実習の心得
臨床実習は、患者さんと直に接しながら歯科衛生士の業務を実地に学べる貴重な機会。ここで得た知識や技術は、今後の学習や就職してからの業務で大いに生きてくるはずです。学びを最大化するために心がけておきたいポイントをご紹介します!
今後に生きる知識・技術の身に付け方――実習現場編
1.実習先の職員や実習指導者に臆せず相談する
患者さんから質問されたり、実習先の職員さんから頼まれ事をされたりしたとき、まだ学生の立場では分からないことや解決しにくいこともあると思います。そうしたときは無理に背伸びをせず、必ず相談した上で行動してください。もしかしたら「これまでの学びを生かして、自分なりに対応すべきではないか」と意欲を見せる実習生もいるかもしれません。その姿勢はとても素晴らしいですが、実習生の判断によって患者さんをリスクにさらすわけにはいきません。状況が違えば対応の仕方も異なり、教科書に書いてあった対応がすべてのケースに当てはまるわけではないので、不安があれば臆せず相談を。それにより現場に即した対応の仕方が身に付いていくでしょう。

2.感想をフィードバックしてもらう
実習では、実習先の職員さんや実習担当の先生の指示の下、診療補助や患者さんの口腔ケアを行うことがあります。自分がやったことに対して感想やコメントをもらい、そのつどブラッシュアップしていきましょう。その際、「いかがだったでしょうか?」という漠然とした質問では相手が回答しづらいかもしれません。「どんな点が良かったか」「どんな点に気を付けるべきか」を具体的に聞き出せるよう、質問の仕方を工夫したいところです。
3.仲間と実習経験を共有する
実習で自分一人が経験できることには限りがあります。実習の休憩中や実習後の時間に、仲間と積極的に情報交換してください。自分が経験していないことも知識としてインプットできれば、そのぶん学びを増やすことができます。このとき「うまくいったエピソード」だけでなく「失敗したエピソード」も共有できると、学びが深まるだけでなく、仲間との関係性も深まるかもしれません。うれしいことも悲しいことも話せる仲間は、同じ目標に向かう同志としてかけがえのない存在です。
ただし、個人情報の取り扱いには気を付けてください。患者さんの氏名、性別、家族構成、健康状態といった情報は、個人のプライバシーに関わるセンシティブなものです。帰宅途中に立ち寄った飲食店や電車内など公共の場で、周りの人に聞こえるような声で話してしまった……ということがないようにしましょう。

今後に生きる知識・技術の身に付け方――自学自習編
皆さんが患者として歯科の診療を受けたとき、「触り方が雑過ぎる」「もう少しこちらの話を聞いてほしい」などと思ったことはありませんか。相手に不快感を与えないためには、適切な技術と細やかな心配りが必要です。そのことを意識して、実習中から積極的に練習していきましょう。
1.学んだことを記録し、振り返る
実習で得た経験を本当の意味で自分のものとするためには、学んだことを記録して折に触れて振り返ることが有効です。例えば、学んだことを大きめの付箋やメモにまとめ、教科書や参考書の関連ページに貼っておくという方法があります。現場で学んだ知識や技術は、再び同じような場面に遭遇したときに自信を持って対応するための基礎力となります。せっかくの学びが「その場限り」にならないようにしましょう。

2.親しい人に練習相手になってもらう
家族や親しい友人などに、手技や患者接遇の練習相手になってもらえるようお願いしてみましょう。仰向けで寝てもらうところから始まり、自宅でも道具がそろうブラッシングやフロスケアを行い、終了のあいさつをする――という一連の流れをやっていきます。その後、相手からフィードバックを受けます。客観的な意見をもらえると、自分では意識していなかったところに気付けるので、ケアの仕方や立ち居振る舞いについて見直しやすくなるでしょう。

3.自分が友人の練習相手になる
自分で自分の口の中を触るときと、他の人に触られるときの感覚には思っている以上に差があります。友人の練習相手を積極的に引き受ければ、身をもってたくさんのことに気付けるはずです。それを自分のケアに生かせば、グンとレベルを上げることができるでしょう。
実習しやすい雰囲気のつくり方
1.身だしなみを整える
人と人との関わりの中で、相手に不快感を与えず、心地良い雰囲気をつくり出すことは重要です。相手に好印象を与えておけば、会話や質問をするハードルが下がります。一つのポイントとして、第一印象を大きく左右する身だしなみに注意を払ってください。髪型や髪色、メイク、ネイルなど、確認しておきたい箇所はたくさんあります。プライベートの時間は自由ですが、実習中は衛生や安全性の観点から医療現場にふさわしいものにしましょう。
2.気持ち良くあいさつをする
「にこやかにハキハキと会話する人」と「表情が曇っていて元気がない様子の人」がいた場合、皆さんはどちらに話しかけたくなるでしょうか。あいさつという第一印象が決まるタイミングだからこそ、その一瞬を逃さずにパッと明るい印象をつくってみましょう。「瞬間的に勇気を振り絞るだけ」と考えれば、内気な人や人見知りが強い人もトライしやすいかもしれません。あいさつは、実習中の過ごしやすさを大きく変える「魔法」です。
3.あいさつに「ちょっとした情報」を添えてみる
例えば、「相手と出身地や誕生月、趣味などが同じ」という共通点は、ささいなことのようでいて実は大きな親近感をもたらしてくれます。実習初日の自己紹介や毎朝のあいさつ、休憩中の会話といった自分から発信できる機会に、こうした「ちょっとした情報」を添えてみましょう。すると、思わぬタイミングで相手から話しかけてくれたり、その話題から話が広がったりするかもしれません。どんなチャンスが舞い込んでくるか分からないので、話のきっかけになるタネをまいておきましょう。