作り手の思いを多くの人に届ける中川政七商店が考える「伝え方」とは

私がレポートします!

郡司 しう

「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、日本各地の職人さんと一緒に商品開発をしながら、全国の店舗やオンラインで販売する中川政七商店。2023年2月に実施したインターンシップ・仕事体験では、合同展示会「大日本市」をからめたインターンシップ・仕事体験を開催しました。学生が作り手に出会い、その思いに触れる、非常に体験的なプログラムを企画したねらいについて、社員の萩原さんと木原さんにお話をうかがいました!

今回お話を聞いた社員さん

萩原 由起子さん

中川政七商店の麻を使った商品に感動したことをきっかけに、2007年販売スタッフとして入社。数店舗で店長、スーパーバイザーを務めたのち、奈良本社勤務に。2019年から小売課・育成担当として、社員の育成・研修などを担当。奈良の工芸・かや織でつくるロングセラー商品「花ふきん」を愛用。

木原 芽生さん

大学時代に、京焼の職人さんと出会ったことをきっかけに工芸に興味を持ち、2016年、販売スタッフとして入社。2017年にブランドマネジメント室に異動し、奈良本社勤務に。生産管理を務めたのち、2020年から、同室の広報を担当。自社の靴下ブランド「2&9(ニトキュー)」を愛用し、とくに「しめつけないくつした」をヘビーユーズ中。

メインは、会場での「へぇ〜採集」と
グループ内意見交換の二つ

半年に1度、職人とバイヤーの商談機会として中川政七商店主催で行なう合同展示会、「大日本市」。2023年2月開催の「大日本市」では過去最多となる78のブランドが出展し、バイヤーをはじめ、デベロッパーやメディア関係者などが連日訪れ、大きな賑わいを見せました。今回は、同社でも初の試みとして「大日本市」の会場でインターンシップ・仕事体験を実施。プログラムは1回につき人数16人で、全2時間。3回に分けて行なわれ、計48人の方が参加しました。

各回、前半の1時間は、4人1グループで大日本市の会場をめぐり、熱気を体感しながら気になる作り手さんの思いやこだわりについて話しを聞きに行く「へぇ〜採集」というワークを、後半の1時間は別室に移り、会場で聞いた話を隣席の人とシェア。その後、ものづくりの魅力や背景を伝えるにはどうすればいいのかについて意見交換しながら、最後は一人ずつまとめた内容を、グループ内で発表し合います。
一見すると、ごくシンプルな内容に見えるこのプログラム。しかし取材でお話をうかがうと、2時間という短いインターンシップ・仕事体験の中に、「中川政七商店らしさ」がぎゅっと詰まっていることがわかってきました。

インターンシップ・仕事体験の内容

4人1グループになり、「へぇ〜採集」ワーク

会議室に移動し、隣席の人と採集した「へぇ〜」について語り合う

ものづくりの魅力を伝えるにはどうすればいいか自分の意見をまとめてグループ内で発表

参加者の声

職人さんの話を聞くだけでなく、その後、参加者の方といろいろな意見交換をして新しい気づきが得られたのがよかった!

「工芸っていいよね!」と話し合える大学の友達がいないので、今回のインターンで同世代の人たちと工芸について話せたのがすごく楽しかった!

相手に伝えるとき、最初に「共感」が生まれることを意識するのが大切だとわかりました。普段の生活でも、「伝える」ことへの意識が変わりました。

自分の心が動くから相手の心も動く
大日本市を通じて「伝える」の本質に触れる

中川政七商店が掲げるビジョンは「日本の工芸を元気にする!」。まだまだ工芸に興味を持つ人が少ない中で、その魅力をお客様に直接伝えられる店舗と販売スタッフは、“入口のような存在”だと、木原さんはいいます。

今回のインターンシップ・仕事体験の対象である2024年卒の採用も含め、新卒社員はそのほとんどが、店舗での販売スタッフからキャリアをスタートします。そこでインターンシップ・仕事体験を通じて、中川政七商店が考える「伝える」ということを知ってもらい、その面白さを体感してほしい。そんな思いから、今回のイベントを企画したそうです。

しかし、それがどうして「大日本市でのインターンシップ・仕事体験」に繋がったのでしょうか。さらに詳しく木原さんに尋ねてみました。

「『伝えることの面白さを感じる瞬間っていつだろう』と考えたときに、相手が思わず『へぇ〜!』や『なるほど!』という言葉が出てしまう時、相手の心が動いたり、“伝わった”という手応えがある瞬間に、面白さを感じるんじゃないかと考えました。ならば、まずは自分の心が動く瞬間を体感してみてほしい。

大日本市には、たくさんの職人さんとその思い、こだわり、魅力、土地や歴史的な背景が集まります。それは、まさに発見の連続。だから前半のワークで自分の心が動くことが体感できれば、より後半のワークに気持ちがこもり、結果的に相手の心を動かすことにも繋がる。大日本市でのインターンは、私たちがふだん店舗でしていることを、短くても本質的にわかってもらえるのではないかと思いました」

