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Q テーマ解説
インタビュー

あなたの“少し先の”日常の課題に、新しい当たり前となるようなセコムの遊び心ある新サービスとは。

セコム株式会社

沙魚川(はぜかわ)久史さん オープンイノベーション推進担当リーダー

セキュリティサービスの最大手として、さまざまな場面で私たちの「安全・安心」を実現するセコム。一方で、実は多くのユニークなサービス開発を行っている会社でもあります。今回は、セコムの最先端の取り組みを先導するオープンイノベーション推進担当の沙魚川さんに、出題テーマの意図や、それに込めた想いをお話しいただきました。

さまざまな視点を、積極的に取り入れてきたセコム。

───セコムといえば、学生にとってはセキュリティのイメージが強いと思います。改めてセコムという会社について教えていただけますか。

沙魚川さん セコムは「あらゆる不安のない社会の実現」のために、ホームセキュリティやオフィスのセキュリティをはじめとするたくさんのサービスを展開する企業です。事業領域は、セキュリティ、防災、メディカル、保険、地理空間情報サービスなどと幅広く、じつは日常生活のあらゆる面で皆さんの役に立っているんですよ。どの事業においても強みとなるのが、セコムの持つデータセンターです。その巨大なデータセンターは日本最大規模なんですよ。

私たちは、人が宿直して警備するのが当たり前だった時代にセンサーを使ったセキュリティという新しいサービスを作ったり、AEDがどこにでもあることが当たり前の世界を作ったりしてきました。「世の中なんか変えられないよ」と思っている方は少なくないと思いますが、実はそんなことはありません。強い信念を持って取り組めば、意外と社会は変わっていくんです。



───さまざまな事業を展開して社会に「安全・安心」を提供しているんですね。そんな中で、沙魚川さんはどのような仕事に携わっているのですか?

沙魚川さん 現在は企画部門の仕事をしながら、オープンイノベーションチームを率いるという2つの仕事をしています。この、オープンイノベーションチームは、既存のサービスの延長ではない、まったく新しい価値を探索して新サービスを作る部隊です。そのために、分野・業界・世代を超えた多くの皆様と今後の社会について議論し、さまざまな視座から見た課題や期待を可視化する場として『セコムオープンラボ』を開催したり、議論で得た気づきをきっかけに、商品やサービスの開発を行ったりしています。その一環として、これまでのセコムブランドからの連想の範囲に縛られないブランド『SECOM DESIGN FACTORY』も生まれました。

───業務の中で、学生と接することはありますか?

沙魚川さん はい。僕らにとって、学生たちは“未来を作る”という分野のプロフェッショナルです。今の若い人たちの価値観や当たり前が5年後10年後の社会のスタンダードになるはずなんですね。ですから、セコムオープンラボには学生たちにも参加してもらい、他の参加者とともに未来のことを考えるデザインワークショップをしています。学生の価値観は、異なる世代にとってすごく刺激的で、学生の声が気づきとして役立った例は少なくありません。また、毎年参加しているマイナビさんとの大学生ビジネスコンテストの取り組みでも、学生たちのユニークなアイデアや若者の感覚がとても参考になるんですよ。
もっとも、これは学生世代だけに限らず、自分と視座の異なる多様な価値観は常に大切です。さまざまな可能性と視点を気づきに変えていく、ということの重要さを日々意識しています。

“少し先”を考えるのに必要な学生の創造力。

───さて、テーマは一つひとつの言葉にこだわりを持って設定したそうですね。早速ですが今回は、“少し先の”という言葉が気になります。

沙魚川さん 新型コロナウイルス感染症の拡大が始まって一年、まだまだ日常が変わり続けるなかで、多くの人が「自分はどうしようか」「もっとこうだったらいいのに」と自分主観で物事を考えていると思います。そんなふうに“今”を考える時は、自分主観で物事を捉えることができます。でも、ずっと遠い未来を考えると、途端に自分本位になれず机上の空論のような議論が生まれてしまいます。自分主観のまま、少しだけ先を考えることで、もっと想像的に、もっと意外性のあるアイデアが生まれるのではないか。そういう意味で、今回は“少し先”を考えてほしいと思ったのです。

───つまり、今回は自分主観になってもいいということですか?

