理系学生の生きる道

POINT1
大学院進学? それとも就職?

就職の際、学部卒がよいか、大学院修了(修士/博士)がよいのかは、大学院進学率が高い理系だからこそ判断に迷うポイントです。ただし、これはどちらかが一方的に有利なものでも不利なものでもありません。それぞれ、キャリアの特質を客観的に見て、自分の将来を考えましょう。

INDEX

CHOICE1
学部卒で就職する

理系の場合は大学院に進学することも決して珍しくありませんが、数からいえば学部卒で就職する人が多数です。大学院修士課程に進むより2年早く社会人になるという年齢要素は、キャリア決定においても意味があります。とくに日本では、製造業を中心に、社員の教育は会社で行うというスタイル企業が少なくありません。2歳若く、社会に出て実務経験の中で成長することは学部就職者が戦力として企業に貢献する上での優位性です。

企業が評価する理系の能力

理系出身者が就く職種の数からいえば、生産・技術系職が圧倒的に多数を占めます。理系学部卒者はこの理系職の本流ともいえる存在です。いち早く会社に慣れることで、求められる成果に貢献できるチャンスも増えることになります。企業は適正な収益を確保しつつ、モノやサービスを社会に提供することで経営されます。経営に欠かせない数値管理において、理系の計数能力は最も分かりやすい優位性を発揮します。実験や勉強でも、対象を選び、問題意識を持って取り組んできた観察~結果分析というプロセスは、企業活動におけるPDCAサイクルと同様の思考です。しっかり勉強した理系学生は、企業でも大いに活躍してくれるだろうという期待を集めます。

学部卒で就職するメリットとは

修士課程修了者よりも2年早く入社し、実務を経験できるのは大きなメリットです。たとえ博士課程まで進んだとしても、大学の研究と企業の実務は同じではありません。会社環境にいち早く慣れ、会社の求める生産性をに応えるための経験を積むことは成果を出す上でも、自分自身の成長にとっても有益です。
とくに専門分野外就職を選択する場合は、早く実務経験を積むことが1つの優位性といえます。

「院試に落ちたから就職する」という理由はNG

本当は大学院に進学したかったが、院試に落ちたので就職することを決めたという人もいることでしょう。しかしそれをそのまま志望動機などでストレートに述べるのは避けるべきです。「第1志望がだめだったから第2志望で我慢する」というのは真実かも知れませんが、相手企業に対しては失礼に当たります。理由はどうあれ、就職すると一度決めたからには「自分が従事することが、志望先企業の成長に役立つ」という根拠をしっかり説明できるように準備し、就職に臨むのが礼儀作法と心得ておきましょう。
大学院進学率の高い大学の場合でも、「早く社会で活躍したいから」という理由で学部就職する学生は相当数がいますので、企業側の受け入れ体制も整っているはずです。

学部卒でも研究開発職に就きたい!

研究開発職を希望する理系学生は少なくありませんが、いわゆる大手企業や有名企業では修士以上を採用するのが主流です。中堅・中小企業であれば学部卒生のチャンスも増えますので、過去に研究開発職に就いている学生の状況などを含め、しっかり企業研究をして臨みましょう。ベンチャー企業など一人何役もこなさなければならない職場など、将来の研究開発職への可能性があるかも知れません。
なお、企業の研究開発職とは、会社の求めるテーマや対象について、会社の目指す成果を求めていきます。興味を持って取り組んでいる大学の研究室の内容を、そのまま継続できるというものではなく、あくまで仕事で取り組む職務であることを忘れないでください。

CHOICE2
大学院に進学する

大学院修了者は学部生よりも2年長く、より専門的な研究を行う分、高い能力が期待されます。一方2年間という限られた期間で単位を取得し、研究も進め、就職活動もするなどかなり忙しくなります。スケジューリングは学部生以上に綿密に組む必要があります。

研究職であれば、院卒は有利?

