最終更新日:2024/7/29

東京多摩青果(株)

業種

  • 商社(食品・農林・水産)
  • 食品
  • 物流・倉庫
  • 農林・水産

基本情報

本社
東京都

取材情報

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革新的な設備が集約された青果物卸売市場。その知られざる全容をリポート

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オートメーション化された場内で、若手社員が伸びやかに活躍

東京多摩青果が運営するのは、野菜・果物の流通を担う青果物卸売市場。1日約1,300トンもの青果物を扱い、全国有数の取扱規模を誇る市場を訪ね、その知られざる全容に迫る。

中央自動車道・国立府中IC至近という交通の利便性と、敷地面積約4万5,361平米を誇る国立市場。2006年に大規模リニューアルを敢行し、立体冷蔵自動倉庫、搬送コンベア、低温荷捌場など、革新的な設備が張り巡らされている。そのダイナミックな設備や仕組み、青果物取引の使命と魅力について、総務課の小林邦光さんに紐解いてもらった。

青果市場のイメージを覆す光景

国立市場の卸売場兼事務所棟は、1階に卸売場、2階に荷捌場、3・4階に本社オフィスを完備。斬新なデザインが目を引き、多摩のまちなみ建築デザイン賞(国立市賞)を受賞。
卸売場中2階に張り巡らされ、青果物を載せたパレットが全自動で運ばれる搬送コンベア。各フロアや上下階を立体的につなぎ、フォークリフトによる搬出入を大きく省力化。
国立市場の周囲には芝桜やつつじなどが植えられ、近隣の景観に配慮。色とりどりの花や緑に彩られた緑地は、近隣にお住まいの方々の撮影スポットとして親しまれている。

“立体”を活用し、自動倉庫と搬送コンベアで省力化を実現

国立市場の特徴は、場内の物流がオートメーション化され、効率化を実現している点にあります。2006年の大規模リニューアルによって、いち早くこのオートメーションシステムを構築し、今なお業界トップクラスの設備を誇っています。

その中心といえるのが、立体冷蔵自動倉庫と搬送コンベアです。立体冷蔵自動倉庫は、その名のとおり卸売場の1階から2階までの“立体空間”を生かしているのが最大の特徴です。1階と2階の間の中2階には搬送コンベアが張り巡らされ、その上下の空間を卸売場や荷捌場として最大限に活用できるように設計しています。搬送コンベアで運ぶ青果物の専用パレットには、バーコードが印字され、品目・数量・搬出先などの入出荷データとリンク。各パレットはデータに基づいて全自動で搬送される仕組みです。そして、5度・9度・15度の3つの温度帯に分けて冷蔵保管できる倉庫や荷捌場へ、垂直搬送機とコンベアを経由して立体的に運ばれていくという構造になっています。管制室が24時間体制でこれらの稼働を制御・監視。自動化によってフォークリフトによる積み下ろしの労力が省かれ、大幅な省力化を実現しています。

立体冷蔵自動倉庫は612パレットを格納でき、搬送コンベアの全長は400メートル。入出荷のピーク帯を迎える夜と朝には搬送コンベアがフル稼働し、パレットが上下縦横に運ばれる光景は圧巻です。市場を初めて訪れる学生の皆さんは「市場がこんなふうに自動化されているなんて、知らなかった」「市場は雑然としたイメージがあったけど、とてもキレイで驚いた」と感嘆されます。パレットの動きを興味深く目で追う姿に、市場のイメージが覆った様子が伝わってきますね。

当社がこのようなシステムと設備の導入に踏み切ったのは、生産者の方々が丹精込めてつくった青果物を、新鮮でおいしい状態のまま流通させ、全国の消費者に安定的にお届けする使命をまっとうするためです。そのために当社では大胆な自動化を図り、産地と市場、消費者をつなぐ物流過程全体で、低温保管を途切れさせないコールドチェーンを実現しています。

実は競りは行わず、社員たちが需給バランスを考えて適正価格を決定

卸売市場といえば、買い手の方々が競争で値を付け、最高の値を付けた人に販売される「競り」の取引を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、当社の市場では競りではなく、「相対(あいたい)取引」という取引方法を行っています。

これは、売り手と買い手が1対1で価格や数量を決め、販売するという取引です。売り手とは市場を運営する当社、買い手とは買参人と呼ばれる仲卸業者や小売業者、量販店の方々です。売り手である当社で日々取引を担っているのは、営業職の社員たちです。営業職と聞くと、お客さま先に出向いて交渉・販売するというイメージがあると思いますが、市場は“ヒト”“モノ”が集まる場所であるため、当社の営業職はオフィスフロアでのデスクワークが基本です。

営業職はトマト、キャベツ、キュウリなどの品目別で担当し、販売時点での需要と供給のバランスを考慮しながら、適正な価格を決定、販売する役割を担っています。青果物の品質や供給量は自然条件や天候によって大きく左右され、決して一定ではありません。この産地は不作で、この産地は豊作というように、産地によってバラツキも生じてきます。そうした常に変化する状況をいかに先回りして読み説き、全国のネットワークを駆使して供給量を安定させるか。そして、年間を通して適正価格に落ち着かせ、消費者への安定供給を守り抜けるか。取引が大きくなればなるほど、1円単位の変動が与える影響も大きくなり、重責を伴います。だからこそ、やりがいの大きさも格別なのです。

自らの交渉・取引によって、北海道のおいしいジャガイモを東京の人たちにも味わっていただく。トマトやキュウリなどの夏野菜を、年間を通じて食卓にお届けする。そうした流通も営業職の裁量にゆだねられています。その結果、スーパーマーケットに自ら担当した青果物が並び、お客さまが手に取ってくれる光景を目にするたびに、気持ちのいい達成感と誇らしさに包まれます。

