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農林・水産業界を 理解するポイント

  • 高齢化と就業者の減少は長年の課題。一方で、企業の参入や法人化で大規模化も進む
  • 6次産業化やAI・IT・RTの導入で収益の拡大と生産性向上を目指す
  • 伸びしろの大きい海外市場への展開に期待
  • 食料安全保障の観点からも農林・水産業の重要性は高い

業界の現状と展望

自然の恵みを活かして私たちの生活を支える

自然の恵みを生かして私たちの生活を支える

農林業には、米や野菜・果物などの農作物を栽培する農業、乳製品・食肉・卵などを生産する畜産業、木材やキノコなどを産出する林業がある。一方、水産業には、海や湖沼、河川などの漁場に生息・養殖している魚介類を捕獲する漁業や、魚介類を缶(瓶)詰や練り製品、冷凍品などに加工する水産加工業がある。
また、農業では農作物を栽培する農家に、農機、種子・種苗、農薬、肥料、生産管理システムなどを、畜産業では飼料などを、漁業では船舶や魚群探知機などを開発・販売する会社がある。こうした会社は国内外で事業を展開しており、農林・水産業界の発展と効率化をフォローしている。
農林・水産業界は、人間の生きる源である「食」を支えるだけでなく、住居や日常生活に欠かせない木材の供給、国土の保全、美しい自然環境の提供といったさまざまな役割を担っている。
なお、農林・水産業者の多くは、自然界から採取・取得した資源から富を得る1次産業に含まれるが、天然資源を加工して食品を製造する場合は、製造業(2次産業)となる。

深刻な就業者数減と高齢化

農林業の基本構造や実態の変化などを明らかにするために、5年に1度行われる「農林業センサス」によれば、2025年2月1日現在の農林業経営体(経営耕地面積が30a以上など、一定の規定を満たして農林業を行う者)数は、全国で83.9万経営体、5年前に比べ25.3万経営体(23.2%)の減少となった。このうち、農業経営体は82.8万経営体で、24.7万経営体(23.0%)の減少。林業経営体は2.3万経営体となり、1.1万経営体(32.9%)の減少となった。
なお、農業経営体のうち、個人経営体は78.9万経営体。5年前に比べ24.8万経営体(23.9%)減少した一方で、団体経営体は3.9万経営体。同0.1万経営体(2.9%)増加となった。団体経営体のうち84.0%は法人で、団体経営体の増加に伴い、1経営体あたりの経営耕地面積は増加傾向にある。同調査によれば1農業経営体あたりの経営耕地面積は3.7ha(北海道は34.5ha、都府県は2.6ha)と、5年前の3.1ha(北海道は30.2ha、都府県は2.2ha)から増加。北海道では耕地面積規模が100ha以上層で、都府県では10ha以上層で農業経営体数が増加している。
また、農林水産省の「漁業労働力に関する統計」によれば、2024年の海面漁業経営体数は6.1万経営体と前年の6.6万経営体から0.5万経営体の減少。漁業就業者数は、11.5万人と前年の12.1万人から0.6万人減少した。

ポイント

農地は食物の生産地であるだけでなく、雨水の貯留や水源の確保にも役立っており、水害の軽減・防止にもつながっています。景観の保全も重要で、耕作地放棄対策も急がれています。

6次産業化に加えて、情報技術(IT)やロボット技術(RT)に活路。海外市場への売り込みも重要

1次産業の農林・水産業だけでなく、2次産業の製造業や3次産業の小売業などとの総合的な展開を図る農林・水産業の6次産業化(1次×2次×3次)に取り組むことで、所得の向上や雇用の拡大、生産物のブランド化などを通じた地域の活性化が期待されている。具体的には、農産物のネット販売もその一つだ。消費者が生産者から直接食材を購入できる農産物の宅配事業(産地直送サイト)は、コロナ禍での巣ごもり需要の拡大以降も人気を集めており、有力な販路となっている。また、農園での収穫体験、農園一体型レストランなども一例だ。さらに近年は、農林・水産業の作業、料理教室や暮らしぶりなどを体験できる宿泊施設をオープンする事例もある。「ガストロノミーツーリズム(観光での体験・活動がその土地の食や食材に結びついているのが特徴で、ワインツーリズムが好例)」の中には、訪日外国人に人気が高いものもあり、新たな販売ルートに結びついたり、SNSで情報が拡散されたりすることで、地域や食材のブランド化や活性化に一役買うケースも見込まれる。