沙魚川さん そう。むしろ、このプロジェクトを通じて一番大切なのは学生の皆さんの生々しい主観です。客観的な意見は白書や新聞に載っていますが、おそらくそれを解決しても、誰もお金を払おうとは思いません。人がお金を払ってでも使いたいものは、その人の主観によるニーズや課題、期待です。一人の人間として、自分視点の物語として、日常生活でも不自由に感じることやこうあったらいいなと感じることはありませんか。どんなことがあるとうれしいか、どういう状態だとハッピーになれるのか、自分自身の気持ちに隠された主観を大切にして取り組んでほしいです。主人公は、自分の身の回りの人でも、他人でも構いません。そうした人の日常を見て、自分がなにを感じたか、が重要なんです。
もう一つ大切なのは、どう共感させるかです。今回であれば審査員ですし、僕らであれば経営陣、お客様を共感させる。自分だけが良いアイデアと思っても、共感されなければ独り相撲で、チームやお客様を魅了できません。逆に言えば、小さな共感が連鎖することで、社会にまで響いていくこともあります。


───セコムが、世の中の安心を守る会社であると考えると、もっと広義の幸せや社会的貢献のようなものが対象かと思っていました。

沙魚川さん 「幸せ」という言葉は英語に言い換えると“well-being”や“happiness”という言葉になると思います。僕らのチームが注目して日々取り組んでいる「幸せ」は、特に後者の“happiness”なんです。たしかに、社会から見た価値や、毎日の「安全・安心」という点では“well-being”がふさわしい。でもそれに資する考え方はもはや当たり前のこと。 また、“well-being”だけを追求するのでは、一人の人間としてサービスや商品に価値を感じにくいのではないでしょうか。一人ひとりに心が動くようなワクワク感、楽しさ、心地よさ、つまり“happiness”があってこそ、毎日の暮らしに価値を見出せる。それが共感を呼んで普及するなかで、社会的な成熟にも繋がっていくはずです。では、どんなときに心が動くのか?そこに想像力を働かせて考えてほしいですね。

便利さや機能性よりも、心が動くかどうか。

───「遊び心」という言葉を使ったのにはどういった意味があるのですか?

沙魚川さん 大人たちは、実にたくさんのアイデアや可能性を考えています。でも、感情の変化を呼び起こす「遊び心」というのは、ロジカルには生まれない。どれだけ頭を捻っても考えて生み出すことはむずかしいんですよ。そして、そうした遊び心から生まれたものに、人の気持ちは動きます。これはどれだけ大人になってもですが、特に若い人にこそ、「遊び心」は忘れないでほしいんですよね。


───とはいえ、課題に取り組む学生としては、やはりビジネスっぽさや実現性を意識してしまって、なかなか遊び心を盛り込むのはむずかしいかもしれません。企画を考えるうえでのアドバイスをいただけませんか。

沙魚川さん これはたとえばですが、僕らが「遊び心があるな」と感じるのは、提案やアイデアを聞いたときに笑顔になれるかどうか、かもしれませんね。どうしても、普通に取り組むと「便利」であるとか機能視点で考えがちなのですが、便利なものや機能リッチなものは既に世の中に溢れていて、それ単体でのメッセージはすごくありふれてしまうと思うんです。便利かどうかと、実際に使われるかどうか、喜んで頂けるかどうかは異なります。便利さや機能性の高さよりも、楽しさ、うれしさ、気持ちよさといった、感情を変化させるエモーショナルな要素をコンセプトに落とし込めているかどうかはポイントになりますね。

