Interview

ミライのバトン

人と違うことをやってみる。“奇妙なもの”を撮り続ける佐藤健寿のユニークな視点

世界に点在する“奇妙なもの”を対象に撮る写真家・佐藤健寿さん。心惹かれる対象を写真に収めることを通して、自分にしかない強みを見つけ、仕事に繋げている姿が印象的です。自分の強みや個性を見つけるコツを伺うと「大多数の人とは違うことをやってみること」と語ってくれました。

Profile

佐藤健寿

武蔵野美術大学卒業。フォトグラファー。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影。写真集『奇界遺産』シリーズ(エクスナレッジ)は異例のベストセラーに。ほか著書に『世界不思議地図』『THE ISLAND – 軍艦島』など。

誰も行こうとしない場所に行くことが仕事に繋がる


――武蔵野美術大学に入学され、写真を撮るようになったきっかけを教えてください。


佐藤:武蔵野美術大学には「写真学科」がなかったので、「映像学科」で映像やCGなどに最初は取り組みました。音を映像に変換するメディアアートや、映画制作の手伝い、3DCGをやってみたり。写真もやっていましたが、別にそれが一番やりたいというわけでもなかった。

僕が大学生だった当時は、Windows95が発売されて、世の中にインターネットが広がり始めた時期。動画編集やCGなど面白い創作ができるようになって一時ハマった反面、当時のPCはいまと比べて動作が不安定すぎたんです。動画制作の途中で画面がフリーズして、うんともすんとも進まない状態になったり。

大学4年間でPCとの格闘の末、ウンザリしたんですね、きっと。PCと向き合う仕事をするのは無理だな……と悟りました。その反動があって、ひとりで身軽にできる写真に惹かれたんだと思います。


――そこからどんなきっかけで“奇妙なもの”を撮影するようになったのでしょうか?


佐藤:留学したアメリカの大学で写真集を作る課題が出て、ネバダ州にあるエリア51と呼ばれる場所を撮影しました。当時はGoogleマップなんてないし、紙の地図を広げながらロードトリップして。それが、とても面白かったんです。広大な砂漠や西部劇の舞台、核爆弾の実験施設など、アメリカのなかでも特にその場所周辺には訳のわからないものが詰まっていて。「面白い!」と感じたものを撮りまくってましたね。
※エリア51:アメリカ空軍の基地がある立入禁止区域のことで、長らくその存在理由が謎とされていた。


――佐藤さんにとって「面白い」の定義はなんでしょうか?


佐藤:「一体これは何だろう?」と興味を掻き立てられるもの……知的好奇心と言ってしまうと大袈裟だけど、なんだろう?って頭の中にクエスチョンマークが残るものに惹かれるし、面白いと思う。

僕の場合、中高生の頃から歴史が好きで、何事も“成り立ち”が気になるタイプだったんです。特に“ねじれた歴史”がある場所に面白さを感じます。そういった場所には、結果として変なものが残りがち。反対も然りで、何か気になるなと感じて撮影後にあらためて調べてみたら、やっぱり変な歴史がある場所だったこともあります。

エリア51は、まさに“ねじれた歴史”がある場所で、撮影としてみても、個人的な旅としても面白かった。


――ご自身の知的好奇心が仕事に繋がっているのは、とても理想的です。なかなかできないことだと思うのですが、どのようにして仕事へ繋げたのでしょうか?


佐藤:エリア51を撮影していた当時、Flickrに写真を投稿していたら、エリア51のWikipediaを編集されている方から「写真を使わせてほしい」と連絡が来たのを、よく覚えてます。
あれだけ有名な場所なのに、行く人はいてもちゃんと写真に残す人はいないんですよ。エリア51みたいな場所をちゃんと撮るという“誰もしないことをやった”。そういう撮影を繰り返していたら雑誌などのメディアから声をかけてもらい、気づいたら仕事になっていました。

