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上場企業の「有価証券報告書」を活用して
業界・企業研究に差をつけよう!

有価証券報告書は、ライバルに差をつけるネタの宝庫。活用しないと損!

「有価証券報告書」とは、東京証券取引所をはじめとする国内4カ所の証券取引所に上場している会社が年に一度、経営結果を報告するために発行するレポート。この有価証券報告書を活用して会社研究を充実させ、志望動機関連の回答をブラッシュアップしましょう。
有価証券報告書の入手は簡単です。「上場企業名+有価証券報告書」で検索し、その企業のWebサイトに遷移すると、次のようなページにたどり着き、PDF形式の有価証券報告書を入手することができます。

PDFを開くと、たとえば以下のようなタイトルが記載された表紙が表示されます。

文字の雰囲気から、すこし「難解なレポートっぽい」という印象をもつかもしれませんが、有価証券報告書の構成はどの会社も同じですので、どこか1社の報告書を読んで「このあたりに、こういう情報が掲載されているんだな」ということがつかめれば、あとはそれほど時間をかけずに情報源として活用することができます。
慣れるまでは、「Ctrl+F(文書内検索)」で、ほしい情報にアクセスしてみましょう。

検索キーワード アクセスできる情報
経営指標 過去5期分の売上高や経常利益などの会社の実力を示す重要な数字がいっぱい。
経営方針 創業・経営理念や、「これまでの事業活動をとおして培った知見を活かして社会課題解決に貢献するイノベーション創出を目指す」などの、中長期経営戦略などが説明されています。重要情報です。
沿革 創業から最近までの、その会社の重要なトピックスが紹介されています。これから解説しますが、逆質問ネタを見つけられるかも。
研究開発 「CO2を排出しない水素ガスタービン、運搬や貯蔵に優れたアンモニアを燃料とするアンモニアガスタービンの開発」など、各社の次世代に向けた戦略を知ることができます。
平均 従業員の「平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与」が掲載されています。他社と比較したくなりますね。
管理職 「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「人材育成方針」などの情報にアクセスできます。人材育成で強調されている自主性などのキーワードにあわせて自己PRを練るのもよい考えです。
リスク 経営に影響を及ぼす可能性があるリスクと、その対策について記載されています。「気候変動・世界情勢・サステナビリティ」などに触れている会社が多いです。一般常識力を高めるために学習したい対象を見つけられそうです。

さっそく提案的な逆質問を準備して、会社研究力をアピール

有価証券報告書を活用する目的は、志望動機関連の回答を充実させ合格力を高めることなので、さっそく「逆質問」作りに活かしましょう。
たとえば「沿革」には、創業から最近までの経営上の重要トピックスが紹介されているので、最近5~10年をチェックしてみましょう。それをふまえて、提案的な逆質問を準備することができます。下の例を参考にしてください。

某社の沿革

  • 20✕✕年12月。東南アジアでの事業拡大に向けて拠点をベトナムに設立
  • 20✕✕年2月。オンライン旅行事業でのシナジー創出のため、旅行鞄製造販売のA社を子会社化

5年前に旅行鞄製造会社を子会社化されたとのことですが、シナジーは創出されましたか?私ならば、旅先で撮ったデジタル写真をアルバム化するサービスを提供できる小さなIT会社を子会社にしたいです。

経営環境や戦略を知っていることをアピール。未上場会社にもアピールできるのがよいところ

有価証券報告書からは、経営環境や戦略に関する以下のような情報も得られます。

  • デジタル技術進展に伴う異業種の金融事業への新規参入の継続(メガバンク)
  • 省エネ・省人化・脱炭素化を実現する「社会インフラのスマート化(モビリティ等の新領域)」を強力に推進(重工業)
  • 「移動とつながり」の力で、地域社会の衰退や幸福度の低下といった社会課題の解決を目指す(航空)
  • 新興国を中心とした人口増や都市化の進展、あるいは、先進国における堅調なインフラ更新投資などにより、緩やかな成長が見込まれる(建設機械)

