プリンセスになりたい

私は、プリンセスになりたいと思っています。

自分で書いていても少し恥ずかしい、この夢。
編集部内であれこれ話していると、私の考えるプリンセスは、他の人が想像するものとは違うことがわかりました。

プリンセス、についてイメージを膨らませてみてください。考えたこともない方が多いと思いますが、少しだけ。

キラキラ輝くドレスを身にまとった、一国の王女様でしょうか。
それとも、やさしさに包まれ育った、ふわふわとした女の子でしょうか。
ディズニープリンセスを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

私が使う「プリンセス」は、これらのプリンセスとは全く意味が異なります。

私にとって、プリンセスとは「理想の人間像・生き方」を示す、「記号」です。

「自らの選択を自らで正解にしていく、多幸感溢れる女性」を、私はプリンセスと呼んでいます。
この記事では、「プリンセス」=「自立した幸せそうな女性」として読んでいただければ嬉しいです。

プリンセスからの学びが「人生を広げてくれる」理由

さて、ここからは、そんな女性(=プリンセス)になるための準備。
このロマンあふれる、けれどあいまいな夢の実現に向けて、私は何をするべきか。
考えていると、過去の経験に大きな手掛かりがありました。

私は以前まで、他の人の意見に左右されないことが大切だと思っていました。
自分を信じて進んでいこう!と、いうなれば、自己中心的だったのかもしれません。
せっかく頂いたアドバイスをよく噛み締めなかったり、自分と距離のある考え方を深く知ろうとしなかったり。

けれど今では、自分以外の誰かの視点が可能性を広げ、理想が洗練されていくと理解しています。
この変化のきっかけは、高校時代、家のデザインをテーマに取り組んだ探究学習でした。
探究学習は、問いを設定し、その解決のため、仮説の検証や情報の分析などを行うカリキュラムです。

ある日の定期報告会で、私は家のデザインの評価方法について言及しました。
「居住者の主観的判断のみとします。」
すると、質問の手が挙がりました。
「なぜ外部の評価はいらないのですか?」

その質問に、私は面食らいました。
家は住む人のためのものだから第三者の意見は必要ないと、外部評価を検討すらしていなかったのです。
素直にそう伝えましたが、自分の回答に対して感じた引っかかりは消えません。

何かがおかしい、何かを忘れている。

終了後、何度も質問を反芻し、外部評価の必要性について考えていると、あることに気が付きました。

建築士の存在です。実際の家づくりの現場には、その道のプロがいたのです。
居住者は、家づくりにおける知識も経験もありません。したがって、自身の力だけでは、「こうしたい」を考えるための想像の幅がとても小さい。第三者の意見は、まだ見ぬ理想に出会うために必要だったのです。

この気づきは、当時の私の価値観を大きく変えました。
冷静に考えれば、外の世界から学ぶことが大切なのは当たり前です。
しかし、この気づきを受けた私は、まるで崖から落とされた子ライオン。
すがっていた「自分というものさし」が消え去る不安と同時に、新たな「外の世界という軸」を見つけて心が軽くなりました。

進路、働き方、趣味など、自分の世界を、理想を、可能性を広げるには外から学ぶ必要がある。

これを理解した上で、冒頭の私の夢に戻ります。プリンセスになりたい、というあの夢です。
私は、人生を豊かにするための外の世界を、私がプリンセスだと感じる方々に見出しました。
彼女たちから、自分とは異なる生き方・考えを学び、自分のものにしていきたい。
そこで、何人かの方に取材を申し込み、ありがたいことにお二方からお話を伺うことができました。

現実の世界に生きるプリンセス

<宝塚からバンクーバーへ、世界に飛び出したタカラジェンヌ>
お一人目は、元宝塚歌劇団娘役 光莉あんさん(本名:林真由さん)です。
2023年2月に、宝塚歌劇団をご卒業され、同年9月からカナダで留学生活を始められました。

「夢がないと頑張れない。人生が楽しくない。」
そう話す真由さんは、子どもの頃から、マラソン選手に、バレリーナ、看護師からお笑い芸人まで! いつも将来の夢にあふれていたそう。
「やりたい!」と思ったことに素直に行動してきた真由さんは、入団5年目に、ここまで積み重ねてきた宝塚でのキャリアに終止符を打ち、カナダへ飛び立ちました。

「昔から映画や、ハリウッドの情報誌が好きで、いつか留学したいと思っていました。」
宝塚歌劇団の舞台に立つため、心の中にしまっていた留学への想いは、コロナ禍を機に再燃。
世界がどうなってしまうかわからない中で、 「行ける時に行かないと。」そう強く思ったのだと教えてくださいました。

ずっと留学を夢見てきたとはいえ、宝塚で活躍するまでの努力は並大抵でなかったはず。
加えて、入学試験から舞台に立つまで、その難しさは世間でよく語られている話。
積み重ねてきたものに別れを告げる心情はいったいどんなものだったのでしょうか。