※Flickr(フリッカー):米ヤフーが運営するネット初期から存在する写真共有サービス

「どう撮るか」ではなく「何を撮るか」の感覚を大事にする




―― 大学卒業後に一度だけ会社に就職していた過去があると伺いました。その経緯を教えてください。


佐藤:大学卒業後はアメリカへ留学したのですが、卒業から留学までに実は1年ほど時間がありました。そこで、ディレクターを募集しているWeb制作会社を知り合いに教えてもらって、試しに面接を受けてみたら採用されて。

でも、入社初日に自分の席に着いて30分で、我慢できなくなったんです。10年後も自分がこの会社にいるイメージがまったく湧かなくて……。結局入社初日で辞めてしまいました。


――そのあと、佐藤さんはずっとフリーランスの写真家として活動されていますよね。一般的には“就職しないこと”に焦りや不安を感じてしまいそうですが。


佐藤:単純に、僕は会社勤めが合わないタイプだったと思います。

よく「決断力があるね」と勘違いされがちなんですが、けっこう流されながら生きています。一度は会社に就職してみたのもそう。その都度、強い意思で決断したという感覚ではなくて。結果的にいまフリーランスで活動しているのも、面白いと思うことをやっていたら、なんとなく行き着いた形です。


――フリーランスの写真家として活動を続けられている一番の理由は何だと思いますか?


佐藤:ひたすら「何を撮るか」を考えているからだと思います。

「どう撮るか」というテクニックの部分は、誰でも真似できる時代でもある。いきなり一般人に「明日スタジオ撮影をやってくれ」と依頼したとしても、インターネットで調べたら最低限のことはできるレベルで、参入障壁は低くなっていると感じます。
だからこそ、写真撮影を生業にしている人間にとっては「何を撮るか?」というセンスや視点が重要になってくるんじゃないでしょうか。

心の中に浮かぶクエスチョンマークに自分らしさがある




――佐藤さんにとって、自分らしい働き方とはどんな働き方ですか?


佐藤:「自分に嘘をつかない働き方」ですかね。たとえば、写真集をつくるとき「どっちの表紙がかっこいいだろう?」というような選択を常に自分自身に迫ったり、「どんな場所なら撮っていて楽しいと思えるか?」と考えたり。自分自身が作品の最初の鑑賞者でもあるので、妥協したり心に嘘をついたりすると、誰よりも先に自分にバレてしまうんです。

そういったモヤモヤがない働き方が、僕にとっての自分らしい働き方だと思います。


――大学生活の中で、それらと出会うコツがあれば教えてください。


佐藤:自分の心に浮かんだクエスチョンマークを大事にしてほしいです。

大学1・2年生の期間って、自由である一方、「就活」に向かって自分の個性や好きなものを焦ったりもがいたりしながら探しまくる時期かもしれない。

でも、好きなことって無理やり探し出すものではなくて、意外と身近に転がっているもの。たとえば、子どもの頃に好きだったものを客観的に眺めてみると、ヒントが得られると思います。僕も、子どもの頃に好きだったもの、なんとなく惹かれるものが結びついたのが、まさしくエリア51だったので。


――もし、いま佐藤さんが大学1〜2年生だとしたら、夢を叶えるためにどんな行動を起こしますか?


佐藤:抽象的ですが、他の人と同じ方向を向かないように意識するかもしれません。

最近でも、たとえばトークイベントなどに登壇させてもらうと、写真家希望の学生が来て、一生懸命メモを取りながら話を聞いてくれます。たしかにイベントに行くことは正攻法だけど、周りと同じことをしているとも考えられる。僕であれば、そのお金と時間で撮影に出かけるかな。たとえば、新幹線に飛び乗って知らない駅で降りて「なんだこれ?」って思うものを見つけて帰ってくるだけでも有意義かも。

自分にしかない強みを見出したいと思うなら、人と違うことをやってみることが大事です。人と違うことが怖いと感じるかもしれませんが、今のような時代では、人と同じであることをむしろ恐れるべきだと思います。そこにヒントがあると思いますね。

Share:

自分について調べてみよう!