三菱UFJモルガン・スタンレー証券
取締役社長 兼 CEO
小林 真

神奈川県出身。早稲田大学商学部を卒業後、現三菱UFJ銀行に入行。2022年、三菱UFJモルガン・スタンレー証券 取締役社長兼CEOに就任。

改めて過去を振り返ると、随分と流されてきてしまったなと思う。一つのことを徹底的に突き詰めていれば、違う人生もあったかもしれない。でも、後悔はない。学生時代は様々なことに没頭してきた。それぞれの経験の積み重ねが、今の自分を形成したのだと思う。
最初に熱中したのはバンド。高校の先輩の演奏に雷に打たれたように感動し、すぐさま同級生とバンドを組んだ。パートはギター兼ボーカル。練習するほどに上達していくのが面白く、どんどんのめり込んでいった。一時はプロも夢見ていた。大学に落ちたらミュージシャンになろうと本気で思ったが、幸か不幸か、受験の結果は合格。迷いもあったが、海外でのビジネスにも興味があったため、最終的には進学を決意した。
大学時代もバンド活動を続けたが、先輩たちの圧倒的な実力に打ちのめされ、音楽の道も楽ではないと思い知った。代わりに熱中したのが一年の時から所属していたテニスサークルの運営だった。先輩の卒業を機にサークルのトップである幹事長に就いた。周りから祭り上げられる形だったが、挑戦してみると未熟な組織の体制づくりに大きなやりがいを感じた。80人の組織をまとめることは楽ではなかったが、卒業後40年経った今もサークルが存続し、当時の理念が受け継がれていると聞くと、あの頃の努力が報われた思いになる。「和をもって貴しとなす」を軸とした組織づくりの魅力を知った私は、その後に所属したゼミでも幹事役を務めることになった。
バンドに、テニスに、ゼミに……人から見れば一貫性のない学生時代だと思われるかもしれない。しかし何に取り組むにしても、「志」を持つことだけは忘れなかった。そして、どの活動も今の私につながる必要なステップだったのだと確信している。
やりたいことが変わるのは悪いことではない。どれだけ頑張っても、やむを得ない事情で諦めざるを得ないこともある。大事なのは、何をするにも「志」を持つこと。そうして取り組めば、次にやるべきことが自ずと見えてくる。一つのことに固執することなく、柔軟にシフトしていけばいい。その繰り返しが人生なのだと思う。将来のことなんて誰にも分からない。私だって、まさか自分が企業の経営者になるとは想像もしなかった。今の私には「社員を幸せにする会社にしたい」という新たな志がある。これからも志を忘れず、心のままに挑戦を続けたい。
学生への応援メッセージ
学生のみなさんには、将来やりたいことが見つからず、焦りを感じている人もいるかもしれません。しかし、思っていた通りの道を歩める人なんてほとんどいません。私もそうです。その時々の状況に合わせて柔軟に対応していくしかない。だからこそ、将来の目標について、あまり深く考え過ぎなくても大丈夫。考えすぎて、一歩も足を踏み出せない方が損です。今はなんでもいいから、興味のあることに没頭してください。志があれば、きっと道は拓けるでしょう。