日本経済新聞 連動特集 新卒採用広告特集 企業から学生へのメッセージ

「問い」から見つけるジブン軸 インタビュー 
デザイナー/アーティスト 篠原ともえさん

好きなことを仕事にする―。デザイナーの篠原ともえさんは自分のワクワクに率直に動く。10代で歌手デビューを果たすと一躍時の人になり、個性的なスタイリングの「シノラーファッション」ブームを生み出した。その後、舞台俳優を経てデザイナーに転身し、周囲を驚かせる。壁にぶつかりながらも常に前向きな篠原さん。その歩みには就活生の背中を押す「何か」がある。

迷ったらワクワクに従う

気持ちは常に新人

10代は歌手として、20代は舞台俳優として衣装をまとう側だった篠原さんが、
なぜデザイナーという作り手側に。

 ずっと作ることが好きだったんです。子どもの頃から絵を描いていて高校と大学は服飾系に進みました。祖母が着物の針子で母は洋裁をたしなんでいたのも原点ですかね。芸能界に入ってからもデザインへの情熱はなくなりませんでした。シノラーファッションがブームだった頃も衣装は先に自分でイメージを決めてからスタイリストさんに用意してもらっていました。

 30代で衣装デザインの仕事をいただけるようになり、専念を決意したのが40歳。好きなことを諦め切れない思いが原動力でしたね。

 夢をかなえるまで遠回りをしたと思うこともありますが、私にとっては必要な道のりでした。ファッションだけではなく、エンターテインメントや天文などの幅広い分野に熱中したことが、今のキャリアに生きていると感じます。

昨年、正倉院の宝物・漆胡瓶(しっこへい)からインスピレーションを受けて制作した「LACQUERED EWER SHOSOIN DRESS」 PHOTO:SAYUKI INOUE

苦労もあったのでは。

 2020年に夫であるアートディレクターの池澤樹さんと、クリエーティブスタジオ「STUDEO」を設立しました。ソフトウエアの使い方やビジネスマナーなど、一から覚えることばかり……。これまでの経験が生かせず悔しい思いもたくさんしましたが「やるしかない!」と今も日々勉強中です。学生のうちにもっと勉強しておけばよかったと思うこともありますが、社会人になってからでも学ぶ機会はたくさんあります。いつ学び直しても遅くはないと実感していますし、むしろまだまだ学びたい。仕事では様々な分野のプロと出会えるので、自分は常に新人という気持ち。よく観察し、つつましく学ばせてもらっています。

 特に大変なのはリサーチですね。制作に入る前に、制作物やプロジェクトの背景などを綿密に調査します。ネットで調べて、図書館に行って、資料をまとめて。大量の提案書を作っては「まだ足りない」と池澤さんに返されて、まさに千本ノック(笑)。

 でも、丁寧に時間をかけて準備するほど、アウトプットが良くなるのを実感するんです。慣れない作業を地道に続けるのは苦痛ですが、無駄な時間ではありません。苦手なことを乗り越えてでもやりたいことこそが、自分の軸だと気づかされます。

デザインを仕事にする前後で変化はありましたか。

 自分がワクワクするかという軸は昔から変わらずに大切にしています。今はプロジェクトを一緒に進める仲間が喜ぶかどうか、社会が喜ぶかどうかを加えた、3つの軸を大切にしています。

 シノラーブームの時は自分の好きが先にありました。結果的に誰かの心に響いて、それが自分の喜びでもありました。今はデザインを受け取る相手の気持ちや社会がどう動くかまで想像して、ものづくりをしています。

 エゾシカの革の端切れで着物を仕立てた時には、どうしたら皮革文化に貢献できるだろうと考えながらデザインをしました。作品をきっかけに職人さんや工場が取材されたことで「自分たちのアイデアで伝統工芸や地域産業に光を当てたい」と思うようにもなりました。

2022年に篠原さんがデザイン・ディレクションを手がけた革の着物作品「THE LEATHER SCRAP KIMONO」 PHOTO:SAYUKI INOUE
©︎TANNERS’ COUNCIL OF JAPAN

アイデアの源泉は。

 作品は作り手の好奇心や魅力がにじみ出ると思います。いつどんな経験が役立つか分からないので、今も美術館に行ったり自然に触れたりファッション以外からも刺激を受けるようにしています。写真を撮って満足するのではなく、よく観察して自分の心の動きに意識を向けたほうが長く心に残ります。

 地方のアートイベントや縫製工場にも足を運んでいます。人との出会いはインスピレーションの源です。誇りや愛情をもって働く人たちの熱量を肌で感じられるのは現地を訪ねたからこそ。私なりの関わり方で地域や文化の魅力を発信したいとより強く思いますし、アイデアも湧いてきます。

 最近は日本文化への関心が高まり書道を習い始めました。今後はグローバルな仕事も視野にいれているので、英語も勉強したいです。

時には信念を手放す

社会へ踏み出す若者に向けてメッセージをお願いします。

 新しいことへの挑戦に不安はつきものです。私自身、芸能活動から離れることに怖さもありました。歌も舞台も大好きで天職のつもりで活動してきたから、同じように専念できるのか、必要とされる人材になれるのかと。

 でも、踏み出してみたらすんなり没頭できたんです。これまで大切にしてきた信念に固執し過ぎると、他の道が見えなくなってしまうこともあるでしょう。時には信念を手放して視野を広げてみることが大切だと思います。

 迷ったらワクワクに素直に従うこと。私自身、これまで何でもやってみるの精神で飛び込み挑戦してきたことが、今のキャリアにつながっていると実感します。最初から明確な軸がなくてもいいですし、軸が複数あってもいいと思います。あらゆる物事にアンテナを張ること、そして変化を柔軟に受け入れることが、自分の可能性を広げてくれるはずです。

撮影:堀内麻千子

PROFILE

しのはら・ともえ

1979年生まれ、東京都青梅市出身。2001年、文化女子大学(現・文化学園大学)短期大学部ファッションクリエーティブコース卒業。1995年に歌手デビュー。歌手・俳優活動を経て、現在はデザイナーとして活動。TOKYO FMにて天文にまつわるラジオ番組のパーソナリティーもつとめる

企画・制作=日本経済新聞社Nブランドスタジオ

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