僕らが昨年開発した『まごチャンネルwith SECOM』を例に挙げたいと思います。これは、実家など親御さん世帯に置く本体デバイスに接続されたセンサーで、部屋の温湿度、照度などを感知し、生活リズムを人工知能が推計して通知してくれる仕組みを採用した見守りサービスです。着目したいのは、ここに子世帯がスマートフォンで撮影した家族の動画や写真を送ることができ、本体デバイスを介して、親御さんがテレビの画面で離れた家族の動画や写真を楽しめるという機能を加えた点です。これによって、見守る側・見守られる側の両方に心地よさと、楽しさ、うれしさを感じてもらうことのできるサービスになりました。



─── 楽しさ、うれしさが加わることで、サービスの価値がグッと大きくなりましたね。

沙魚川さん そうなんです。「遊び心」とビジネスはかけ離れた場所にあるわけではありません。そのサービスを利用する人が誰なのか、お金を支払うのは誰なのか、いつ払うのか、そのとき本当にサービスや商品に心を動かされているかどうかは重要ですよ。

大切にしてほしいのは、直感と共感。

───お話を聞いていると、ターゲットの設定がコンセプトにすごく関わってくると思えてきました。

沙魚川さん たしかにそうですね。ビジネスコンテストとなると、ターゲットのペルソナを作ったりしがちですが、そのペルソナに当てはまる人が存在するか保証はない。平均的な人って実はどこにもいないですし、俯瞰した客観的課題を解決しても、具体的に誰が喜ぶのか見えにくいです。だったら、自分や自分の知り合いがユーザーになったときに、心が動くのかを考えるほうがずっと解像度が高くて現実味があるし、考えていて楽しいでしょう。


───なるほど。自分が考えて楽しいのかというのも、大切にしたいところですね。

沙魚川さん はい。今回の課題に取り組むときは、たくさんの人と仮説を話してみるのもいいですね。その中で心が動いたものにも目を向けながら、セレンディピティを起こせるといいと思います。世の中にない新しいものは、気づきと気づきが偶然出会うことで生まれることがほとんどですから。


───ちなみに、セレンディピティってどうしたら起こすことができると思いますか?

沙魚川さん セレンディピティは起こそうと思って起こせるものではない、と思いますよね。でも必ずしもそうではないはずです。コツとしては、常に課題とするテーマやキーワード、問題意識を頭の片隅に置いておくことでしょうか。そして、たくさんの情報に触れてみてください。そうすると、思いもよらない言葉がテーマとリンクしたり、それまで見逃していた情報をキャッチできるようになると思います。自分の周りの人との話も、頭の中で混合してみると、面白い組み合わせに出会えるかも。そこにセレンディピティが隠れているはずです。

───最後に、学生たちへメッセージをお願いします!

沙魚川さん 今日、何度も言葉にしてきたのは自分の想いや直感に正直になってほしいということでした。そして、共感。目の前の人を共感させることの先に、社会があるということ。顔も名前も知らない架空の人たちのためのアイデアではなくて、自分自身あるいは自分に近い誰かがハッピーになるために一生懸命考えてみてください。想いや直感は、皆さんが生きてきたなかで蓄積されたとても大切な感覚です。その感覚を持って、僕たちにみなさんの当たり前やスタンダードがどんなものであるのかぜひ教えてください。人の心を動かす、パワーに溢れたアイデアをお待ちしています!!


───本日はお話いただきありがとうございました!



沙魚川(はぜかわ)久史さん
セコム株式会社
オープンイノベーション推進担当リーダー

1976年生まれ。研究開発部門を経て、コーポレート全般の企画業務に従事しながら、オープンイノベーションチームを率いる。イノベーション推進に向け「セコムオープンラボ」を主宰。挑戦的ブランド「SECOM DESIGN FACTORY」を立上げ。本社企画部担当課長を兼任。また、東京理科大学客員准教授を経てフェロー。その他各種研究職を兼任。