御国色素(株)

色素には「染料」と「顔料」があります。たとえば、折り紙にはもともと染料が使われていましたが、染料が水に溶けやすくて色付けしやすい分、子どもが舐めたり、濡れた手で触ったりすると色が染み出てくるという問題が生じていました。そこで当社では、耐水性や耐光性に優れている顔料に着目。しかし、不溶性の粉末である顔料が着色に向かないという欠点を補わなければなりません。そのため、粒子の大きさをナノサイズで制御する「微粒子化」と、粒子を安定した状態で媒体に分散する「分散安定化」という世界トップレベルに値する独自技術を開発。さまざまな物の着色剤を「染料」から「顔料」へと転換させるニーズを呼び起こすきっかけとなった「顔料分散液」の開発に成功。これまで各産業分野の多くの用途に展開してきました。

また、最近では「顔料分散液」は「着色剤」としての役割を超え、素材の性能を向上させる「機能材」としてもさまざまな分野で研究が進められています。たとえば、電気自動車やスマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどのバッテリーとして使われているリチウムイオン電池の長寿命化への貢献。さらに、自動車のサイドガラスにUVカット効果を加える働きをしたり、汚れが付きにくく手入れがしやすいキッチンボードの加工に使われたりと、当社が提供している製品の機能は身の回りにある多種多様なものに使われています。IT、エレクトロニクス、医療、自動車、環境といった幅広い分野で不可欠な技術として求められており、その可能性は無限に広がっています。

私は理系の学生でしたが、研究職ではなく、お客様と直接関われるような職種に就きたいと考えていました。とはいえ、大学時代に得た化学の知見を生かしたいという想いもあり、メーカーでの営業職を志望。また、会社で唯一無二の存在として活躍するという夢を抱いていたため、志望先を中小規模の企業に絞って企業研究をしていました。そこで出会ったのが、私が生まれ育った姫路市に本社のある御国色素です。他社に真似のできないような「微粒子化」「分散安定化」という高い技術力に大きな魅力を感じ、将来性のある会社であることを確信して入社を決めました。

入社後は営業部に配属となり、東京営業所でリチウムイオンバッテリー用部材の拡販業務を担うメイン担当として、世界の自動車メーカーや最大手の電池メーカーに自社製品を供給してきました。お客様のご要望を最大限満たし、課題を解決するために総合的な解決策を模索し、提案していくのが当社の営業スタイル。自社の技術員と連携するだけでなく、資材メーカーや原料メーカーにも積極的に訪問し、トータルソリューションの提供に取り組んできました。その結果、「何か困ったことがあれば、御国色素に相談しよう」とお客様に思っていただけるような信頼関係を築くことができたと自負しています。

大きな転機となったのは、アメリカで工場を開設することになったお客様から現地供給を依頼されたこと。当社もアメリカに拠点を設けることになり、アメリカ工場の立ち上げプロジェクトチームの責任者に抜擢されました。東京での担当営業を兼務しながら、月に1回はアメリカに出張し、現地のリクルーターや建設会社の方々と接しながらプロジェクトを進めていくには困難も伴いました。しかし、2015年にアメリカ法人を設立し、2018年にアメリカ工場を無事に稼働させることができた時は大きな達成感を覚えましたね。

私自身、入社してからずっとリチウムイオン電池一筋だったので、そろそろ別分野でも実績を上げたいと思っています。現在、私がグループリーダーを務めているネクストビジネスプロジェクトは、これまでにない技術を生み出し、自社が持っている技術を破壊するようなイノベーションを起こすべく日々活動している部署です。今後は、会社の新たな柱となるような新事業を創出していくことが目標です。

当社に入社して良かったと思うことは、新人の頃から責任のある仕事を任せてもらえたこと。1年目から戦略会議に参加したり、世界の名だたる大手企業を担当したり…。4年目にはアメリカ拠点の設立にも携わるチャンスをいただきました。しかも、たとえ失敗しても上司がしっかり責任を取ってくれる。そして、成果が出たらきちんと評価してもらえるという風土が根付いているので、失敗を恐れずに安心して新しい仕事に取り組むことができました。

入社以来、一貫して電池事業に関わってきましたが、当社とお取引のあるお客様は幅広い業界の大手企業ばかりなので、どの事業の仕事を担当しても大きなやりがいや手応えを感じることができるはずです。「顔料分散液」のポテンシャルは計り知れません。常に新たな可能性を探りながら、会社と共に、自分自身も成長し続けていきたいと思います。