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「前例がない」を理由に歩みを止めない。スタートアップに伴走する法務のこれから

「前例がない」を理由に歩みを止めない。スタートアップに伴走する法務のこれから
日々の生活や仕事を支えるプロダクトやサービスには、数年前に設立されたスタートアップ企業発のものが数多くあります。文章や画像を生み出す生成AI、自動運転をはじめとするモビリティ、健康や医療を支えるヘルステックなど、新しいテクノロジーを武器に市場を切り開く企業が次々と生まれています。

一方で、イノベーションのスピードに既存の法規制が追いつかず、ルールがまだ定まっていない状況に直面することも。不確実なリスクをコントロールしながら事業を前へ進めるうえで、企業法務はなくてはならない存在です。

スタートアップやベンチャーの支援に強みを持つ法律事務所ZeLo(以下、ZeLo)は、法務を「守り」の手段だけでなく「挑戦を後押しするもの」として捉え、事業の成長に合わせてともに走り続ける支援を提供しています。

今回は、大手通信グループから法務の世界へ転身し、現在はパラリーガルとして企業の新規事業を支援する小原優輝さんにインタビュー。スタートアップ支援の現場と、AI時代に求められる法務の価値について伺いました。
プロフィール
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小原 優輝

法律事務所ZeLo
LSP(顧問業務)部門 パラリーガル
2025年入所

法学部を卒業後、大手通信グループにてDXやネットワーク最適化の提案から保守まで一気通貫で担当。現在はLSP(顧問業務)部門に所属し、行政書士資格取得を通じて培った法務知識を基盤として、契約書レビューや法律相談の一次対応、関連法令の緻密なリサーチを担う。先端AIの利活用に伴うガイドラインや社内ポリシーの策定など、前例の少ない事業領域における企業の法務基盤の構築・標準化を幅広くサポートしている。

スタートアップやベンチャーが直面する「イノベーションと法規制の壁」

新しい技術を規定する法律はまだ整っていないことも少なくありません。スタートアップやベンチャーが事業を立ち上げる現場では、既存の法規制が想定していない「グレーゾーン」に踏み込む場面が珍しくありません。例えば、次のような論点です。

イノベーションの現場で直面する法規制のグレーゾーン

イノベーションの現場で直面する法規制のグレーゾーン
こうした領域では、参照できる前例も明確なルールも存在しないことが多く、企業だけで判断するのは容易ではありません。だからこそ、法務の専門家とともに進めたいというニーズが高まっています。

中でも近年、相談が急増しているというのがAIをめぐる論点。生成AIが一気に普及し、多くの企業が日常業務やサービスに取り入れ始めたことで、「どこまで使ってよいのか」という線引きを求める声が急速に広がりました。小原さんも、その変化を現場で強く感じていると話します。
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小原
「新しいサービスにAIを組み込みたい」「社内でAIを導入したいが、この使い方で問題はないか」といったご相談は増えていますね。例えば生成AIに顧客の情報を入力しても大丈夫なのか、といった不安の声も多いです。

社員向けに「ここまでは使ってよい」という線引きを示す社内ガイドラインや、会社として「こういうルールのもと使っています」と社外に公表するポリシーをつくってほしい、というご依頼につながることも増えてきました。
技術の進化に法律の整備が追いつかない、いわば過渡期。その中でビジネスを前へ進めるために、小原さんたちはどう支援しているのでしょうか。
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小原
AIなど新しい技術に関する法律は、まだ定まっていない部分が多くあります。「これは禁止されている」とはっきり言えるものは、そのままお伝えできる。けれど、白黒つかない論点の方がずっと多いんです。

そういうときは、いまどこまで議論が進んでいるかを踏まえて、「こう考えることもできます」「この点には留意してください」とお伝えしていく。ほかの似た規制ではこう整理されているので、同じ考え方を当てはめてこのように進めてほしい、とご提案することもあります。いまだ答えのない領域に、現時点でどう対応すべきかをさまざまな観点から考えていくんです。
決まり切った答えがない中でも、過去の相談事例や類似事例を踏まえ、今の状況に照らして適切な判断を導いていく。スタートアップ支援の最前線には、こうした難しさと、それでも前へ進めようとする法務の姿があります。
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テクノロジーと文化で挑戦を後押しする、ZeLoの強み

では、答えのない領域で「挑戦を後押しする法務」を、ZeLoはどのように実現しているのでしょうか。その背景には、大きく二つの土台があります。一つはテクノロジーの徹底活用、もう一つは、自らもスタートアップ企業として挑戦を続ける組織の文化と体制です。

