社会課題と国家プロジェクトを学び選考対策に活かそう

社会課題に関心をもてば選考評価アップにつながる
何のために社会課題を学習するのでしょうか? それは、人事担当者や面接官から、「社会人と同じ土俵で語れる教養のある学生だ!」「視座が高い有望学生だ!」と高く評価されるため。また同時に、一目置かれる志望動機作成にも役立ちます。
さらに、課題解決というテーマで思考訓練をしていると、グループワークで他の学生から頼られ、場をリードする役回りを自然と担うというおまけもついてきます。
そのためにまずは、社会課題に関する広く浅い知識を格納する引き出しを、頭の中に作りましょう。

社会課題の一部をざっくり解説! 頭の中に引き出しをつくろう
みなさんも耳にすることが多い「少子高齢化」を起点に、ざっくりと日本をとりまく様々な社会課題に触れてみます。
少子高齢化なので、必然的に若者が減り続けます。若者が減れば、新入社員を確保できず人手不足の会社が増え続け、その結果、国全体としての生産力を維持できず、経済における国際競争力が低下します。
また、希少な若者は都市へと向かうため、地方は過疎化し、かつ、農林水産業を担う人たちの高齢化や減少が進みます。その結果、税収が減る地方自治体が増え、その地域の公共交通機関や上下水道、橋などのインフラ維持が困難となり、これも原因となってさらに人が離れていくという、良くないスパイラルに陥ります。


都市と地方を分けて考える人も少なくないのですが、たとえば森林の保全は都市に住む人々の飲料水の供給に大きな役割を果たしているので、地方の疲弊は、いずれは都市も巻き込むことになります。
他にも、エネルギーや食糧を輸入に頼っている日本にとって、陸地の10倍もあるEEZ(排他的経済水域)を含めた広い国土をいかにして保全・監視するかなどの大きな社会課題があります。
国家プロジェクト研究で有望会社を発掘すれば志望動機で苦労しない
(首相官邸ホームページより抜粋)
官民が連携し、社会課題を成長のエンジンへと転換し、
社会課題の解決と経済成長を同時に実現する。
持続可能で、包摂的な経済社会を創り上げていきます。
これは、首相官邸ホームページに掲載されている、国の成長戦略の序文です。ひらたく言えば、「民間の会社・団体は社会課題解決をビジネスチャンスにしてください、国は資金支援や規制緩和で支援を惜しみませんよ」ということです。
このように国が音頭をとるプロジェクトは「国策」や「国家プロジェクト」と表現され、昔から多くの会社が参入し、会社成長のエンジンとしてきました。
たとえば、現在進行形の国家プロジェクトの一つである「公道での無人バスやタクシーなどの移動サービス実現」には、自動車関連会社ばかりではなく、通信、センサー、カメラ、レーダー、AIなどの幅広い分野の会社も参入し、先行者メリットを享受しようとしています。
ちなみに、この国家プロジェクトの始まりの一つである国土交通省の「第1期ASV(先進安全自動車)推進計画」は1991年に始まっています。現在、このプロジェクトの中核を担っている各社の社員は、若かりし頃、未来の交通システムを創造するというプロジェクトにワクワク感や志をもって就職したのでしょう。


このようなプロセスを踏むことで、将来性のある会社を見つけられるだけでなく、ワクワク感や志の伴った志望動機を自然に作成することができます。
- インターンシップの志望動機例
- 私は〇〇の社会課題に問題意識をもっています。これを何十年という時間をかけてでも解決して社会の発展に貢献したいと考えています。このような志をもって会社研究をしたところ貴社を発見することができ、そして貴社のもつ独自技術やサービスについて詳しく知りたくなりました。これが、貴社のインターンシップに応募する理由です。
社会課題や国家プロジェクト学習で得た知識に面接官を引きつけよう
どのような国家プロジェクトがあるかについては、先に紹介した首相官邸ホームページに掲載されている「成長戦略」を、空き時間に閲覧するとよいでしょう。
さて、ここで一つ問題となるのは、学習した知識を本当に使う場面があるのか?ということです。
たとえば面接が「ガクチカ」だけで終わってしまっては、他の学生との差別化の切り札としていた社会課題や国家プロジェクトネタの出番がありません。そこで、「エントリーシート(以降ES)の志望動機」こそが、選考の起点と位置付けましょう。先に紹介した構成で志望動機を作成すれば、確実に知識を活用することができます。
また、ESで書くことによって、面接官からの「あなたは〇〇の社会課題に関心を持っているのだね、きっかけは? 理由は? あなたなりのアイデアはある? 役立つスキルや知識をもっている?」といった質問を導くこともできるでしょう。


また、万全を期すために「ガクチカ」にも対策をほどこしておきましょう。たとえば面接で「私が力を注いだのはアルバイトです…」等の一般的な回答をした後に、
最近は、△△がきっかけで〇〇の社会課題に関心をもち自分なりに学習しています(関連する授業を受講している場合は授業にも触れる)。
また並行して、この解決に関連する国家プロジェクトや会社の研究にも力を入れており、その結果、御社について知り、インターンシップに参加したいと思いました。
とアピールします。
自分が語りたい内容に、面接官の関心を引きつけることは、面接攻略の基本戦略です。面接を得意とする先輩たちは、この点にも知恵を絞り高評価を獲得してきました。
- 著者紹介
-
岡 茂信
「インターンシップで、みなさんの未来作りの応援者と、たくさん出会ってくださいね」
情報システム開発企業での、延べ10000人以上の面接・採用選考経験をもとに、1999年にジョブ・アナリストとして独立。全国のさまざまな大学及び就職イベントでの講演、キャリア授業、企業に対し採用アドバイスなどを行ってきた。企業の採用手法および意図を知り尽くした存在として、これまで、多くの就職活動生から頼りにされてきた。著書に「大学1・2年生のための就活の教科書」「エントリーシート 実例で分かる書き方」「インターンシップ・仕事体験(共著)」「自己分析 適職へ導く書き込み式ワークシート」「就職活動がまるごと分かる本 いつ? どこで? なにをする?」などがある。
ウェブサイト
「岡茂信の就活の根っこ」