
電池分野の世界的なリーディングカンパニーで
学生時代の経験を最大限に発揮する
先進理工学研究科・応用化学専攻 2019年卒
キャリア観形成に資する情報の提供を目的としているものであり、
早稲田大学キャリアセンターが掲載企業への就職を推奨しているわけではありません。
- #理系
- #研究が活かせる仕事
パナソニックグループのパナソニック エナジー株式会社で働く清水諒さんは、リチウムイオン電池の性能シミュレーション技術の開発に取り組んでいます。この技術が完成すれば、電池を目指しているスペックにするための素材や製造方法などをすぐに割り出すことができるようになるそうです。早稲田大学での学びはこうした先進的な研究にどのように生かされているのでしょうか。

2019年早稲田大学先進理工学研究科・応用化学専攻修了。同年パナソニック株式会社入社。電池の性能シミュレーション技術の理論モデル開発に携わったのち、設計開発部門に異動。2021年から再び性能シミュレーション技術の担当となり、日々、研鑽を続けている。パナソニック株式会社が2022年4月より事業会社制となることに伴い、パナソニック エナジー株式会社へ。
世界をリードする
電池技術に魅せられて
私は早稲田大学大学院先進理工学研究科・応用化学専攻を修了しましたが、学部時代から3年にわたって門間研究室で電池の性能評価に関する研究に没頭していました。SDGsが重視される昨今、電気自動車(EV)が欧米を中心に急速に普及しつつあり、電池の重要性はますます高まっています。EVを例にとっても、より性能の高い電池を開発することができれば、その利便性は格段に向上するはずです。ただ、その一方で電池にはいまだに未知の領域が多いため、私が所属していた門間研究室では電池の解析・評価に関する研究に取り組んでいました。
私は学生時代から、研究そのもののおもしろさに加え、電池が持つ社会的な価値に魅力を感じていました。そして、次第に仕事でも電池の研究に携わりたいと思うようになっていきました。また、門間研究室には電池の世界的なリーディングカンパニーであるパナソニック エナジー株式会社に就職した先輩が数多くいらっしゃったので、先輩たちから会社の雰囲気や研究のレベルの高さ、研究設備について、そして給与や福利厚生に至るまでリアルな情報をいろいろと聞かせていただいた上で入社を決意しました。パナソニックグループに蓄積された膨大なノウハウを活用しながら研究に取り組めるだけでなく、先輩たちが口を揃えて「仕事もプライベートも両方充実させられる環境」と話していたことも後押しとなりました。

車載用リチウムイオン電池の
性能シミュレーション技術の開発に挑戦
現在、私は車載用リチウムイオン電池の性能シミュレーション技術の開発を担当しています。電池は数多くの材料で構成されていますが、プラス極とマイナス極をどの材料にするか、電解液をどうするか、さらには電極の厚みをどの程度にするかなど、組み合わせは無数に存在します。そして、その組み合わせによって電池の性能は大きく変化するので、より性能の高い電池を開発するには電池の試作・性能評価を繰り返すほかなく、時間がいくらあっても足りません。だからこそ、私が開発している性能シミュレーション技術が必要とされているのです。
大学院での研究の一部がこの仕事に通じていることもあり、私は入社1年目から性能シミュレーション技術の根幹を担う理論モデルづくりに携わらせていただきました。研究自体は順調だったのですが、入社2年目、電池の設計開発の部署に異動した際にひとつの壁にぶつかりました。自分が開発した性能シミュレーション技術を設計開発の現場で使おうとしたところ、十分に成果を発揮できない部分があったのです。こうして私は電池の単純な性能だけでなく、安全性や生産性なども考慮した上で理論モデルを構築する必要があることを痛感し、入社3年目からはこれまで以上にさまざまな角度から理論モデルを構築して、柔軟性に富んだ性能シミュレーション技術の開発に挑んでいます。

社内外のネットワークを活用して
技術的な課題を次々と解消
私が所属している研究チームのメンバーは少人数ですが、門間研究室の同期の半数がパナソニックに就職しましたし、研究室の先輩方も数多く在職しているので、入社してすぐに馴染むことができました。また、会社にある技術の蓄積が研究者としての大きなモチベーションになっています。当社には電池の世界的なリーディングカンパニーとして長年にわたって研究開発に取り組んできた実績があり、社内に優れた研究者と膨大なノウハウを抱えています。そのため、研究の途中で行き詰まったり、疑問点が生じたりしても、社内のネットワークを活用することで多くの問題を解消することができるのです。また、社外の研究などに接する機会も充実しており、電池関連の学会には毎年出席させてもらっていますし、関連する論文なども入手して目を通すようにしています。
研究職というとラボに閉じこもって仕事漬けになっているイメージがあるかもしれませんが、当社はテレワークを積極的に取り入れていますし、休日もきちんと取ることができるなど、入社前に聞いていた通り仕事もプライベートも両方充実しています。自分に合った働き方ができるのは心身ともにリフレッシュにつながるので、研究職としても非常にありがたいです。

今の仕事でも役立つ
学生時代に培った研究姿勢
学生時代の経験で最も今の仕事に生かされているのは、目的意識を持ちながら研究に臨む姿勢かもしれません。私が所属していた門間研究室では年に4回、研究報告会があり、テーマに対して限られた期間の中で研究し、発表することになっていました。しかし、やみくもに研究を進めていると、次第に自分が何をしているのかが分からなくなってしまい、結果的に発表もうまくいかず、研究報告会の後に行われる「お疲れ会」を心ゆくまで楽しめなくなってしまいます。そうならないようにするためにも、目的意識と自分が今やっていることを常に明確にしておくことが大切です。この姿勢は無数の選択肢に囲まれている現在の仕事の中で大いに役立っており、そのおかげで苦労しながらも着実に研究を前進させられているように思います。
こうした姿勢とパナソニックグループの技術的な蓄積を最大限に生かし、性能シミュレーション技術の精度を高めることができれば、いずれは「最も完成度の高い電池はこういう組み合わせです」と断言することができるようになるでしょうし、場合によってはそれをそのまま製品化することだってできるかもしれません。それと同時に、顧客ニーズに合わせた電池をスピーディーに開発することも可能になり、持続可能な社会づくりに大きく貢献できるようになるはずです。そんな未来を思い描きながら、これからも研究に励み続けたいと思います。

サークルには所属せず、学生生活の大半は研究室で過ごしていましたが、そこでの出会いや経験は何物にも代えがたいものになっています。研究室に寝泊まりしながら研究に没頭したり、研究室の仲間たちと一緒に大学の近くにあるスーパーマーケットで弁当を買い、研究室でさまざまな議論を交わしながらランチをとったりしていたのも良い思い出です。また、当社に関しては私と同じ研究室の出身者が数多く在職しているという特徴もあります。そういった人たちとはどことなく気軽に接することができますし、学生時代の話に花を咲かせたりすることもできるので楽しいですね。