難しさを伴う仕事ですが、当社では入社1年目から担当品目を持ち、取引を手掛ける若手社員がたくさんいます。新入社員は先輩とペアを組み、先輩のもとで取引規模が比較的小さい品目から仕事を覚えていけるので、若手社員ものびのびとチャレンジしています。

商品や販売促進の企画提案にも踏み込み、付加価値づくりにチャレンジ

全国の生産者から青果物の販売を委託され、販売先に適正価格で販売するのが卸売市場の役割です。しかし、当社ではさらに踏み込み、商品企画や販促企画を通して青果物の付加価値を高めるという提案も行っています。私たちはこれを“攻めの販売”と呼んでいます。

例えば、春キャベツや春アスパラが旬を迎えるにあたって、小売店や量販店に特設フェアの開催を企画提案したり、売場を演出するPOPやチラシを作成して提供したり。生産者・販売先双方の売り上げ向上につながる提案を行っています。東京は核家族の家庭が多いことから、少人数で多品種の青果物をバランスよく楽しんでいただけるよう、子会社が運営しているパッケージ場では、量販店や消費者のニーズに合わせ、内容量や個数を変更しています。

こうした提案は、生産者と販売先の双方に関わり、情報を集積している卸売市場の当社だからこそ、可能だと自負しています。コロナ禍における中食ニーズの高まりもあって、取引額は順調に伸びています。しかし、現状に甘んずることなく、生産者の方々が丹精込めて育てた青果物を、おいしく新鮮な状態で多くの消費者にお届けするために、これからも攻めの姿勢で、新たなチャレンジに挑みつづけていきたいと考えています。

私は長年、新卒採用に携わり、これまで25回の入社式に出席してきました。それほど多くの仲間を迎え、後輩たちが第一線で活躍してくれていることに誇りを感じています。当社には、青果物の流通を担うやりがいに共感し、「農業に尽力する生産者のために力を注ぎたい」「生産者と販売先双方に深く関わり、大きな取引を動かしたい」など、意気揚々と入社して活躍している先輩たちがたくさんいます。社内には堅苦しさがなく、とてもフランク。とくに営業部門はペア制・グループ制で動いているため、役職や年次などの隔てもなく、何でも相談しながら日々の取引を担っています。

革新的な設備を備え、ダイナミックに自動化された場内。相対取引によって青果物の供給と適正価格を支える使命。そして、攻めの姿勢で新たな価値を生み出すやりがい。この記事を通して、学生の皆さんが従来の市場のイメージを変え、興味を持っていただけると幸いです。

企業研究のポイント

「自分はどんな仕事をしたいのか」という自己分析から始め、企業それぞれの特徴や社風を知り、自分に合った企業を見つけてほしいと思います。そのためには、規模や知名度だけに捉われず、3年生の間は業界・企業の情報に幅広く触れ、自分の興味・関心を広く探ってみてください。その上で、興味を抱いた企業1社1社について、事業や仕事内容、社風などをより深く分析していくと、自分に合う会社を絞り込みやすいと思います。

 当社の社風の特徴は、役職員の風通しの良さが挙げられます。会社から補助金をいただきながら活動している部活動が6つあり、年齢や役職、部署隔てなく、同じ趣味を共有しながら、和気あいあいと活動しています。
 私も釣り部とマラソン部に所属して、船を貸切っての海釣りや年数回のマラソン大会に参加し楽しんでいます。「プライベートまで会社の人とは…」と思うかもしれませんが、活動中は仕事の話はしません。友人と話すように最近の関心事や趣味の話など、他愛のない話で盛り上がります。当社の社風の良さを感じますね。

(総務課/小林邦光さん)

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マラソン部は役員から20代まで幅広い方々が所属しています。本気の方もいれば、健康のためという方もいて、自分に合った活動をしています。

マイナビ編集部から

卸売市場といえば、豊洲市場が真っ先に思い浮かぶことだろう。豊洲市場をはじめとする中央卸売市場は公営だが、全国各地の卸売市場は圧倒的に民営の市場が多い。東京多摩青果が運営する卸売市場がまさにそうで、同社の取扱規模は業界トップクラスの868億円(令和5年)を誇る。一般的な知名度は高くないものの、実は業界トップクラスの、知る人ぞ知る優良企業だ。

公営の市場と違って、一般客が立ち入ることは難しく、市場の全容を知る機会は少ないだけに、今回の取材は貴重であった。自動化・システム化された設備、整理の行き届いた場内、若手社員たちが第一線で活躍する姿を目にし、アナログな環境を想像していた取材陣の“市場に対するイメージ”がキレイに塗り替えられた。

若手社員も取引の第一線で活躍し、自らの判断で販売価格を決め、1日数千万円を売り上げることもあるという。しかも、自らの働きが生産者、販売先双方への貢献につながり、ひいては消費者へ新鮮な青果物を届けることに結実する。緻密にしてダイナミック、社会貢献にも結び付くのだから、やりがいの大きさは想像以上に違いない。知れば知るほど興味が掻き立てられ、学生の皆さんにもぜひ知ってほしいと、つくづく感じさせる企業だ。

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入社後に先輩とペアを組み、イチから知識・スキルの習得に励む同社の社員の皆さん。「コミュニケーションを大切にできれば大丈夫」と、担当の小林さんも背中を押す。

会社概要に記載されている内容はマイナビ2025に掲載されている内容を一部抜粋しているものであり、2026年卒向けの採用情報ではありません。企業研究や業界研究にお役立てください。

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