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保育士と一般就職
徹底解説!

保育士と一般就職 徹底解説!

制度

ここでは、保育士のために国や自治体が創設した処遇改善制度について、
内容を分かりやすく解説します。

1.2025年度より複雑だった加算制度が一本化!

保育士不足の原因として、「平均賃金の低さ」が挙げられることは少なくありません。実際、2013年に厚生労働省が実施した調査※では、「賃金が希望と合わない」という理由で保育士の道を選ばなかった有資格者は47.5%に上っています。

※厚生労働省職業安定局 「保育士資格を有しながら保育士として就職を希望しない求職者に対する意識調査(平成25年)」

こうした事態を打開するため、国は本格的な保育士の処遇改善に取り組んできました。それが、2015年度に導入された「処遇改善等加算Ⅰ(基礎分・賃金改善要件分等)」、2017年に導入された「処遇改善等加算Ⅱ」、2022年からの「処遇改善等加算Ⅲ」です。これらの加算により、ここ数年、保育士の平均年収は右肩上がりとなっていました。

しかし、処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲについては、「制度が複雑で分かりにくい」「申請のための手続きが煩雑過ぎる」「加算を柔軟に分配しづらい」といった問題点がたびたび指摘されていました。そこで国は、保育士の待遇を安定的に改善することなどを目的に、2025年度より制度を大幅リニューアル。これまでの加算制度を整理して一本化し、1~3の区分に分けることとなりました。

 
こども家庭庁「令和7年度以降の処遇改善等加算について」

2. 新たな「3つの区分」、それぞれどんな内容?

それでは、新たな処遇改善等加算における区分1~3とは、どんな内容なのでしょうか。それぞれの加算について見ていきましょう。

〈区分1:基礎分〉

区分1は、旧加算Ⅰの基礎分に該当します。施設で働く人の平均経験年数に応じた金額が支給される仕組みで、平均経験年数0年で2%、1年で3%というように加算率が上昇していき、最大12%の加算率となります※。つまり、経験豊かな職員が多い園ほど、全体の給料が底上げされるわけです。
※2026年度以降、キャリアパス要件を満たすことが加算算定要件となる

保育士や幼稚園教諭はもちろん、事務職員、調理員、栄養士、運転手などを含め、通常の教育・保育に従事するすべての職員が、原則として賃金改善の対象に(非常勤職員含む)。勤続年数を基準として行う昇給などにて、適切に分配することが求められています。

〈区分2:賃金改善分〉

区分2は、旧加算Ⅰの賃金改善要件分等に旧加算Ⅲを合算したものです。前者として6~7%(平均経験年数による)が、後者として月額9,000円程度が加算されるイメージです。区分1と同様、保育士や幼稚園教諭以外を含めたすべての職員が、原則として改善の対象になり得ます。

〈区分3:質の向上分〉

区分3は、旧加算Ⅱの内容を引き継ぐもので、研修修了やキャリアアップを評価してくれる加算だといえます。「副主任保育士」「専門リーダー」では月額4万円、「職務分野別リーダー等」では月額5,000円の処遇改善が図られます。役職の詳細や研修の内容は、③キャリア編をチェックしてみてください。

これまで、保育園等における役職は「園長」と「主任保育士」に限られるケースが多く、キャリアアップのチャンスを得られないまま退職してしまう方も少なくありませんでした。しかし、これらの役職が誕生したことにより、若手のころから将来の道筋が見えることでモチベーションアップにつながり、しっかりと処遇の改善も図られる仕組みが整ってきたのです。

なお、区分2と区分3については、加算額の1/2以上について、基本給や決まって支払われる手当で処遇改善することが求められています。つまり、臨時手当のようなものではなく、できるだけ毎月の給与が安定的に増額するよう、配慮されているというわけです。

このように、制度が一新されることで、より多くの保育士の処遇が継続的にアップすることが期待されています。ただし、注意しておきたいのは、もろもろの加算要件をクリアし、申請手続きをしている園でなければ、これらの手当てをもらえないということ。また、職員への配分などは各園に委ねられている部分もあります。処遇改善に積極的な園であるかどうかは、職場探しにおける大きなポイントになるでしょう。

3. 自治体ごとに独自の施策も!

保育士のために動いているのは、国だけではありません。自治体ごとの施策で地域に保育士を呼び込もうとする取り組みも目立ってきました。ここでは一例として、5つの自治体において、どのような施策が行われているかご紹介します。

※以下の内容は2024年5月に調査したもので、今後の実施は未定の施策も含まれます。詳細は各自治体へお問い合わせください。

1) 神奈川県の取り組み

保育ニーズの増大に応じて、保育所の拡充や保育士確保に力を入れてきた神奈川県 。年2回の全国共通の保育士試験とは別に、県独自の保育士試験※1を実施しています。実技試験に代えて保育実技講習会を修了すればいいため、合格のチャンスが増えたといえるでしょう。また、指定保育士養成施設で保育士をめざす学生を対象に2年分の学費などを貸し付ける保育士修学資金貸付事業、さらに一部の市では宿舎借り上げ支援事業も実施されています(横浜市の場合、宿舎1戸当たり月額6万1,000円が上限※2)。

※1 「令和8年神奈川県地域限定保育士試験」より。登録から3年経過かつ1年以上(1,440時間以上)、地域限定保育士としての業務に従事した場合、申請によって全国で保育士として働ける保育士資格を得られる。
※2 「保育士宿舎借り上げ支援事業【令和8年度申請分】
より

2) 千葉県の取り組み

手厚い賃金上乗せがある東京都との格差を埋めるため、処遇改善に熱心な自治体が多いことが千葉県の特徴。その一つが船橋市で、「ふなばし手当」と名付けて年額66万1,360円※1もの賃金を上乗せしています。正規職員のみならずフルタイムと同等の働き方をしているパートタイム職員(1日6時間以上かつ月20日以上勤務している場合)も対象で、勤務1年目から受給することができます。また、千葉市※2でも月額最大4万円の賃金上乗せがあるほか、職員の配置基準に余裕を持たせることで過重労働の防止にも努めています。

※1 「ふなっしーも応援!船橋市内の保育園で働きませんか?」より
※2 千葉市「保育士等給与改善事業」
より

3) 大阪府の取り組み

大阪市では、「大阪市保育士・保育所等支援センター」を通じて市内の保育施設に就職した保育士に対して、就労奨励金5万円を支給しています。また、潜在保育士などの就職準備金として40万円の貸付(無利子、2年間勤務すれば返済免除)を行う他、未就学児を持つ保育士に対して保育料の一部をサポートする仕組みもあります。

※ 大阪市公式サイト「大阪市内で保育士として働く方を支援します」より。

4) 福岡県の取り組み

福岡県では、保育士の離職防止や有資格者の再就職支援などを目的とする資金を貸し付け、保育人材の確保・定着を図る取り組みが盛んです。貸付金の種類は全5種あり、いずれも一定の要件を満たせば、返還債務が免除されます。

※ 「ふくふくネット 保育士を応援する貸付金」より。

保育士が足りていないのは多くの地方都市でも同じことで、Uターン・Iターン就職を支援するため、移住すると数十万円もの補助金を支給するケースもあります。処遇改善制度を上手に利用し、あこがれの街、なじみの街で保育士としてキャリアをスタートしてみてもいいかもしれません。