最終更新日:2025/3/1

地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター

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仕事・キャリアパスについて伝えたい

中小企業のものづくりへの情熱を支える仕事

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東京都立産業技術研究センターの若手職員たちの肖像

東京都立産業技術研究センター(都産技研)は、都内の中小企業のものづくりを支援することで東京都の産業発展に貢献している。異なる専門領域を有する3名の研究員たちの仕事ぶりに迫ってみた。

吉次 なぎ
情報システム技術部 IoT技術グループ
大学院先進理工学研究科修了/2017年入所

萩原 颯人
情報システム技術部 ロボット技術グループ
大学院理工学研究科修了/2020年入所

亀崎 悠
地域技術支援部 墨田支所
大学院先進理工学研究科修了/2016年入所

先輩からひと言

「都産技研はアカデミックな研究機関と企業の研究開発部門の中間のような雰囲気があり、和やかな空気感の中で働けます」(吉次さん)
「実験が好きな人には向いている仕事だと思います。また、中小企業のお客さまと直接話をして課題を解決していくだけにコミュニケーション力も問われます」(萩原さん)
「においの研究には様々な知識が問われますが、幅広い分野の研究員がそろっているので、気軽に最新の知見を聞くことができスキルアップにつながっています」(亀崎さん)

バイオインフォマティクスを活用し、創薬に役立つ新技術開発に挑む(吉次さん)

学生時代は、生命システムの研究に取り組んでいました。学生時代の研究テーマに継続して取り組めるだけでなく、幅広い分野の研究員がおり、専門外の領域とも連携して知見を広げていける環境だと感じ、都産技研への入所を決めました。
実際入所してみると、想像以上に部門の垣根も低く、専門外の分野から自分の研究に活かせるアイデアが得られることは珍しくありません。

現在の研究テーマは、バイオインフォマティクス。RNA-seq解析手法の開発に取り組んでいます。これによって、今まで知られていなかった遺伝子や遺伝子の働き方を見つけることができるようになります。学生時代の研究テーマと関連していますが、より中小企業に展開できるよう、上司や先輩と相談しながら研究テーマを提案しました。
このように、研究員自らがニーズを探し、研究テーマを発案することができる点が都産技研の魅力の一つだと思います。

今後は、自分の研究成果を実用化につなげることが目標です。例えば、バイオインフォマティクスの手法を用いて、創薬に役立つ技術を開発すること。タンパク質をターゲットにした医薬品の開発は高コストになるため、RNAやDNAなどタンパク質以外をターゲットにする医薬品開発に活用できる技術の開発を目指しています

一方、支援業務ではUSBやHDMIといった高速通信規格の電気的適合性試験などを担当するほか、中小企業でも取り組みやすいセキュリティ対策セミナーなども担当しています。

研究業務と支援業務の両立に不安を覚えるかもしれませんが、都産技研では仕事の進め方の自由度が高く、自分に合ったやり方で効率よく業務に取り組むことができます。研究で行き詰った時でも、支援業務で成果が出ていたり、お客さまから感謝の言葉をいただけると、精神的に楽になることがあります。良い意味で研究だけに集中しているわけではないので、煮詰まらずに前向きに仕事に取り組めていると感じています。

都産技研には、アカデミックな研究機関と企業の研究開発部門の中間のような特徴があると思います。技術系の公的機関ではありますが“おかたい”雰囲気はなく、お客さまとの技術相談でも研究員同士でも、和やかな空気感に包まれています。
また、ライフワークバランスも充実しており、メリハリのある働き方ができると思います。

ロボットを活用した新サービスが誕生する土壌を整えていく(萩原さん)

大学院では災害用レスキューロボットをテーマに研究を重ね、なかでも悪条件下でのドアの開閉や、ガスのバルブを閉めたりするロボットアームの開発を専門としていました。就職活動ではロボット関連企業からも内定が出ましたが、第一志望の都産技研に入所を決めました。かつて私の祖父は町工場を営んでいましたが、高齢のため閉鎖してしまいました。祖父が営んでいたような中小企業の技術を絶やすことなく、未来につなげる手助けが都産技研ならばできると思い志望しました。

入所後はロボット技術グループに所属し、ロボット産業への新規参入を目指す中小企業からの技術相談に対応したり、開発したロボットの安全性や有効性を確かめるための試験に対応しています。最近は、水族館や博物館を案内するロボット、ちょっとした荷物を運搬するロボット、掃除や配膳を行うロボットなど、移動しながらサービスを提供するロボットなどの相談が増えてきています。

具体的には、ロボットから発する電磁波の計測や他の電気機器に及ぼす影響を調べるEMC試験を1年目から担当しています。
電磁波の条件は規格で統一されていても、据え置き機器向けの規格のため、移動ロボットの場合は配置方法に工夫が要りました。
未経験の試験でしたが、部署内はもちろん、他部署の先輩も質問をすると快く応じてくれるので、非常に心強く感じます。

このほかにも、2年目からは荷重耐久性試験、衝撃耐久性試験も担当するようになりました。都産技研の装置を使えば、上下左右あらゆる方向から負荷をかけることが可能であり、ロボットに限ることなく幅広い試験品の依頼を受けています。

