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薬剤師の多様性あるキャリア

さらにキャリアアップしたい
薬学生のための資格ガイド

  • 01.
    がん領域編

  • 02.
    感染症領域編

01.がん領域編

今この瞬間にも医薬品は進化し続けているため、臨床に出てからも継続的に学んで知識をアップデートする必要があります。その一環として、専門・認定薬剤師資格に挑戦し、さらなるキャリアアップをめざす道もあるでしょう。具体的にどんな資格があるのか、ここではがん領域に関連するものをいくつかピックアップしてご紹介します。
※申請資格の概略や試験内容は、2021年末時点の情報です。新型コロナウイルス感染症の影響で試験方法などが変更されているケースもあるため、最新情報や詳細は各学会の公式サイトでご確認ください。

がん領域編
高度化するがんの薬物療法に
対応できる薬剤師

ここ40年以上にわたり、日本人の死因第1位となっているのが、がん(悪性新生物)。男性の2人に1人、女性の3人に1人は生涯のうちにがんに罹患するとされており、国民の健康課題として極めて重大です。患者数の増大、そして薬物療法の高度化・多様化に伴い、それに対応できる薬剤師のニーズも高まり続けています。

がん薬物療法認定薬剤師
(日本病院薬剤師会)

がん領域の薬物療法に必要な知識や技能を身に付け、薬学の専門家として多職種と連携しながら、患者さんに安全かつ良質ながん医療を提供することが期待されています。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること
ただし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす

Point02

病院または診療所に勤務し、がん薬物療法に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること

Point03

がん患者への薬剤管理指導の実績50症例以上(複数のがん種)を満たしていること

Point04

日本病院薬剤師会が認定するがん領域の講習会等で所定の単位(40時間、20単位以上)を履修していること

など

など

試験内容

質の高いがん領域の薬物療法を実践するために必要な、抗がん薬をはじめとする医薬品に関する知識を問う。具体的には、抗がん薬の薬効薬理や用法用量、調製、有害事象、支持療法など。また、がんの疫学や診断・病期分類、標準治療、臨床試験、がんゲノム医療なども出題範囲となる。

がん専門薬剤師
(日本医療薬学会)

がん領域の薬物療法に関する高度な知識と技術を備え、他の医療従事者と協働しながら実践することにより、患者さんに最大限の利益をもたらし、ひいては国民の医療・健康・福祉に貢献することが期待されています。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験を5年以上有すること

Point02

引き続き5年以上継続して日本医療薬学会の会員であること

Point03

「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、いずれかの認定を受けていること

Point04

がん専門薬剤師研修施設において、がん薬物療法に関する5年以上の研修歴を有すること

Point05

自ら実施した5年のがん患者への薬学的介入を伴った症例報告50症例(3領域以上のがん種)を提出すること

Point06

医療薬学に関する学会発表を2回以上、あるいは学術論文を1報以上有すること

など

など

試験内容

医療チームの一員として、医師などとコミュニケートするために必要ながんの基本知識、ホルモン療法を含む薬物療法、抗がん薬の医薬品情報、緩和医療、がん薬物療法における薬剤師業務などに加えて、症例に基づく総合問題も出題される。

患者さんの苦しみに寄り添った
薬物療法を提供

「がん対策推進基本計画」では、がんと診断されたときからの緩和ケアが推進されており、身体的な症状の緩和はもちろん、心の痛みにも寄り添う援助を初期から行うことが求められています。薬物療法に関する高度な知見を持ち、副作用への対応や医療用麻薬の適正使用などで力を発揮できる薬剤師は、さまざまな場面で重要な役割を担うでしょう。

緩和薬物療法認定薬剤師
(日本緩和医療薬学会)

緩和医療に携わる職種の緩和薬物療法に関する知識と技術を向上させること、ならびにがん医療の均てん化(全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ること)に対応し、緩和薬物療法に貢献できる知識・技能・態度を備えることが期待されています。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験を5年以上有すること

