センスが良い人は、魔法をかけるのが上手な人

突然ですが、最近の悩みを共有させてください。
私は、お買い物で自分を信じられません。

それは、洋服やバッグといったファッションアイテムを買うときです。必ず、雑誌やマネキンのチョイスを真似してしまいます。
自分で素敵なアイテムを発掘できない私は、YouTubeで購入品紹介をしているような人と比べると、センスがないように思えるのです。

この悩みを、なんとも贅沢なことに、ファッションの最前線で活躍するお二人のスタイリストさんに相談させていただきました。
お一人目は、『LEE』をはじめ女性誌で活躍する、高橋美帆さん(サムネイル左)。
お二人目は、『CanCam』『CLASSY.』など数多くのスタイリングを手掛ける、たなべさおりさん(サムネイル右)。

ファッションは総合芸術

「自分が惹かれたものよりも、どこかで紹介されていたものに手を伸ばしてしまいます。」と相談すると、
「好きなものを着たらいいよ。」と高橋さん。

こちらは高橋さんのお気に入りアイテム。特にスニーカーは高橋さんの代名詞ともいえるアイテムです。私も取り入れたい!

「何を着るかが、一番大切なわけではありませんから。」
雑誌のページを作るとき、その要素はあるアイテム一つではないと続けます。

どんなコーディネートを組むのか、モデルがそれをどう着て、カメラマンがどう撮るのか、編集者がどんなストーリーを与えるのか。
一つでも設定が異なれば、アイテムは全く違って見える。

例えばスニーカー特集が組まれたとき、誌面にはスニーカーの写真だけが並んでいるわけではありません。
必ず、スニーカーを履いたモデルの全身写真があります。そこでようやく、スニーカーの本領は発揮されます。
スニーカーだけの個人戦ではなく、全身コーディネートというチーム戦において、スニーカー本来の魅力が最大限引き出されるのです。

つまり、ファッションは総合芸術。

「だからモノ自体は誰かの真似でいいと思います。」とたなべさん。
なるほど。それで、たなべさんは、「センスとは何ですか」という私の質問に、
「足し算引き算のようなバランス感覚、さじ加減に近いもの」とおっしゃったのか。

どんな場所に何を着ていくのか、何を組み合わせ、トップスは出すのか入れるのか。
全体でうまく整えることで完成するのがファッションです。

私の考えるセンスとは、魔法の成功率

どうやら私は、センスというものをはき違えていたようです。
「選んでくるのが上手=センスが良い」ではありませんでした。

ではここで、私の考える「センス」を再定義してみようと思います。

まず、私がセンスを磨きたい理由を考えてみました。
センスがいい人への憧れなど色々な理由がありましたが、一番は、ファッションで自分を満足させたいからでした。

というのも、私にとって、ファッションは自分を変えてくれる魔法なのです。

心からかわいい!と思えるコーディネートが完成した日は、うれしくて気分がいい。
この格好がぴったりの場所へ、と行動範囲を広げることさえあります。
逆に、深く考えず、なんとなく選んだ服を着ていると、なんとなくの一日で終わる。
パジャマだとやる気にならないのと同じ原理だと思います。
なんだか授業も集中できないし、予定も全てを終わらせられません。

前者は、自分にうまく魔法をかけられた日で、後者はそれに失敗した日。 ならばセンスとは、うまく自分に魔法をかけられるか、その成功率だと思います。

この組み合わせかわいい!
この色も意外と似合う!
なんだかスタイル良く見える!

選んだコーディネートを着て鏡の前に立った時「え!いいじゃん!」と驚きや発見に近い感覚で笑顔になれたら、
それは自分に魔法をかけることに成功しています。その日は、きっと一つの鎧を身に付けたように強く明るく過ごせるはず。

センスが良い人は、こんな風に、ファッションで気分を上げ、自分に魔法をかけることが上手なのです。

成功率向上の鍵は、好きなものを探し続けること

そんな魔法の成功率(=センス)を向上させるにはどうすればいいのでしょうか。

再び、プロのお二人に頼らせていただきました。
そして得られた結論は、「自分の好きを探し続けること」。
好きかも、いいな、と思ったもののストックを集めていくのです。

スタイリストさんのアイデアの源泉も、このストックです。
各シーズンの展示会での勉強、プレスさんへのリサーチが欠かせません。

「アウトプットばかりだと空っぽになったように感じてしまって。」とたなべさん。
そこで、海外のスナップをたくさん見て、いいなと思うものを写真として保存しているそうです。
そして、あとからその写真を見返すと、色、形、雰囲気、ブランドなど、自分の好みがわかるようになるのだとか。
このようなインプットを続けると、お買い物をするとき、このアイテムどこかで見たぞ、と反応できるようになると教えてくださいました。

こちらはたなべさんのお気に入りアイテム。どこかしらに女性らしさを取り入れるのがこだわりだそうです。とってもかわいい!

自分の好みを把握すると同時に、それを表現する方法を学ぶ。
好きなものを探し続けようと、とにかく数にあたる姿勢が、魔法の成功率を向上させるために必要です。

好きに出会うために、行動する

SNSで簡単に素敵なものに触れられる便利な時代ですが、リアルな出会いの感動は格別です。

会社員からスタイリストになったたなべさんの今のキャリア目標は「続けること」。
スタイリストという仕事をずっと続けたいし、天職だと思っていると話してくださいました。
アイテムに出会ったときの「かわいい!」「欲しい!」という感動や喜びを享受するのが大好きだからだそうです。

人生の選択の理由にもなる、実際に“好き”に触れたときのときめき。

これは、ファッションに直結するアイテムに限定したものではありません。

洋服と空間を一体化させたエキシビション、カフェやレストランの建物を含めた雰囲気、おしゃれなインテリア、街ゆく人々。
“好き”は、出会ったものの数に比例するように洗練されていきます。

自分の好きを見つけ、さらに広げるには、目にするもの、経験するものの数を増やさなければなりません。
「昔と比べると今は、格段にコーディネート力が上がっている。」と話す高橋さん。
それは、これまで多くのものに出会い、何百、何千ものスタイリングを組んできた賜物なのです。

この世は魔法に溢れている

私にとっての魔法は、ファッションでした。
あなたにとっての魔法は何ですか。

自分に魔法をかけて、満たされた気持ちでいることは素晴らしいことです。
周りの人たちにも、そのポジティブな心がきっと伝わるはずだから。
自分を想うことは、自分と、自分のそばにいる相手の、「いい日」につながります。

まだ見ぬ自分の好きを見つけて、そんな魔法の成功率を高めてみてはいかがでしょうか。

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