塗料を変えるだけで・・・

自動車産業でも活躍!
広がる塗料の可能性

新分野へ介在し、
環境保全にも貢献

近年急速に普及が進む電気自動車や蓄電デバイスですが、性能面では改善の余地が多くあります。リチウムイオン電池では、電気を輸送する導電カーボンの分布状態が電池性能に直結するため、これをいかに分散できるかが課題でした。当社では、液状物スラリーを長年扱ってきた技術と知見を生かし、電極スラリー(特に導電カーボンスラリー)ビジネスへの参入を決意しました。塗料は、さまざまな技術の集積によって形成されています。なかでも顔料分散の知見は、導電カーボンスラリーの安定性や、乾燥膜中の導電パス形成に対し、大いに役立ちました。これを活かしながら試行錯誤を重ね、電池性能を阻害しない分散剤、および適切な分散調整法を見出しました。これにより電池性能を阻害しない安定した導電性を持つスラリーを実現しました。
※スラリーとは…液体中に固体粒子が分散・懸濁した状態。泥状の流動体。

環境問題の改善が進むなか、自動車産業では欧州、中国、インドがガソリン車規制を行い、自動車メーカーが電気自動車の生産目標を宣言するなど、大きな変革が起きています。当社では、研究の余地が多くある電極スラリーの中でも、その構成物である導電カーボンスラリーに注力。電池性能には出力、耐久性、安全性などが求められ、優先順位により使用される導電カーボンが異なりますが、ニーズに応じた処方の体系化を進めながら、技術を蓄積しています。今後もリチウムイオン電池をはじめとした新たな領域に挑戦しながら、多くのユーザ、サプライヤー、異業種、アカデミアと融合し、塗料が持つ可能性を広げ続けます。

COLUMN

異分野に挑戦。コア技術が電池性能の向上に貢献

日本人開発者がノーベル化学賞を受賞したことで注目されているリチウムイオン電池。これまで電池性能に直結する導電粒子の分散が課題でした。私は専門的に研究してきた顔料の分散技術を生かした新しい挑戦を始めました。これまで経験したこともない電池性能を追い求めるにあたり、まずは評価法や解釈を掴むことから始めました。顧客やアカデミアの指導を得ながら、我々なりのノウハウを丁寧に積み重ねていきました。我々の導電カーボンスラリーは電極製造工程のほんの一部品であり、だからこそ次工程において使いやすいものに仕上げる必要があります。そこで顧客とやりとりを重ね、ハンドリング性に長けた付加価値の高いスラリーに作り込みました。研究を始めた当時は将来性が不透明な部分もあったものの、自動車業界が電気自動車の普及に舵を切ると宣言したことをきっかけに需要量も予測でき、社内の取り組みも活発化しました。社会や時代背景とマッチし「分散」という当社のコア技術が優位性を持ったことで、実用化のフェーズが見えてきました。効果が目に見え、社会的意義もあるこの取り組みは、研究に従事する技術員のモチベーション向上にもつながっています。

檜原 篤尚

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