研究開発職は修士以上を条件にする企業が、大手を中心に大半を占めています。そのため、研究職に就くのであれば、大学院に進学するのは有利だといえるでしょう。しかしそれは研究職としての採用を保証するものではありません。全国の大学院生が企業研究者に応募してくる中での選考をくぐり抜けた人だけが研究職に就くことができます。
研究職以外の職務において、優秀であれば学部生でも採用されるため、とくに院卒者が優位とはいえません。しかし高度な研究テーマの設定やそれに取り組んできた院生の経験や特質は、高い専門スキルとしてもちろん評価されるでしょう。
初任給については学部卒と院卒で、数万円ほどの差が出る会社もありますが、現在の人事制度では、横並びの給与ではなく個人業績の評価連動部分を大きくする場合が多く、初任給の差が特別に有利不利の判断材料にはならないでしょう。入社後の出世も同様で、会社員は実績が最も重要ですから、入社後の成果を出すことが何よりも重要です。

専門分野と仕事のつながり

大学院に進んだ場合はより専門性の高い研究に取り組むため、その専門分野を生かした仕事を希望する人が多いといえます。ただ分野によっては業界と密接なものもあれば、そのまま仕事にするのは難しかったり、密接な業界があってもかなり限られた市場しかなかったりして、就職の機会が限られている場合もあります。
専門分野が業界と直結しない場合でも、大学院まで行って鍛えた知性と思考能力は有効な武器になります。専門の研究を通じて深い思考や課題の発見、そして、結果の分析を繰り返した経験は、どんな業界にも応用できる能力を鍛えてきたともいえるのです。しっかり研究に取り組むことは、就職においても職務遂行能力としてアピールでき、極めて有効です。

研究生活と就活のスケジューリング

忙しい修士課程では、スケジュール管理が絶対的に重要です。とくに経団連加盟企業を中心に、3月1日から広報活動を解禁する企業が多いので、その前までにどの企業へ応募するのかを決めておかなければなりません。出だしでつまづいてしまうと希望する企業(とくに人気企業)の応募がすぐに締め切られたり、先行する友人の結果に動揺したり、やりづらい環境を生む原因となります。
3月1日にスムーズに行動するためにも、研究の進捗状況や学内スケジュールなどはしっかり把握し、それまでにできる就職活動の準備を進める必要があります。中には3月1日よりさらに早く選考を始める企業もありますので、志望先企業が決まったら、その選考状況は必ず会社ごとに確認する必要があります。

博士後期課程へ進学した場合の就職

博士後期課程学生を採用する民間企業は増えています。ただし単に博士号を取得したから採用される訳ではありません。とくに自分の研究テーマや領域だけにこだわって、会社の方向性や業務を理解せず、収益性への貢献を考えないような人材は求められていません。
博士学生は、専門的研究で鍛えた知性に加え、海外での研究発表や共同調査・研究といったグローバルな活動経験もアピール材料になります。そして博士が活躍できる場は、修士同様研究開発部門だけに限らず、生産から営業・マーケティングまで幅広い可能性があります。しっかり企業研究と仕事研究をすれば、その可能性はさらに大きく広がります。研究で鍛えた能力と知性が、いかにして企業組織の発展に寄与できるかをきちんとアピールできるように準備をし、さらに専門分野の応用や転用などを柔軟にとらえ、選択肢を増やす努力が重要です。

先輩の声

院卒:院進学後の就職活動は…?

大学院で学んだため、推薦ももらいやすいし、自由応募でも技術力に目をつけてくれる企業が多かった。そのかわり、学部の卒業生と違って専門的なことを求められるので、自分の学んだことに対して自信を持てるようにしておいた方がいいかも。頑張ってください。
【メーカー 自動車・輸送用機器 内定 男性】

理系大学院生は、学業のピークと就活のピークがかぶるため、一時期は非常に忙しい時期が続きます。そのため、できることは早めにやっておくことが大切でしょう。
【情報 ソフトウエア・情報処理 内定 女性】

学部卒:視野を広く持って可能性を広げよう!

自分の夢があるのならば、ぜひチャレンジするべきだと思います。自らの専門分野と合わないとか、自分の経験と業界との関連のなさに尻込みしてしまうのは、とてももったいないです。現に私は、最初は「自分なんかが…」と思っていた企業に思い切ってエントリーした結果、内定をいただくことができました。
【メーカー 電子・電気機器 内定 男性】

私は推薦でしか活動をしなかったのですが、できるならさまざまな業種の企業を調べてから動くべきだったと後悔しました。
【メーカー 化学・石油 内定 女性】

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