リーガルテックと生成AIの活用

リーガルテックと生成AIが担う法律業務の例
小原さんが担うパラリーガルは、弁護士の業務を支える専門スタッフです。法令や類似事例のリサーチ、契約書レビューの一次対応などを通じて、弁護士が高度な判断に集中できる環境をつくります。この実務の中で、テクノロジーは大きな役割を果たしているといいます。

ZeLoは2017年に設立された企業法務を中心に取り扱う法律事務所で、グローバルでリーガルAIを提供するLegalOn Technologies(旧LegalForce)と同時に創業。LegalOn Technologiesが提供する法務特化型AIエージェント搭載の「LegalOn」は、契約書の審査・管理をはじめ、法務業務全般の効率化を支援するサービスです。ZeLoはこうしたサービスに加え、生成AIも日々の実務に取り入れています。

LegalOnなどのリーガルテックが担う法務業務

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小原
以前は、分厚い書籍や過去の判例を一つずつ確認していくのが調査の中心だったと聞いています。今は生成AIやリーガルテックを使うことで、調査の時間を大幅に短縮できるようになりました。複雑な案件でも「どの法令やどの論点から手をつけるべきか」という当たりをつけやすくなっています。

過去の相談事例や社内に蓄積された知識もデジタル上に整理されているので「この論点は誰が詳しいか」を探して回らなくても、必要な情報にたどり着けるんです。
誤字・脱字のチェックのように、正誤判断できる形式的な作業はツールに任せ、徹底して効率化する。こうした業務改善を支えているのは、トップダウンの号令ではなく、一人一人が自発的に最先端のツールを試す現場のカルチャーだといいます。
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小原
ZeLoには「テクノロジー推進部門」のような専門の部署があるわけではありません。弁護士もパラリーガルも、それぞれが「これは使えそうだ」と思ったツールを自分で試して、良かったものを共有していく。新しいものを取り入れることに上層部も前向きなので、変化が起こりやすいんです。
小原さんは、こうした効率化が、クライアントに選ばれる理由にも直結しているといいます。
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小原
弁護士が一から動いてしまうと、どうしても支援単価が高くなります。初期の幅広いリサーチや一次対応はツールを使って効率化することで、全体のコストを抑えられる。そのため、資金に限りのあるスタートアップでも利用しやすい価格でご提供できるんです。

前のめりな挑戦を後押しする文化と体制

ZeLoのもう一つの強みは、組織の姿勢そのものにあると小原さんは語ります。
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小原
守りに入るだけでなく、いかに前のめりに挑戦できるか、そのために何をすればいいか。そう考えられるのが、ZeLoの強みだと思います。

「前例がないから、安全のためにやめましょう」ではなく「どうすれば前に進められるか」を一緒に考える。なぜ数ある法律事務所の中でもZeLoに相談してくださったのか、その背景や目的までくみ取って、スタートアップの目線でサポートすることを大切にしています。
こうした組織文化の根っこにあるのは、ZeLo自体が法務領域におけるスタートアップとして立ち上がったという歴史です。

代表の小笠原弁護士自身が事業を起こした経験を持ち、自分たちもスタートアップとして悩み、乗り越えてきた。その感覚が事務所全体に共有されているからこそ、クライアントと同じ目線で寄り添えるのだと、小原さんは話します。
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小原
入所当初の私は、相談を受けると似た事例や関連する法令を幅広く調べて、「前例があるので、ここまでは問題ありません」と弁護士に共有していました。しかし、ある弁護士から「前例をまとめるだけでは、チャレンジしたくて相談に来てくれた企業の期待に応えられない」と指摘を受けたんです。

前例をただ読み解くのではなく、どう発展させられるか。そこまで頭を使うことを求められていると気づきました。
組織としての体制も、挑戦を後押しする設計になっています。ZeLoの組織は法務業務のアウトソーシングに特化したチームと、契約書のレビューや法律相談を担うチームに分かれ、小原さんが所属するLSP(顧問業務)部門は後者に当たります。その働き方は、一般的な法律事務所とは少し違うようです。
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小原
一般的な法律事務所ではパラリーガルの業務が細分化されており「この弁護士の担当」「このグループの担当」と、担当分野が固定されることもあるようです。

ZeLoでは、一人のパラリーガルが複数の弁護士、複数の事業領域にまたがって動きます。私自身、常に3〜4人、スポットでの対応も含めると10人ほどの弁護士とやり取りしていて、代表の小笠原と一緒に働くことも。だからこそ特定の分野に偏らず、案件ごとに必要な知識を広げていけるのだと感じています。
担当の垣根を越えて多様な案件に関わるからこそ、知識の幅が広がり、変化への対応力も磨かれていく。それが、ZeLoのパラリーガルの働き方であり、スタートアップ・ベンチャー支援に必要とされる強みとなっています。

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