Point02

引き続いて3年以上、緩和ケアチームまたは緩和ケア病棟を有している病院等で緩和医療に従事していること

Point03

引き続いて3年以上、麻薬小売業者免許を取得し、かつ、がん診療を行っている在宅療養支援診療所等の医療機関と連携する保険薬局等に勤務し、緩和医療に従事していること

Point04

緩和医療領域に関する学会発表を2回以上行っていること

Point05

緩和医療領域の薬剤管理指導の実績について、過去6年以内の実績を30症例(病院薬剤師)または15症例(薬局薬剤師)提示できること

など

など

試験内容

テストセンターにおけるCBT試験(選択方式)で、提示された書籍やガイドライン、手引きの内容をもとに40問が出題される。

緩和医療専門薬剤師
(日本緩和医療薬学会)

緩和医療領域の実践能力に加え、研究能力や教育能力を兼ね備えた薬剤師の育成を進めるため、2021年にスタートした新たな資格制度です。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験を10年以上有すること

Point02

「日病薬病院薬学認定薬剤師」「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」「日本医療薬学会医療薬学専門薬剤師」「薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師」のいずれか1つ以上の資格を有していること

Point03

引き続いて5年以上、緩和薬物療法認定薬剤師であり、直近5年間に合計3年間以上の緩和医療領域の臨床業務に従事していること

Point04

緩和医療領域に関する学会発表を2回以上行い、緩和医療領域における1報以上の原著論文を発表していること

Point05

緩和医療領域の薬剤管理指導の実績について、定められた複数の領域で10症例を提示できること

など

など

試験内容

申請の際に提出した症例報告をもとに、口頭試問が行われる。

「通院でがん治療」を実現する
強力なサポーター

がん領域にも「病院から地域へ」の流れが及んでおり、日常生活を送りながら外来で薬物療法を受ける患者さんも増えています。自分らしく暮らし、時に仕事も継続しながら治療を受けられるメリットは大きいですが、一方で副作用への対応などが課題になることもあり、安全かつ効果的な治療を支える薬剤師の活躍が望まれています。

外来がん治療認定薬剤師
(日本臨床腫瘍薬学会)

外来がん治療を安全に施行するための知識・技能を習得し、地域がん医療において患者さんとその家族をトータルサポートすることが期待されています。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験を3年以上有すること

Point02

「日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師」「薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師」「日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師」「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダーレベル5」のいずれかの認定を取得していること

Point03

日本臨床腫瘍薬学会が認定するがん領域の研修等で60単位以上を履修していること

Point04

外来のがん患者の薬学的介入実績の要約(事例)を10例提出すること。

など

など

試験内容

テストセンターにおけるCBT試験(選択方式)で、各抗がん薬の添付文書情報やインタビューフォーム、適正使用ガイドなどをもとに75問が出題。事例審査および筆記試験に合格後、面接試験も実施される。

外来がん治療専門薬剤師
(日本臨床腫瘍薬学会)

高度専門医療機関連携薬局制度の要件を備えた薬剤師の育成をめざし、外来がん治療認定薬剤師の条件に加え、病院と薬局が緊密に連携したがん薬物療法にも対応できる薬剤師を認定するため、2021年に新設された資格制度です。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験を5年以上有すること

Point02

外来がん治療認定薬剤師認定試験を受験し、合格していること

Point03

日本臨床腫瘍薬学会が行うがん診療病院連携研修を修了しているか、修了とみなす認証を受けていること

など

など

基礎を固めてから
ステップアップを考えよう

ここまで紹介してきた内容からも分かるように、薬剤師の上位資格は「認定→専門」とステップアップできるように構築されているものが少なくありません。いつまでに、どの資格を取得したいのか計画を立て、段階的にキャリアをステップアップさせていくことが望ましいといえるでしょう。

しかし、「早く専門性を高めなければ」と焦りすぎるのも問題です。臨床では「薬剤のプロ」として幅広い知識が求められるケースが多いですし、どんな分野を極めるにしても基礎力は必須です。そこで、まずは研修認定薬剤師(日本薬剤師研修センター)など、薬剤師としての基盤を固めるような資格からスタートすることも一案です。皆さんの薬剤師人生をより充実させるためにも、資格制度を上手に活用したいですね。