たとえばエントリーシートで、「社会のインフラのスマート化が進む中での貴社の取り組みは…」「異業種の金融事業への新規参入が継続する中での貴社の取り組みは…」と、さりげなく引用してみましょう。
また、業界トップレベルの会社が認識している経営環境は、未上場会社を含む同業他社にも共通するものです。たとえば同業他社の面接で、「新興国を中心とした人口増や都市化が進展しています。これら新興国のインフラ投資をビジネスチャンスと位置づけ、私の強みのひとつである語学力を活かして活躍したいと考えています」と面接でアピールしてみましょう。

第一志望群の会社比較にも活用する

選考の日程がかぶっていると、どちらの会社に応募すべきかで迷うことがあります。そのような場合は、有価証券報告書に記載されている情報を整理した、次のような比較表を作成してみましょう。

  某業界A社 某業界B社
(連結)
当期純利益
(百万円)
19887 9,910
↑対前年比較 212% 128%
従業員
平均年齢
41.2 42.5
平均年間給与
(千円)
8,640 6,459
経営理念・方針 研究開発をとおして得た知見を積極的に発表し、心と体の両面から社会に貢献する。 アスリートのパフォーマンス向上支援から得たノウハウを、健康でありたい人に還元する。
経営戦略 世界の60歳以上の人口が今後非常に速いペ ースで伸びていくことが予測されていることから、健康年齢の延伸につながる製品や行動ノウハウを提供する。 競技シーンのサポートをとおして得た科学的データをもとに、ライフスタイル全体をターゲットにとして製品を開発する。
経営成果 経営のデジタル化を強力に推進した結果、ECサイトをとおしての売上が前年比50%増達成。
  • ・過去最高益を3年連続で更新
  • ・非メイン事業の第一弾として提供をはじめたワークスタイル部門が好調。
研究開発
  • ・研究開発費は6,000百万円(前期比23.9%増)
  • ・ウェルネスケア分野に注力
  • ・研究開発費3,000百万円(対前年比40%増)
  • ・ライフイノベーション分野を開拓する
女性
管理職比率
(実績)
役員9名中、2名(22%) 7.2%(2025年度末までに10%に引き上げる)
競合他社の
状況
  • ・ほとんどの競合他社が業績を伸ばしている
  • ・Eコマース市場の急速な拡大が、当社及び競合他社の売上増のエンジンとなっている
競合他社に関する言及はなし
  • ※原稿用に作成したもので、記載されている内容は、必ずしも正確なものではありません。

こうすることで選択しやすくなると同時に、比較する会社をコツコツと増やしていけば、その取り組み自体が学習となり、就活本番の時にも役立つでしょう。

PLUS
1POINT

第二・第三志望業界のトップ企業比較も作ってみよう

上述した比較表を、第二、第三志望業界でも、業界を代表する企業を対象にして作成してみましょう。

作成にあたっては、表計算ソフトの各シートに業界名を入力するとよいでしょう。
こうして他業界と比較することで、たとえば平均年収や、業界が貢献しようとしている対象の違いを一覧化できます。
そうすれば、以下のような回答ができるようにもなるでしょう。

なぜ、当社を志望されたのですか?
世界の高齢化が進展する中、製品やノウハウをとおして積極的に貢献するというビジョンをもたれていることが第一の理由です。わたしは、志望先を絞るにあたり、ホテル、鉄道、ゼネコンなども研究しました。他業界にも魅力的な会社はありました。たとえば、「高速鉄道の海外展開をはかる」というビジョンの会社に魅力を感じました。ただ、わたしはインフラよりも、もっと人々の生活に近く、より人生全体によき影響を及ぼせる仕事をしたいと考え、御社が属する業界に絞り、そして、御社と同業他社を比較したうえで、御社を志望したいと思いました。
著者紹介
岡 茂信

情報システム開発企業での、延べ10000人以上の面接・採用選考経験をもとに、1999年にジョブ・アナリストとして独立。全国のさまざまな大学及び就職イベントでの講演、キャリア授業、企業に対し採用アドバイスなどを行ってきた。企業の採用手法および意図を知り尽くした存在として、これまで、多くの就職活動生から頼りにされてきた。著書に「大学1・2年生のための就活の教科書」「エントリーシート 実例で分かる書き方」「インターンシップ・仕事体験(共著)」「自己分析 適職へ導く書き込み式ワークシート」「就職活動がまるごと分かる本 いつ? どこで? なにをする?」などがある。

ウェブサイト
「岡茂信の就活の根っこ」