<前編>ルールを「守る」ものと考えないで。ルールは「使う」道具であり技術です。法律家・水野 祐さんに聞く、ルールの柔軟性

「ルール」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?
「ルールは不自由なもの」「人を縛るもの」「社会人になるとルールにがんじがらめなのかな」と、なんだかモヤモヤしてしまう人が多いかもしれません。
そんなモヤモヤを晴らすべく、法律のプロであり、「ルール」という身近な領域にまでご自身の活動を拡げている水野さんに、「ルールってなんですか?」を聞いてみましょう。

プロフィール

水野 祐さん

法律家。弁護士(シティライツ法律事務所、東京弁護士会)。Creative Commons Japan理事。Arts and Law理事。九州大学グローバルイノベーションセンター(GIC)客員教授。グッドデザイン賞審査委員。慶應義塾大学SFC非常勤講師。note株式会社などの社外役員。テック、クリエイティブ、都市・地域活性化分野のスタートアップから大企業、公的機関まで、新規事業、経営戦略等に関するハンズオンのリーガルサービスを提供している。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』(フィルムアート社)など。

Q1.「ルール」って守らないとダメですか?

A.「守る」ものと考えないで。ルールは「使う」道具であり技術です。

イラスト:ルールは道具

 僕は法律家なので、法やルールについて聞かれたり考えたりすることがよくあります。改めて「ルールって何?」と問われたら、こんな答え方をしています。

 ルールとは、「自分も含めた人の生活を、より心地よく豊かにするための道具」です。

水野祐さん

 ルールというと、手の届かないところにあって、考えなしに従わなければならないものと思われがちですが、そんなことないんですよね。そうじゃなくて、ハサミやお箸のような、生活を便利にする道具のひとつとして捉えたほうがいい。

 ハサミやお箸を「守る」とは言わないですよね? 道具は「守る」のではなくて「使う」ものです。もし身の回りの道具が使いづらかったら、取り替えたり改良したりしますよね。

 ルールも同じなんです。ルールも、日頃からよく使って、よりよい使い方を試して、手に馴染ませていけばいい。

 同じように、家庭のルールも、学校のルールも、社会のルールも、もし不自由なルールがあるんだとしたら、そのルールを見直していく余地があります。そのコミュニティに参加している人たちが使いやすいように、どんどん変えていけるはずです。

水野祐さん

 国などがいろいろなルールを定めて、体系化したものを「法律」と呼びます。法律になると、「ルール」よりもやっぱり自由度が少なくなると思うでしょうか? これも一概にそうとはいえません

 たしかに条文自体は、そう簡単には改変できません。ですが、実は、時代や状況、関わっている人の感情などによって、条文の適用のしかたや解釈にはかなりの幅が出ます。同じ条文を適用して判断を下そうとしても、結論はつど変わるものなんです。可動性というか、柔軟性があります。

 これらは僕が実感してきたことですが、「法律やルールって、意外と自由だよ」と言っても、なかなか納得してもらいづらいかもしれません。でも、本当にそうなんです。

水野祐さん

 いまの時代・状況・人の気持ちに照らして、法律、ルールを、道具や技術としてどう使うべきか考え、よりよい使い方を探り続けるのが、法律家の仕事といえます。
 ルールは無条件に守らなければいけないものではなく、道具として使うものであり、意外に自由で柔軟なものだと伝えたいですね。

<中編>はこちら

スタッフクレジット:

取材・執筆:山内 宏泰
イラスト・漫画:中山ゆき
撮影:菊田 香太郎

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