02. 感染症領域編

今この瞬間にも医薬品は進化し続けているため、臨床に出てからも継続的に学んで知識をアップデートする必要があります。その一環として、専門・認定薬剤師資格に挑戦し、さらなるキャリアアップをめざす道もあるでしょう。具体的にどんな資格があるのか、ここでは感染症領域に関連するものをいくつかピックアップしてご紹介します。
※申請資格の概略や試験内容は、2021年末時点の情報です。新型コロナウイルス感染症の影響で試験方法などが変更されているケースもあるため、最新情報や詳細は各学会の公式サイトでご確認ください。

感染症領域編
医療関連感染の「防波堤」
としての薬剤師

常に感染のリスクを抱える医療機関において、感染予防はすべてのスタッフの共通課題です。新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年以降は、医療機関内だけでなく在宅医療の現場でも感染予防の意識がさらに強まりました。未知のウイルスとの闘いを経験した今、科学的根拠に基づいた感染症治療・予防の知見を有する薬剤師のさらなる活躍が望まれます。

感染制御認定薬剤師
(日本病院薬剤師会)

日常的に院内での感染症発生状況を監視して分析や評価を行うと同時に、消毒薬や抗菌薬の適正使用を推進していきます。感染症の発生時には早期発見し、早急に対策を実施します。ガイドラインやマニュアルの作成などでも中心的な役割を果たすことが期待されています。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験が3年以上あること

Point02

日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であればこれを満たす

Point03

病院または診療所に勤務し、施設内において、感染制御活動に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること

Point04

施設内において、感染制御に貢献した業務内容および薬剤師としての薬学的介入により実施した対策の内容を20例以上報告できること

Point05

日本病院薬剤師会が認定する感染制御領域の講習会等を所定の単位(20時間、10単位)以上履修していること

など

など

試験内容

留意すべき感染症の基礎知識、抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬の基礎知識、抗菌薬の適正使用、エビデンスに基づいた感染対策といった項目について、薬剤師のための感染制御マニュアルや添付文書などをもとに出題される。

感染制御専門薬剤師
(日本病院薬剤師会)

感染制御認定薬剤師の役割に加えて、感染制御に関する教育・指導を他の医療従事者に対して行うこと、臨床で収集したデータを治療や感染予防に活用すること、研究活動などで力を発揮することが期待されています。

申請資格の概略
Point01

感染制御認定薬剤師の資格を有しており、かつ、ICD制度協議会に加盟している学会・研究会のいずれかの会員であること

Point02

所定の学会等で感染制御領域に関する学会発表を2回以上行っており、複数査読制の学術誌等で感染制御領域に関する学術論文が1編以上掲載されていること

など

など

試験内容

薬剤師のための感染制御マニュアル、抗菌薬使用ガイドライン、消毒と滅菌のガイドライン、抗菌薬適正使用生涯教育テキスト、各種CDCガイドラインなどをもとに幅広く出題される。

感染対策の組織を牽引する
プロフェッショナル

感染対策を効果的なものにするためには、チームの力が不可欠です。現在では多くの病院で感染対策委員会や感染対策チーム(ICT)が設置され、領域横断的な組織として活動しています。感染制御や抗菌薬に関する高度な専門性を有していることはもちろん、院内のさまざまな職種や診療科へ介入し、協力を取り付けるコミュニケーション能力を兼ね備える薬剤師が活躍しています。

抗菌化学療法認定薬剤師
(日本化学療法学会)

抗菌薬の適正使用に関して医師を支援するのみならず、感染症の種類や病態に応じてどの抗菌薬を選択し、どう使用すべきかを考えて実践します。抗菌薬のスペシャリストとして、ICTやAST(抗菌薬適正使用支援チーム)でのより積極的な活躍が期待されています。

申請資格の概略
Point01

薬剤師として抗菌化学療法に5年以上関わっていること

Point02

医療機関において、薬剤管理指導・TDM(治療薬物モニタリング)・DI(医薬品情報)等の業務を通じて感染症患者の治療(処方設計支援を含む)に自ら参加した15例以上の症例を報告できること

Point03

日本化学療法学会の抗菌薬適正使用生涯教育セミナー・認定委員会の指定する研修プログラム等において、所定の単位数を取得していること

など

など

試験内容

出題範囲は特に定められておらず、抗菌化学療法に関する領域から広く出題される(抗菌化学療法認定薬剤師テキスト、抗菌薬TDMガイドライン、抗菌化学療法認定薬剤師講習会の内容などから50題)。