ただ売れればいいのではなく、
好感を生み出す「接心好感」のマインド

取材中、印象的だったのが、萩原さんも木原さんも「販売する」とほとんど同義で、「伝える」という言葉を使っていたこと。インターンシップ・仕事体験のメインテーマとして「伝える」ことの意義を学生に示すだけでなく、中川政七商店さんにとっては普段から「買ってもらう ≒ 伝わる」と捉えていることが、細かな言葉遣いから伝わってくるようでした。

「現在、全国に約60の直営店がありますが、アルバイトスタッフも含め全スタッフが『日本の工芸を元気にする!』というビジョンを胸に抱いています。作り手の代わりに、私たち一人一人がお客様に伝えていかなければという思いを持っていて、それがそのまま中川政七商店での働きがいや意義にもなっているんだと思います」と萩原さん。

今回のプログラムのグループワークの中では、販売スタッフとして経験してきた木原さん・萩原さんのお二人から学生たちに、「伝え方」のヒントもありました。

萩原さん

ワークの中では、相手への伝え方として「最初に、相手に共感が生まれるような言葉を入れてみましょう」と、私たちがふだんお客様とお話する中で意識していることをお話しました。

郡司

「最初に共感が生まれる」。相手に伝える上で、“共感”というのも大切なキーワードなんですね。

萩原さん

そうです。“共感”はすごく大事にしていて、中川政七商店では接客のことを、“接心好感”と言っているんです。売れればいいのではなくて、お客様の心に寄り添って「好きだな」「いいな」と思ってもらえるような、好感が生まれる接し方を目指しています。

木原さん

「暮らしの中に、こういう物があったらいいですよね」や「こんな場面で困ってませんか?」という共感をきっかけに、お客様の未来を一緒に想像しながら「じゃあこの商品で、生活がより豊かになりそうですね」という提案をしていくイメージなんです。

郡司

今、気づいたんですけど、もしかして後半のグループワークの最後が、全体に向けた発表ではなくグループ内4人の中での発表というのも、「共感」を意識した設計ですか……?

萩原さん

じつはそうなんです。今回のインターンでは、プレゼンのうまさを覚えて帰ってもらいたいわけではなくて、「隣の人と分かり合えた」という感覚をもってもらうことのほうが重要なので。

郡司

中川政七商店さんが考える「伝える」と「共感」の大切さ。今回のインターンは、それを中心にプログラムが考えられているんだと、わかりました。

萩原さん

あまり演出が強くなってしまうとインターン用のイベントになってしまいます。ちゃんと私たちの日常の仕事を知ってもらうために企画したので、そう言っていただけてよかったです!

北は北海道から、南は九州まで
各地から東京開催のインターンシップ・仕事体験に参加

インターンシップ・仕事体験を「大日本市」とからめた形で実施するのは、同社にとっても初めてのこと。企画側も挑戦的な意味が大きかったと、木原さんは話します。

「工芸ってニッチな世界で、中川政七商店のお客様は30代以上が中心になっています。そういう意味で、20代前半の学生の方に興味を持っていただけるかどうかは、今回一番ドキドキしたポイントでした。でも、ふたを開けてみたら、東京開催にもかかわらず、北海道から九州まで全国の方々に参加していただき、本当にほっと安心しました」。

現在(2023年6月)のところ、同じく「大日本市」を絡めたインターンシップ・仕事体験の開催予定はありませんが、今回の取り組みをさらにブラッシュアップさせて実施する可能性もあるそうです。

事業だけでなく、採用やインターンシップ・仕事体験も
めざす未来(=ビジョン)に一直線

取材中、一つ気になって、「商談機会である大日本市で、インターンシップ・仕事体験を実施することについて、作り手の方々から反対意見は出ませんでしたか?」と尋ねてみたところ、木原さんがこんなお話をしてくれました。

「出展してくださった作り手さんも、私たちが掲げる『日本の工芸を元気にする!』というビジョンに共感してくださっています。もちろん商談が第一優先ではありますが、『学生さんとコミュニケーションを取ることも、今後の工芸を元気にすることにつながるので一緒に頑張りましょう』と事前にお伝えしたこともあり、できる範囲で積極的にご協力いただけました」

学生のみなさんだけでなく、作り手の方々も前向きに取り組めるように設計されているのも、「伝える」や「共感」に重きをおいたプログラムも、すべては「日本の工芸を元気にする!」というビジョンが中心にあればこそ。今回の企画に取り組む萩原さん、木原さんの姿勢から、中川政七商店で働く社員の方一人一人の胸の中に、そのビジョンが刻み込まれているということがバシバシと伝わってきました。萩原さん、木原さん、貴重なお話をありがとうございました!

S H A R E

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