「不安や寂しさというよりも、心から楽しみでした。私は気持ちの消費期限が切れないうちに行動しないといけないから。」

多くの夢を実現するために勇気をもって決断できる。そしていつでも前向きに、笑顔と優しさを忘れない。
そんな真由さんは、間違いなく、「プリンセス」そのものでした。

お話を伺う中で、私が強く惹かれたのは、夢に制限を持たない姿勢。
「これまで頑張ってきた自分を認めてあげれば、次の場所でも堂々としていられる気がして。」
過去の自分を糧にして、宝塚も、留学も、留学先で出会った新たな夢にも果敢に挑戦していくのです。
しなやかで、曲がったこだわりをもたない潔さを見習いたいと思いました。

<教師一筋、変わらず貫く理想像>
続くお二人目は、私が小学1年生のときの担任の先生です。

私が小学1年生のときのクラスでは、インフルエンザなどで長い間学校を欠席すると、クラス全員からお手紙が届きました。
思い思いに絵をかき、普段言えないことまで伝えてみる。
あまり話さないクラスメイトからの「早く元気になってね。」
親友からの「あなたがいないと寂しい。」
熱が出ると決まって脳裏に浮かぶ、温かな思い出です。

先生は、このような、ふとした瞬間に思い出す記憶をたくさん作ってくださったプリンセスです。

先生に教師を目指した理由を伺うと、「小さい頃からずっと、教師の道しかないと思ってきた。」と教えてくださいました。
成長しても他の選択肢に迷うことはなく、大学時代のアルバイトも家庭教師のような教員に関わることばかりだったのだとか。

そんな先生の根底にあるのは、二つ。

一つ目は、「楽しみたい」という気持ち。

先生が教師を目指したきっかけに、教師だったお母さんの影響があったそうです。
「毎日忙しく過ごす母。もちろん寂しい思いをしたことはありますが、楽しいから頑張れるのだと解釈して。忙しくも“楽しく”教師という仕事に取り組む母の姿に憧れを覚えました。」
自分が楽しんでできるかどうかが、仕事をする上で大切にしているひとつの基準とのこと。
「だからこれまで生徒に関することで、しんどい、嫌だなと思ったことは一度もないかな。」
当たり前のようにそう話す先生の姿は、とても頼もしかったです。

二つ目は、学生時代、先生自身が教師に寄り添ってもらえなかった経験。

先生は、生徒とは対等に、何でも話せる関係を意識しているそう。
学生の頃の悲しかった気持ちを、理想の教師像に昇華したのですね。
今は、クラス全員と毎日交換日記をしているのだとか。クラス全員と、毎日…!いかに大変かは容易く想像できます。

「生徒は一人ひとり違う人間。長く教員をやっていても、日々新しい発見にあふれていて、試行錯誤の繰り返しです。」
きっと先生がこの道を突き進んでいられるのは、一人ひとりの生徒に向き合うことに一生懸命でいられるから。そしてそれを楽しめるよう、自分の心に素直でいるからなのだと思いました。

続けることの難しさと尊さに背筋が伸びるお話でした。

プリンセスをいつもそばに置いておく

今回、正反対のプリンセスからお話を伺うことができました。

どんな夢にも「まずやってみる」という姿勢で、しなやかな決断、そして努力を重ねる人。
ひとつの夢に真摯に向き合いながら、楽しさを見失うことなくその道を極めていく人。

お二人のお話から私が感じたことは、「どちらも取り入れたい!」でした。

私は、プリンセスになりたいと思いながらも、まだその夢半ば。
そしてその概念的な夢は、どんな形にもなりうるものだと思っています。

ならば、真逆の理想も、共存するはずのない目標も、私はすべてを抱えてこの夢を叶えたい。
さらに、お二人の他にも存在するプリンセスから、もっともっと自分の可能性を吸収したいです。

そのために、生活のそばにはいつも「プリンセス」が必要です。
留学のリアル、教師のリアル、すべてきちんと観察する。
それはプリンセスに近づく、最高の手段のように思えるのです。

プリンセスに囲まれた世界で生き、成長していくことを想像すると、これからの未来が輝いて見えます。
このような気持ちになれる、素敵なお話を聞かせてくださったお二人に、心から感謝しています。

どんな選択も正解にする

多くの夢とともに生きる真由さん。一つの道を極める先生。
皆さんはどちらの人生がいいと思いますか?

どちらを選んでもいい。
私のように総取りしてもいい。
それを正解にしていくのは自分自身だからです。

私はこれからもたくさんのプリンセスたちから学び、新たなドアを開き続けていきます。

なりたい私になるために、自分に素直に、夢に貪欲であれ!

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