
介護実習を始めるにあたって、不安を抱く学生さんは少なくありません。特に不安要素として挙げられることが多いのが「実習記録をきちんと作成できるか」。文章が苦手な学生さんほど、意識的に学ぶ必要があります。実習生として真剣に記録物に取り組んだ経験は、プロとして現場に立ったときにも必ず役立つはずです。
※本特集で取り上げる書類の書式や書き方は、あくまで参考として例示するものです。実際の書類作成で迷うこと、分からないことがあれば、担当教員や実習指導者などに相談してください。また、先生方の指導と本特集の内容で異なることがあれば、先生方に従ってください。
第2回 実習日誌の書き方
実習中、最も頻繁に記入・確認する書類の一つが実習日誌です。「記入欄が大きくてとても毎日は埋めきれない!」と尻込みする学生さんもいるかもしれませんが、上手に活用すれば実習をより実りあるものにできるはず。ここでは、実習日誌を分かりやすく充実した内容に仕上げるポイントをお伝えします。
実習日誌は「日記」ではない
実習日誌の大きな目的は、その日に掲げた実習目標を達成するため、何をどのように努力したか記録すること。一日の実習を通して何を観察・実践したか、そこから何を学んだかを書き込んでいきます。そうして貴重な学びを整理することにより、その日にできなかったこと、まだ自分に足りない能力を浮き彫りにし、成長の指針にすることができるのです。
もちろん、実習担当の先生方や指導者が目を通し、学生さんの指導や評価に役立てるという側面もあります。施設の指導者であっても、一日中ずっと実習生のそばにいるわけではありません。学生さんが実習中にどんな経験をし、何を感じたかは、実習日誌を通して知ることも多いもの。だからこそ、自分だけが読む日記のような書き方はNGなのです。
正しい目標設定ができれば日誌は怖くない
実習日誌の書式は様々ですが、「今日の実習目標」を記載する欄が用意されていることが多いでしょう。これは、最初に定めた実習全体の目標(ねらい)の達成に向けて、その日に実現したい「一日ごとの目標」です。積み上げていくことで最終的にゴールへ到達できるよう、スモールステップを意識した内容にするといいでしょう。実習日誌の記述も、この「今日の実習目標」に沿った内容を柱とします。目標をしっかりと意識して実習に臨んでいれば「書くことがない」という事態には陥りませんし、文章もまとめやすくなります。
本文では、目標を踏まえて詳細な事実の記録と、自分が行った判断およびその理由をしっかりと書くことが基本になります。このとき、客観性と具体性を大切にすることを心がけてください。ある場面で何があったかは、その場に居合わせた人でない限り、詳しい説明がなければ分かりません。特に文章量が少なくなりすぎてしまう人は、記載内容を簡略化しすぎていないか確認を。「この日に休んでいたスタッフにも理解してもらえるだろうか?」という視点で見直してみましょう。
読み手に伝わる文章作成の基本とは?
分かりやすく読みやすい文章のベースは5W1Hです。Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)という要素を意識することで、漏れのない正確な記録にすることができます。注意したいのは、When(いつ)、Where(どこで)といった細部が記憶から抜け落ちやすいこと。中でも「時計を見ていなかったから時間が分からない!」というケースはありがちなので、メモを取る際に時刻も書いておくといいでしょう。正確な時刻が分からなければ、「おやつの時間の直後に」といったかたちで表現することもできます。

ただし、たくさんの情報を一文に盛り込もうと無理すると、非常に読みづらい文章になってしまうので気を付けましょう。よくあるのが「~で、~で、~で、」「~し、~し、~し」というように、同じ接続詞でダラダラとつなげられた長い文章。どこが区切りになるか分かりづらい上、主語・述語の関係がとらえにくくなってしまいます。一文が何行にもわたっている場合は、どこかに区切れる場所がないか、主語と述語が対応しているか、もう一度確認することをお勧めします。
「優先的に書きたい場面」にフォーカスしよう
実習日に起こったことのすべてを、詳細に記録するのは不可能です。いくつかの場面をピックアップして本文を書き込むことになるでしょう。そこで重要なのが、どの場面を選択するかということです。基本的には、その日に掲げた目標に沿う部分を選択します。特に優先したいのが、利用者さんの状態に変化がみられた場面や、利用者さんから何らかの反応・訴えがあった場面。また、「指導者の言動で勉強になったこと」「指導を受けた点」「自分の観察で気付いたこと」なども積極的に記録したいポイントです。
このように特定の場面を描写していると、客観的な事実と自分の意見・考察がごちゃ混ぜになってしまうことがあります。両者の違いが読み手にはっきりと伝わるよう意識してみましょう。もともと記入欄が「出来事」「考察」のように分かれている場合は、それに沿って記入します。そうでない場合は、まずは事実を正確に書き、続く文章で自分の意見などを述べます。文章の終わりを「~と感じた」「~だと考えた」といったかたちにすることで、主観的な内容であることが分かりやすくなります。
利用者さんの様子が分かる細やかな描写を
客観的な事実を書くときも、ちょっとした心がけでより良い文章に仕上げることができます。例えば、数字・数値を盛り込んで具体的に書くことを意識してみましょう。「午後に何度も排尿があった」という書き方では、「何時間の中での出来事?」「実際には何回くらい?」といった疑問がたくさん浮かんでしまいます。「昼食後から帰宅時まで(13:00~16:00)の間に4回トイレ介助を行い、それぞれ少量の排尿を確認した」とすれば、読み手に伝わる情報量がぐんとアップします。