり好きなことが多いと、やっていて楽しいと思える仕事や得意分野が増えますよね。
就活・就職という人生の岐路に立ち、思うようにいかず悩む学生は多い。
ジブン軸を持って人生を歩む先輩として、選択には後悔が付き物で、
希望した進路かどうかは問題ではないと諭す。
僕は初めからお芝居がやりたかったわけじゃないんです。芸能界に漠然とした憧れはありましたが、お芝居をやりたいとは思っていませんでした。でも今は、この仕事で一生食べていけたらいいなと思っています。それはやっぱり本気でお芝居と向き合ってきたからなんですよね。
人生、やりたいことをやれている人もいれば、そうじゃない人もいますよね。第一志望とは違う仕事をしている人もたくさんいるはず。ただ、望んだ道でもそうじゃない道でも、いつか後悔する日が来ると僕は思っているんです。「あの時、あっちの道を選んでいたら」って。それでも「この道を選んでよかった」と前を向けるかどうかは、自分の歩み方次第だと思っています。
PROFILE
よしざわ・りょう
1994年2月生まれ、東京都出身。アミューズ所属。2009年デビュー。映画「国宝」(25年)、連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK/25年)など多数の作品に出演。ミュージカル、声優、ナレーションなど活動の幅が広い
企画・制作=日本経済新聞社Nブランドスタジオ
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