インフェクション
コントロールドクター
(ICD制度協議会)

感染対策委員会などで活躍する感染制御のエキスパートです。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師など各職種の機能を理解し、専門性に基づいてそれらを統合し、効果的な対策の立案・実施につなげることが求められます。「ドクター」と名付けられていますが、条件を満たせば薬剤師でも取得可能です。

申請資格の概略
Point01

ICD制度協議会に加盟しているいずれかの学会の会員であること

Point02

医師歴が5年以上の医師または博士号を取得後5年以上のPhDで、病院感染対策に係わる活動実績(感染対策委員歴、講習会出席、論文発表)があること

など

など

HIV/AIDSに対する
「一生涯の服薬」を支援

1990年代の終わりに登場した多剤併用療法、その後の新薬開発により、HIV感染症の治療は大きく進歩しました。しかし、現代の医療ではHIVを完全排除することはできず、患者さんは一生涯の間、治療薬を飲み続けなくてはなりません。それを支えるためには、HIV/AIDSへの造詣が深い専門家のサポートが必要です。

HIV感染症
薬物療法認定薬剤師
(日本病院薬剤師会)

患者さんの希望やライフスタイルを考慮しながら、服薬援助を行うのが主な役割の一つ。服薬アドヒアランス不良の要因になりやすい副作用や、疾患・服薬意義の理解不足といった点に注意しつつ、多職種と連携して課題を解決します。また、薬物相互作用を確認した上で用量調節や代替薬の提案を行ったり、患者さんの状態を医師に共有して処方支援したりすることも重要です。

申請資格の概略
Point01

薬剤師としての実務経験が3年以上あること

Point02

日本病院薬剤師会の会員であること。ただし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす

Point03

日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であればこれを満たす

Point04

病院または診療所もしくは保険薬局に勤務し、HIV感染症患者に対する指導に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること

Point05

所定の研修施設でHIV感染症薬物療法認定薬剤師養成研修を履修している、または、研修施設において3年以上、HIV感染症患者に対する指導に従事していること

Point06

HIV感染症患者に対する指導実績が10症例以上あること

など

など

試験内容

HIV感染症の基礎や臨床、薬物療法、服薬指導とコミュニケーションスキル、HIV感染症医療チームにおける薬剤師の役割、HIV感染症を取り巻く社会制度といった項目が出題範囲とされる。

HIV感染症専門薬剤師
(日本病院薬剤師会)

HIV感染症薬物療法認定薬剤師の役割に加えて、他の薬剤師などへの指導的な役割を担ったり、研究活動を行ったりすることが期待されます。国内治験が行われていない抗HIV薬を使用するには海外の最新情報を入手する必要があるため、情報収集力や英語力も問われます。

申請資格の概略
Point01

HIV感染症薬物療法認定薬剤師であり、かつ、日本エイズ学会の会員であること

Point02

所定の学会等でHIV感染症領域に関する学会発表を2回以上行っており、複数査読制の学術誌等でHIV感染症領域に関する学術論文が1編以上掲載されていること

など

など

試験内容

基本的な出題項目はHIV感染症薬物療法認定薬剤師と同様ながら、海外におけるガイドラインや抗HIV薬などの開発状況、HIV感染症患者の動向といった点も含まれる。また、海外の最新情報を的確に把握する能力を見るため、英文解釈も含まれる。

資格取得のプロセスが
学びを後押ししてくれる

入職して一通りの業務をこなせるようになったとき、そこで成長が止まってしまう人は少なくありません。とはいえ、ただでさえ多忙な医療機関で、何の指針もなしに学習のモチベーションを保つのは難しいもの。そこで生かしたいのが、ここまで紹介してきたような資格制度です。「30歳代のうちに〇〇の資格を取りたい!」と具体的な目標を掲げることで、「いつまでにどんな研修に参加すればいいか」「どんな症例を経験すればいいか」といった道筋が見えてくるはず。数年~十数年先のリアルな未来を見据えながら、自分らしい薬剤師像をめざして歩み続けるためにも、資格取得への挑戦をお勧めします。

  • 01.
    がん領域編

  • 02.
    感染症領域編