食べることが好き

私は、食べることが好きです。
こんなふうに言うと、単なるよく食べる人に見えるかもしれません。実際そういう一面もありますが、私にとって食は、ただの趣味や欲求を超えた、もっと大切な意味を持っています。

「食が好き」ということ、それは味や香りだけでなく、人と人を結びつける時間や、自分を安心させてくれる場所のことも含んでいます。実はこの実感にたどり着くまでには、少し遠回りをしました。

中学生のとき、私は不登校を経験しました。学校という場所に自分を置かなくなり、家にこもる時間が増えるにつれ、食事もどんどん簡単にすませるようになりました。食べることに楽しみを感じられず、ただエネルギーを補給するだけ。あの頃の食卓は、心が置き去りになった空間でした。

そんな私が「食」を取り戻したのは、一人旅で訪れたシェアハウスでの滞在でした。「子どもだから見えている世界が狭い。」そんな言葉を言われ、「だったら本当に自分の知らない土地で広い世界を見てやる。」と、半ば大人に対する反抗心で一人旅を始めました。しかし蓋を開けてみると、本当に自分の価値観が変わる出来事に出会いました。知り合った地域の方々が、食事を適当にして過ごそうとしていた私に「せっかくここまで来たのだから一緒に食べよう。この地域のご飯を通して好きになってくれたら嬉しい。」と誘ってくれたのです。見知らぬ土地で、見知らぬ人たちと大きなテーブルを囲んで食べた地元料理。初めましての方とも、食を通して会話をすると自然と表情が和らぎます。
誰かが「これ美味しいよ」と差し出してくれた小皿を受け取る瞬間、私は胸の奥がふっと温かくなるのを感じました。ごはんを分け合いながら「おいしいね」と笑い合う。それは、孤独だった私にとって忘れかけていた感覚でした。食べることは、人とつながること。食卓は、ただ栄養をとる場所ではなく、心が回復していく場所だったのです。

振り返れば、私の不登校の時期はコロナ禍と重なり、学校でも「黙食」が当たり前になっていました。友だちと笑いながら食べることが制限され、食卓から“声”が消えたあの時間。あの経験が、私の「食」への思いをさらに強くしました。食事は栄養学的に健康を支えるだけでなく、心の健康を支えるものでもある。私はそれを身をもって知ったのです。

だからこそ今の私は、「何を食べるか」以上に「どんな空間で食べるか」を大切にしています。好きなものを、好きな人と、心地よい空気の中で味わう。それこそが、私にとっての“正解の食事”。まるでゲームのセーブポイントのように、毎日の暮らしの中で立ち戻れる安心の場所になってくれます。

食べることを通して気づいたのは、「自分が元気で優しくいられることは、誰かとつながるための土台になる」ということです。昨日より少し元気な今日をつくるために、私は食を選び、食とともに生きています。

食べるときに大切にしていることがあります。
それは「誰と」「どこで」といった条件よりも、自分が自分を大切にできているかという感覚です。
たとえば、忙しい一日の終わり。コンビニで買ったお惣菜を温めて食卓に並べるだけでも、ほんの少し心を整える時間になります。お皿に盛りつけ直して「いただきます」と手を合わせる。それだけで、同じお弁当が不思議とやさしい食事に変わるのです。
逆に、思い悩むことがあるときは、あえて時間をかけてコトコト煮込む料理を作ります。お鍋の中で煮えていく香りに包まれていると、不安や迷いまで一緒に煮込んでしまえるような気持ちになる。そして食べ終わったころには、少しだけ軽くなった自分に出会えます。
また、友人と食卓を囲むときは「特別な料理を用意しなきゃ」と思う必要はありません。パスタをゆでたり、鍋に好きな具材を入れたり。むしろ“みんなで作る”ことそのものが会話を生み、食べる前から楽しい時間になります。何を食べたかより、「一緒に食べた」という記憶が心に残るのだと思います。

そうして気づいたのは、「食事は一日の区切りになる」ということ。朝なら一日の始まりを応援してくれるエネルギー、夜なら今日をねぎらってくれるごほうび。食べる前にほんの一呼吸置いて「私はいま、これを食べるんだ」と向き合うだけで、日常が少しあたたかくなります。
食事は豪華でなくても、決まったスタイルでなくてもいい。自分の心に寄り添う食べ方こそが、その日のセーブポイントになるのだと思います。

心の余裕がなくなると、食の存在は頭の隅に追いやられがちです。けれど、そんな時こそ誰かと食卓を囲むと、不思議と気持ちがほぐれていくものです。人と会うのがしんどい日もあるでしょう。そんな時は、Netflixで『舞妓さんちのまかないさん』や『ゆるキャン△』のように、美味しそうにご飯を食べる姿を描いた作品を是非視聴してみてください。 自然と食欲がわいてきて、心まであたたかくなります。楽しくご飯を食べることは、栄養以上に大きな力をくれるのです。
体型管理や健康が気になる際は、なかやまきんに君のYouTube動画で運動することや、カロリミットファンケルのCMソング「いっぱい食べる君が好き」を脳内再生するようにしています。孤独な気持ちが半減しますし、何より楽しみながら食事が続けられます。
食べることは生きること。楽しみながら食べれば、どんなご飯もごちそうになります。

食卓に集まる人の数だけ、思い出や物語がある。これから先の人生で、どんな味に出会い、どんな人とその味を分かち合えるのか。そう考えると、未来が少し楽しみになります。
私にとって「食べることが好き」とは、つまり「生きることを楽しむ」という宣言に近いのかもしれません。

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