農林・水産業界では、担い手の高齢化と後継者の確保だけでなく、国内消費の漸減も課題になっている。「食」の担い手である、農林・水産業には高い潜在能力と発展の可能性が秘められている。そのため、効率的かつ安定的な経営ができる担い手の育成や確保のため、就農支援や学生世代への機会提供など、さまざまな施策が行われている。
生産面では、農林・水産分野以外からの技術や知見の活用を進めており、情報技術(IT)やロボット技術(RT)の導入による省力化、高品質化を目指している(スマート農業:業界関連用語参照)。先の「2025年農林業センサス」からも分かるように、企業の参入や既存従事者の法人化、大規模化も進んでおり、農業を営む上での基盤強化が続いている。
一方、消費面では大きなのびしろが期待できる海外市場での販売に力を入れている。農林水産省の「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」によれば、2012年の農林水産物・食品の輸出額は4,497億円だったが(農産物2,680億円・林産物*1 118億円・水産物1,698億円)、2021年には、政府が目標の一つとしていた1兆円をはじめて突破。2025年は前年比12.8%増の1兆7,005億円(農産物1兆1,008億円・林産物 735億円・水産物4,231億円・少額貨物1,031億円)となった。
国別では、アメリカ向けが前年比13.7%増の2,762億円、韓国向けが同20.0%増の1,094億円、ベトナム向けが10.7%増の954億円など、多くの国や地域で総じて好調だった。昨年大幅に減少した香港と中国は、それぞれ同0.8%増の2,228億円、同7.0%増の1,799億円となった。
品目別では、健康志向や日本食への関心の高まりで抹茶を含む抹茶粉末の需要が多く、「緑茶」が前年比357億円増、ベトナムでの現地加工の拡大などの影響で「ホタテ貝」が同211億円増、大型サイズの需要の高まり等で単価が上昇した「ぶり」が同113億円増となった。

海外消費者の所得向上で購買層が増加したことや、訪日外国人増加で日本の農林水産物・食品の魅力が海外に広がったこと、さらに輸出拡大に向けて政府と農林水産事業者が行ってきたさまざまな取り組みも功を奏した。
安心安全でおいしいとの評価が高い日本の農水産物。政府は、2030年には農林水産物・食品の輸出額5兆円、食品産業の海外展開による収益額3兆円、インバウンドによる食関連消費額4.5兆円の達成を目標としている。

*1 林産物の品目は、丸太、合板、木製家具、製材

先進国で最低レベルの食料自給率。食料安全保障の観点からも課題に

国内の食料消費が国産でどの程度賄えているか、我が国の食料供給に対する国内生産の割合を示すのが食料自給率。農林水産省によると、その示し方については、牛肉36%や小麦15%といった具合に、単純に国内生産量と国内消費仕向量を重量で計算することができる品目別自給率と、食料全体について共通の「ものさし」で単位をそろえることにより計算する総合食料自給率の2種類がある。さらに、総合食料自給率は、熱量で換算するカロリーベースと金額で換算する生産額ベースがあり、2024年度の日本のカロリーベースの食料自給率は38%、生産額ベースでは64%となっている。
農林水産省の資料によれば、2022年の諸外国のカロリーベースの食料自給率は、カナダ177%、オーストラリア247%、アメリカ101%、フランス118%、ドイツ79%、イギリス59%などとなっており、日本は先進国中で最低クラスの水準だ。食料自給率向上が必要とされており、政府は2030年度までに、食料自給率をカロリーベースで45%、生産額ベースで75%に上げることを目標としている。

ポイント

農林水産省による「肥料をめぐる情勢」(2025年12月)によれば、化学肥料の主な原料である尿素、りん酸アンモニウム、塩化カリウムはほぼ全量を輸入しています。そのため、政府では化学肥料の節減や、堆肥・下水道汚泥資源などの国内資源の活用を可能な限り進めていくという考え方で目標を設定しています。食料自給力の向上には、こうした取り組みも重要です。