支援業務の一方で、研究業務にも意欲的に取り組んでいます。各自がテーマを持って、主体的に研究を進めているのも都産技研ならでは。私もロボットアームに関する基盤技術の研究を1年目から立ち上げました。横方向への動きを活かし、最初は手すり清掃や外壁皮膜吹付を考えていましたが、現在は3次元地図構築への応用をテーマに取り組んでいます。

試行錯誤の連続ですが、自分が対応したことで中小企業のお客さまから「ありがとう」と言ってもらえた時のやりがいは格別です。まだまだ一人前とはいえず自己研鑽の日々ですが、さらに創意工夫を重ねながら的確な支援ができる人材に成長したいと思っています。

リサイクルの専門家からにおいのスペシャリストへ。専門領域を広げて飛躍(亀崎さん)

学生時代は無機化学について学び、溶解性貴金属の反応メカニズムの解明をテーマに研究に取り組んでいました。都産技研への就職を決めたのは、研究を通して企業に貢献することで、日本を直接的に良くするアプローチができる点に魅力を感じたからです。また、面接で幹部職員が「泥臭いところもある仕事だ」と包み隠さず話してくれたおかげで、納得してこの道を選ぶことができました。

最初の3年間は本部でリサイクルに関わる研究を行っていました。近年、特殊な金属膜で覆うことで断熱性などを高めた「Low-Eガラス」という低放射のエコガラスが住宅などで用いられています。このガラスはリサイクル処理の際に不純物が混じりやすく、廃棄処分せざるを得ないため、キレート反応や錯体抽出等の技術で金属を溶かし、板ガラスを分離する研究を立ち上げました。単に論文にまとめるだけでなく、実際に企業が利用できる技術にまで形作ることの大切さを身に染みた時期でした。

墨田支所へ異動後は、周辺エリアの中小企業を中心に相談対応を行っています。墨田支所は「人間中心設計」をテーマに、人が製品を使う際の心地よさや安全を測ることを重視しており、中でも私はにおいの分析に対応しています。具体的には、生活空間にある、さまざまな「におい」の正体の視覚化・数値化することが目的です。評価法はいくつかありますが、中でも相談が多いのが「異臭分析」です。例えば、製品を袋から出したときに本来と違う不快臭を感じることがありますが、その原因や防止方法を探るなどしています。

においの成分によっては装置で検出できず、異臭原因成分の特定に至らないことがあります。しかも、室内の条件や人の動き一つで発生の仕方も変化するのが難しいところです。複数のにおいが混ざり合って複合的な要素から異臭がするため、原因を特定するには複数の要素を考え、一つずつ可能性を狭めていく地道な作業が欠かせません。そのための第一歩として、異臭を感じたお客さまから発生時の状況を聴き取ることは極めて重要です。

何をどう分析するべきか、雲をつかむような状況の中でスタートし、ようやく原因を見つけ、確かな分析結果を提出できたときはホッとします。まだまだにおいの専門家といえるレベルには至っていませんので、今後も多くの相談対応と分析を重ねて技術を高め、お客さまに信頼される職員になりたいと思っています。

学生の方へのメッセージ

企業研究をするなかで注目してもらいたいのは、その会社の理想とする姿や価値観が凝縮されている「企業理念」にほかなりません。企業理念に共感できるか否かが、会社選びの重要な指標となるといっても過言ではないでしょう。あなたが大切にしたいことと、企業が大切にしたいことに共通点があるのだろうか?そんな視点で企業理念を紐解いてみてください。

当センターでは「明日のくらしと産業を支えるために」を都産技研憲章として掲げており、その中で「私たちの使命」として、「産業を担う東京の中小企業を科学技術で支え、すべての人々の生活に貢献すること」としており、この使命は設立当時から変わっていません。

中小企業のお客さまとコミュニケーションを重ねながら共に製品化や技術化を進めていく職員全員が“私たちの使命”を胸に抱きながら、「お客さまの役立ちたい」という熱い思いで仕事に臨んでいます。ものづくりの現場を直接的に支えることを喜びと感じられる人材たちに、後に続いてほしいですね。
<人事担当・淡路 和江>

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ものづくりの課題を抱える中小企業に対して、親身になって支援することで「ありがとう」の一言がいただける。やりがいの大きな仕事に挑むことができる。

マイナビ編集部から

東京都内の中小企業に対して、多角方面で技術支援を行う東京都立産業技術研究センター。機械や電気、情報、化学など、理系ならばあらゆる領域の専門家が集うとともに、お互いが部署や立場の垣根を越えて強く連携しながら、中小企業の課題解決に向けて全力で取り組んでいる。

2021年には、前身の組織から数えて100周年の記念すべき年を迎えた。この機会に「変わる産業 変わらない使命」を旗印にしながら、急速に変化し続ける科学技術に対応しつつ、引き続き中小企業を支えるという不変の役割を全うする力強い決意を表明している。

研究員たちは常に前向きに自己研鑽を重ねている。基本的には研究者集団だけに、職場内は大学のような自由闊達でアカデミックな雰囲気に満ちている。レベルアップを目指して自己研鑽したい人材には博士号取得をサポートしており、学費補助なども行っており、多くの研究員がこの制度を利用して博士号を取得している。学生時代の研究の延長線上に立ちながら、産業界に貢献を果たすことができる──都産技研には理想的な研究環境が広がっていると感じた。

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ワンフロアに全職員のデスクがあり、部署の垣根を越えてコミュニケーションがとりやすい環境。他部署の先輩と気軽に相談や議論ができることも都産技研の魅力だ。

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