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書き方に困ったらチェック!介護記録の基礎講座

介護実習を始めるにあたって、不安を抱く学生さんは少なくありません。特に不安要素として挙げられることが多いのが「実習記録をきちんと作成できるか」。文章が苦手な学生さんほど、意識的に学ぶ必要があります。実習生として真剣に記録物に取り組んだ経験は、プロとして現場に立ったときにも必ず役立つはずです。

※本特集で取り上げる書類の書式や書き方は、あくまで参考として例示するものです。実際の書類作成で迷うこと、分からないことがあれば、担当教員や実習指導者などに相談してください。また、先生方の指導と本特集の内容で異なることがあれば、先生方に従ってください。

第5回 プロセスレコードの書き方

介護実習では、特定の場面をピックアップし、そこでの会話や思考過程を記録する「プロセスレコード」という書類を作成することがあります。あまり聞きなれない名称かもしれませんが、自身の関わりを振り返り、コミュニケーション能力をアップさせるために活用できる重要な存在です。さっそく、基本的な書式や書き方のコツを学んでいきましょう。

そもそも「プロセスレコード」とは?

プロセスレコードは、1950年代に米国の看護学者ヒルデガード・ペプロウが提唱した文書記録の方式です。患者さんと看護師の相互関係を振り返ることを目的に、看護教育の一環として用いられてきましたが、現在では介護分野でも広く活用されるようになりました。介護実習においても、自身が選んだ場面のプロセスレコードを作成し、それをもとに担当の先生方から指導を受けることがあります。

実習中、利用者さんと関わっている最中に、「この人は何を考えているのだろう?」「どうしてこのような反応をされるの?」といったことを客観的に理解するのは難しいものです。そこで、特に気になる場面や言動を絞り込み、決められた項目に沿って文章にしていくことで、実際の状況を書類上で「再現」します。そこから相手の言動の意味や自身の関わりの影響を検討することが、プロセスレコードを作成する大きな目的だといえます。

プロセスレコードの4要素

プロセスレコードの書式は学校や施設によって様々ですが、重要な要素として共通しているのが以下の4つの項目です。それぞれ、書き方のポイントをチェックしておきましょう。

対象者(利用者)の言動

相手の発した言葉や行動を、できるだけ客観的な事実に即して書く。必要な場合は、利用者さんだけでなく、施設職員などの関係者の言動も含めて記録する。

援助者(自分)の考えや思い

自身がそのときに感じたり、考えたりしたことを書く。相手の言動を受けて生まれた気持ちや、根底にどのような思いがあったかに着目する。

援助者(自分)の言動

上記の考えや思いを受けて、自身がどのような発言や行動をしたか記載する。

評価・考察

一連の流れを通して、どのようなことが考えられるかについて、当時に思ったことではなく、後から(書類作成の際に)気付いたことを記載する。

「対象者の言動」「援助者の考えや思い」「援助者の言動」は、時系列に沿って記載するようにしましょう。また、これらのほかに「場面・状況」「この場面を選んだ理由」「この場面から学べること」「自分の課題」といった項目が設けられていることもあります。

記載対象の場面はどう選ぶ?

こうしたプロセスレコードの性質を考えたとき、「実習中のどの場面を書くか」が重要だと分かると思います。学校や施設からの指定がなければ自由に選択できますが、せっかく書類作成するのですから、より多くを学び取れる場面を選びたいもの。

どれにすればいいか迷ったときは、「関わりが難しかった/うまくいかなかった」「対応に苦慮したり、悩んだりした」「工夫した結果、想像よりスムーズに関われた」など、意外性のあった場面を選ぶことをお勧めします。実際のやり取りを思い出す中で、なぜうまく関われたのか/関われなかったのかを深く検討することが可能になるでしょう。

コツは「できるだけそのまま」を忠実に書くこと

実習日誌などでは、実際の出来事を端的にまとめて書くこともあります。一方でプロセスレコードは、それぞれの言動をできるだけそのまま、抽象化せず記録することが重要です。お互いの言動一つひとつを忠実に再現し、やり取りの経過をありのままに書いていきましょう。実際にあった発言を記載するときは、「」(かぎかっこ)を用いると区別が付きやすいです。また、相手の表情や反応、しぐさなども描写してみましょう。

思い出しながら日誌を書こうとしている実習生

再現度の高いプロセスレコードにするためには、その場面を経験してから、できるだけ早いタイミングで書き出すことも重要です。要点は現場でメモできたとしても、そのときの状況や自身の思いなどの記憶は、時が経過するにつれて薄れていくもの。「ここだ!」という場面に出合ったら、早めの書類作成を心がけてください。すぐに着手できない場合は、ノートなどに詳細を書きとめておくといいでしょう。

自身の「気付き」につなげて活用しよう

プロセスレコードはシンプルな構成ですが、自身の関わりを的確に振り返ることができる便利なツールです。自己分析を通して自らの支援の仕方を検討できることはもちろん、「また同じようなことがあったらどうすべき?」と考え、次につなげることもできます。自身が成長する絶好の機会になるととらえ、前向きに作成したい書類の一つです。

また、プロセスレコードは、実習中にだけ活躍する書類ではありません。難しい場面や気になる場面に出合ったとき、プロセスレコードを作成しながら振り返りを行う介護職は少なくないのです。プロとして現場に立ってからも役立つ書類として、ぜひ今のうちから使いこなせるようになっておきましょう。

プロセスレコードの記入例とポイント

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プロセスレコード
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