食料の多くを海外からの輸入に頼り過ぎると、紛争の勃発や災害・天候の変化、食料需要の増加などによる相手国の輸出計画の変化に、大きな影響を受けることになる。2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻。ロシアは天然ガスや石油などの主要な産出国で、ウクライナは、食料や鉱物などを輸出している。穀物を中心とした食料やエネルギー価格などの商品市況は高騰し、世界経済と穀物や資源などの市場に大きなショックを与えたことは記憶に新しい。全ての国民が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できるようにすることは、国の基本的な責務である。多くの穀物を輸入に頼る日本では、ある意味平時であることを前提に、自由貿易による食のサプライチェーンが構築されている。しかし、世界市場で大きな力を持ちつつある大国のふるまいや、軍事侵攻、テロ活動、大災害、気候変動、人口増加などの諸要因はすでに食のサプライチェーンに影響を与えつつある。そのため、政府は2024年に、農業政策の基本骨格となる「食料・農業・農村基本法」を、およそ四半世紀ぶりに改正した。国内生産、輸入、備蓄を適切に組み合わせて食料の安定的な供給を確保することとしている。また、同法においては、不測時における食料安全保障に関する規定を設け、不測時において国が必要な施策を講ずることを明らかにしている。

ポイント

農林水産省の「種苗をめぐる情勢」(2025年8月)によれば、穀類、果樹の種苗は、ほぼ全量国内で生産されていますが、野菜種子については国内流通の約9割が海外で生産されています。ただし、これは日本の種苗会社が生産に適した海外の複数国でリスク分散して生産を行っているためで、約1年分を国内で備蓄するなど、安定供給が確保されています。

脱炭素社会実現で期待される農林業

国土の約3分の2に及ぶ森林面積を有する日本。政府はこれまでも、公共建築物において木材の利用に取り組んでいたが、2021年10月施行の法律では、対象を公共建築物から民間の建築物にも拡大。脱炭素社会実現に向けて、さらに木材活用を積極的に推進する方針を打ち出し、木造ビルの設計や施工に関する技術の普及、人材の育成も進めることとなった。
SDGsやESG投資の観点からも木材ビジネスへの関心や期待は高く、建築業界でも、病院やオフィス、ホテルといった非住宅分野の木材利用比率向上の動きを加速。高層の木造ビル建築計画に着手している企業もある。

業界関連⽤語

MSC認証・ASC認証

いずれも厳しい基準をクリアしたところに対して第三者機関が与える認証。MSC認証は海のエコラベルともいわれ、Marine Stewardship Council(海洋管理協議会)が管理、持続可能な漁業で取られた水産物であることを示している。対して、ASC認証は、Aquaculture Stewardship Council(水産養殖管理協議会)が管理、天然の水産物ではなく養殖による水産物に対して認証が行われている。

種苗法改正

種苗法は新たに開発されたブドウやイチゴ、サクランボなどの農作物のうち、国に登録された品種を保護するために作られた法律。しかし、これまでは無断で海外に持ち出される事例が多く、海外への流出を防ぐために改正された。主な改正点は、開発者が輸出できる国や国内の栽培地域を指定でき、指定国以外の国に故意に持ち出すなどした場合に10年以下の懲役または1,000万円以下(法人の場合は最大3億円)の罰金が科せられることなど。開発を手がける農家からは改正に賛同する声が多い一方で、農家が収穫物から種や苗を採って次の作付けに使う自家増殖にも開発者の許諾が必要になったことに対して、手続きの煩雑化や許諾料の負担への懸念から反対する声もある。

スマート農業

状況を把握・管理するセンサーやドローン、ロボットなど、さまざまなICT(情報通信技術)を活用して、高品質生産を効率的に超省力で実現する最先端の農業。作業の自動化やデータの活用などを通じて、農業現場の課題を最先端技術で解決することを目指している。繊維状の土壌を使い、二酸化炭素や光量などもコントロール、完全自動化を目指した「植物工場」も出現している。
また、スマート農機(ロボット技術やAI、IoTといった先端技術を活用した次世代の農業機器)の導入は、これまで重労働だった農作業の多くを自動化・省力化してくれる。例えば、スマート農機を使った乾田直播(ちょくは)栽培(水を入れない乾いた田んぼにじかに種をまいて、苗が育ってから水を入れる手法。別環境で育苗した後にあらためて田植えするなどの作業が不要になるため、特に大規模な農地において省力化や効率化がはかれる)への期待も高い。
矢野経済研究所の調査によれば、2024年度のスマート農業の国内市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比9.9%増の331億5,400万円を見込んでいる。スマート農業技術活用促進法が2024年10月に施行されたこともあり、市場は拡大基調。2030年度のスマート農機の国内市場規模は788億4,300万円まで拡大すると予測している。

