U・Iターン就職の基本知識

U・Iターン就職とは

20代の若い世代が「地方移住」に強い関心

青空と町
(画像素材:PIXTA)

今、20代の若い世代が「地方移住」に強い関心を示しています。国土交通省の発表によると、約5,000サンプルを対象に国民意識調査(アンケート調査)をした結果、三大都市圏に住む20代の若者は、4人に1人が「地方移住に関心がある」と回答。20代の関心は、全世代の中でも特に高い数値を示しており、10年前の約5倍にまで増えています(「平成29年度 国土交通白書」より)。その背景には、人とのつながりや居場所を求める価値観の変化が関係しているのかもしれません。

就活生にとっても、地方移住は選択肢の一つです。社会人として働くステージは、大都市の企業だけではありません。日本全国には、さまざまな企業があります。故郷に帰って就職する、あるいは好きな地方で働くという選択肢もあります。就職とは、人生の新しいスタートラインに立つこと。今後の人生を見据えて企業選択の幅を広げ、Uターン就職やIターン就職、J ターン就職も選択肢に加え、視野を広げて考えてみましょう。

U・I・Jターン就職の違い

・Uターン就職

地方で生まれ育った人が都市部の学校に進み、卒業後は出身地に戻って就職することです。「宮城県石巻市で生まれ育ち、東京の大学に進学。卒業後は石巻に帰って就職」といったケースが当てはまります。東京で培った知識や経験は、地方でも生かすことができます。故郷に戻ってきた若い世代を歓迎してくれる地方企業も多いでしょう。

・Iターン就職

出身地とは異なる地方に移住して就職することです。「東京で生まれ、東京の大学に進んだが、卒業後は石川県に移住して金沢市の企業に就職」といったケースが当てはまります。大学の研究テーマが生かせる企業が地方にあった、憧れの街で暮らしながら働きたい、豊かな自然や穏やかな土地柄に魅力を感じてなど、さまざまな動機でIターン就職をする人がいます。

・Jターン就職

地方で生まれ育った人が都市部の学校に進み、卒業後は出身地に近い地方都市に移住して就職することです。「宮城県石巻市で生まれ育ち、東京の大学に進学。卒業後は宮城県に帰って、仙台市の企業に就職」といったケースが当てはまります。希望する就職先が、故郷にあるとは限りません。故郷に近い地方都市で働くことも、選択肢の一つです。

Uターン就職を希望する理由

では、先輩たちはどのような理由でUターン就職をしているのでしょうか。ここではマイナビが、2023年3月大学卒業予定者を対象に行ったUターン就職に関する意識調査の結果を見てみましょう。

地元就職を希望する理由

「地元(Uターン)就職を希望する理由」として最も多かった回答は「(自分の意思から)両親や祖父母の近くで生活したいから」(51.6%)。次いで「実家から通えて経済的に楽だから(45.9%)、「地元(Uターン先)での生活に慣れている」(41.6%)、「地元の風土がすきだから」(37.8%)、「仕事とプライベートを両立させたいから」(31.5%)、「地元(Uターン先)に貢献したいから」(23.0%)などが多く挙げられていました。

ライフステージの変化まで視野に入れて考えよう

就職は、人生の一大イベントです。就職先を決めるというこの重要な機会に、いま一度、自分の生き方について先々のことまで真剣に考えてみましょう。就職が決まったら、これから先、何十年も同じ会社で働き続けるかもしれません。そうしたときに、あなたはどんな生活や環境を望みますか?

今、あなたが大都市に住んでいるとしたら、この生活環境の中で一生暮らしていきたいと思いますか?また、結婚して子供ができたときのことや、親の介護のことまで含めて考えてみましょう。長い人生には、こうしたライフステージの変化があります。20代の多くの先輩たちが地方移住に関心を示しているのは、大都市で働くことや暮らし続けていくことに疑問を感じるようになったからかもしれません。

また近年は、働き方改革や、新型コロナウイルス感染症を発端としたシステム整備などによって、居住地問わずのフルリモートワーク前提での社員を募集する会社も話題になっています。今後は、地方に暮らしながら、東京など大都市の企業に勤務する形態も広がるでしょう。

大学生である今はまだ、何年も先のことまで想像するのは難しいかもしれません。しかし、育児や介護などの問題には、いつか必ず直面することになります。就職という社会人としての第一歩を踏み出すこのタイミングで、将来のことをきちんと深く考えてみましょう。どのような場所で働きたいのか、どのような環境で子供を育てたいのか、老齢になった親の面倒はどうやってみるのか。大都市と地方、自分はどちらで生きていきたいのか。就職活動は、自分のライフビジョンについて考える最初の機会になります。

どこで、どのように生きていきたいのか、自分の価値観を改めて問い直してみましょう。その選択肢の一つとして、U・I・J ターン就職という道があります。

監修者プロフィール

沢渡 あまね
作家/ワークスタイル&組織開発専門家。『組織変革Lab』主宰。DX白書2023有識者委員。あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/浜松ワークスタイルLab所長/国内大手企業人事部門顧問ほか。日産自動車,NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で,働き方改革,組織変革,マネジメント変革の伴走・講演および執筆・メディア出演をおこなう。著書は『職場の問題地図』『新時代を生き抜く越境思考』『どこでも成果を出す技術』『バリューサイクル・マネジメント』『仕事ごっこ』『業務デザインの発想法』(技術評論社)ほか多数。
沢渡 あまね

ページTOPへ