サーモンの陸上養殖

文字通り、海面ではなく陸上で魚介類の養殖を行うこと。陸上養殖には、大きく分けて「掛け流し式」と「閉鎖循環式」の2種類の方法があり、養殖水槽にポンプで海や川から取水し汚れた水を排水する「掛け流し式」は、ヒラメやトラフグ、アワビ類など主に高級な魚介類を対象にしていた。一方で、「閉鎖循環式」は、養殖水槽の水を浄化して再度水槽に入れる。循環ポンプやろ過装置といった大型設備が必要になるが、環境負荷が少なく、気候や天候の影響も受けることなく飼育環境を管理できるため、品質と生産性の向上が可能となる。食品業界のみならず、総合商社や通信、鉄道といったさまざまな業種の企業や自治体が、陸上養殖に取り組んでおり、すでに日本各地でサーモンを中心とした「閉鎖循環式」の陸上養殖が始まっている。

カバークロップ

カバークロップとは、それ自体は収穫対象とはならないが、作物の休閑期や休耕地などに植えられる作物や植物のことで、土壌の浸食防止や雑草制御、農村景観美化、有機物の供給などさまざまな効果が知られている。近年は、光合成を通じて二酸化炭素を吸収する脱炭素機能からもカバークロップが注目されている。食用として収穫することはないが、植物が吸収・貯留した二酸化炭素はクレジットとして数値化され、企業がカーボンオフセットのためにそのクレジットを購入できるからだ。アメリカでは、すでにこうした農家が増えつつある。

完全人工生産ウナギ

古くから、日本人にとってなじみ深いウナギだが、その生態は謎の部分が多く、産卵場所も近年まで特定されることはなかった。そのため、ウナギの養殖には、川などで捕まえた天然のシラスウナギが使われている。新日本科学は、困難といわれていたシラスウナギの人工生産に着手し、2017年に世界ではじめて地上でのシラスウナギの生産に成功した。さらに、飼育や研究を続けることで、2022年に卵から人の手で育てる完全養殖(成魚のウナギから採卵して人工ふ化、さらに成魚まで育て、再度採卵してふ化させること)した食用ウナギの飼育にも成功、同年12月に試食会を開催するに至っている。
また、2023年7月には、近畿大学でもウナギの完全養殖に成功したことを発表した。ニホンウナギの稚魚は激減しており、「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」と絶滅危惧種にも指定されている。
ウナギの完全養殖自体は、2010年に水産総合研究センターが成功しているが、大規模な生産の実現には至っていない。完全養殖では、卵からふ化した仔魚(しぎょ)を稚魚(シラスウナギ)に育てる工程が最も難しいとされており、越えるべきハードルは多い。さまざまな企業や機関がウナギの食文化保存を目指して課題に取り組んでいる。

白トリュフの人工栽培に成功

2015年から国産トリュフの栽培化を目指して研究を進めていた国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所は、白トリュフの一種について、試験的な人工栽培に成功したことを明らかにした(2023年2月)。トリュフは、キャビアやフォアグラと並ぶ世界三大珍味の一つで、高級食材として知られている。マツタケとおなじく香りが珍重される食材で、世界には180種類以上が存在すると推定されており、日本にも20種類以上のトリュフが存在するという。トリュフは大きく、黒トリュフと白トリュフに分かれており、黒トリュフはすでに人工栽培が行われているが、白トリュフは天然のものしかない。今回、人工栽培に成功したのは、国内に点在するホンセイヨウショウロという白トリュフで、厳密には欧州のものとは異なるが、ホンセイヨウショウロは欧州の白トリュフ同様に、独特の風味と芳じゅんな香りが特徴だという。安定生産と産業創出が期待される。

アニマルウェルフェア

アニマルウェルフェアとは、「動物が生きて死ぬ状態に関連した、動物の身体的及び心的状態」のこと。世界の動物衛生の向上を目的とする国際獣疫事務局(WOAH)の勧告において定義されている。家畜を快適な環境下で飼養することでストレスや疾病を減らすことが、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、農林水産省は、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めており、畜種ごとに飼育管理に関する指針を定めている。

どんな仕事があるの︖

農林・水産業界の主な仕事

研究開発
農作物や花、種子などを、より丈夫で生産効率の高い品種に改良するために、研究・開発する。

産地開発
土壌や水などを調査し、良質な農作物が収穫できる土地を探す。また、新しく栽培を始めるための土台を作ることも担う。

⾷品管理
安全で安心できる食料を消費者に提供するため、農作物や畜産物の品質を管理する。

販売促進
「売れる」商品を調査・研究するため、マーケティングや宣伝を企画・立案する。

生産者
米や肉、野菜、花などを生産する、いわゆる農家や漁師など。

業界地図でもっと詳しく知る

※原稿作成期間は2025年12月10日〜2026年3月31日です。

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