グッドデザイン賞

就職活動で
障がい者手帳は使う? 使わない?

メリット・デメリットを徹底解説

就職活動で障がい者手帳を使うか、使わないか。
これは、障がいがありながら就活をした方のほとんどが一度は考えたことがある問題です。
これから就職活動を始める障がいがある学生の皆さんに、そのメリット・デメリットをご紹介していきましょう。

障がい者手帳を使った就職活動

まずは、障がい者手帳を使った就職活動のメリット・デメリットをご紹介していきたいと思います。

手帳を使うメリット

障がい者手帳を使用する就職活動のメリットは、一言で言えば「障がい者雇用枠で就職活動を進めることができる」ことです。
障がい者雇用とは、障がいのある方が社会で暮らし、活躍できるように、企業が障がい者を優先的に採用する制度のこと。企業には一定数の障がい者を雇わなくてはいけない(全社員の2.3%)というルールがあるので、就職して企業で活躍したいと考えている障がいがある学生の皆さんにとっては追い風が吹いている状況ともいえます。
また、障がい者雇用の枠でエントリーし、入社が決まれば(障がい者雇用枠)、自分の障がいや病気などに対する配慮を求めることができます。例えば、通院や入院などが必要なときに休みや遅刻・早退を取得できる、仕事を進めるうえで必要なツールや機器を準備してもらえるといった、それぞれの障がいに合わせた働きやすい職場環境を企業側が提供してくれます。
職場の上司や先輩社員も、障がいがある方が配属されることを事前に把握しているので、相談しやすい雰囲気を作ってもらえたり、障がいが原因で難しい仕事を回避してもらえたりと細かく配慮してもらえます。

チェックポイント

  • 障がい者雇用枠で就職活動を進めることができる
  • 自分の障がいや病気などに対する配慮を求めることができる

手帳を使うデメリット

反対に、障がい者手帳を使用する就職活動のデメリットは「障がい者雇用枠による制限が発生する」ことです。
障がい者雇用枠での募集職種は事務職や軽作業などの職種が多く、総合職でチャレンジしたいと考えている方にとって、自分の希望に合った求人情報と出会う確率が低くなるかもしれません。また、障がい者雇用を実施していない企業もあるので、エントリーしたいと思った企業にエントリーできないことも考えられます。
企業によっては、障がい者雇用枠で入社する方を、まずは正社員ではなく契約社員として採用し、試用期間(働けるかどうかの確認期間)を設けることがあります。この結果、同期入社のメンバーと給与や待遇に差が生まれたり、半年後や1年後もその会社で働き続けられるかという不安が生まれたりというデメリットが発生します。

チェックポイント

  • 障がい者雇用枠による業務内容の制限が発生する
  • エントリーしたいと思った企業にエントリーできない可能性がある
  • 企業によっては、給与や待遇に差が生まれる可能性がある

障がい者手帳を使わない就職活動

ここまでは障がい者手帳を使った就職活動のメリット・デメリットをご紹介してきましたが、今度は障がい者手帳を使わない就職活動のメリット・デメリットを整理していきます。

手帳を使わないメリット

障がい者手帳を使わない就職活動のメリットは「すべての求人先にエントリーできる」ことです。言い換えれば、一般的な就職活動(一般枠)が進められる、周りの同級生と同じように就職活動を進められるということです。
障がい者雇用枠など気にすることなく就職活動が進められるので、興味がある企業にエントリーすることにも、説明会や面接に参加することにも、何の制限もありません。自分の意思がそのまま就職活動に反映されますし、結果にもつながります。
むしろ、障がい者のために整備された障がい者雇用枠ではなく、一般枠での選考をくぐり抜け、内定を勝ち取ったならば、それは自分に自信を持てる結果と言えるかもしれません。

チェックポイント

  • チャレンジしたい仕事に挑戦できる
  • 周囲の就職活動生と同じように就職活動ができ、自信につながる

手帳を使わないデメリット

では、障がい者手帳を使用せずに就職活動を進めるデメリットは何かといえば、「障がい者雇用枠での採用を放棄する」ということです。
説明会や面接の場面で、障がいに対する配慮を求めることは難しい場合もありますし、入社後の職場での配慮や工夫を求めることが難しくなります。「障がい者だから」という理由で準備してもらえることを自ら放棄することになるのです。
障がい者雇用枠での入社であれば、障がいに対する配慮は必須項目ですが、一般枠での入社となれば、それぞれの企業の判断に委ねられます。障がいに対する配慮が望みづらい、障がいを周囲に打ち明けられずに自分で抱え込むといった、入社後に細かな問題が発生してしまうことも、障がい者手帳を使用しない就職活動のデメリットといえます。

チェックポイント

  • 障がいを配慮してもらう権利を放棄することになる
  • 周囲に打ち明けられずに、入社後に自分で抱え込む可能性がある

体験エピソード

男性のシルエット

手帳を使って就職活動
高校在学中に発達障がい(ADHD)があることが分かったSさん。
「大学の講義の選択やスケジュール管理などに苦労した経験から、就職活動に困難さが発生するだろうと予測。社会人になるともっと大変になるかもしれないと思い、障がい者雇用枠での入社を決意し、就職活動に取り組みました。
企業の面接官から、同じような障がいがありながらも働く障がい者社員の先輩エピソードや職場での配慮などを聞き、就職活動を進めながら、自分の障がい理解も深まりました。第1志望の企業から内定が取れなかったものの、入社した企業では自分から必要な配慮項目を伝え、企業側も準備してくれています。
発達障がいは一瞬では障がい者かどうか伝わらないので、障がい者雇用枠で就職活動をすると決めて良かったと感じています」

女性のシルエット

手帳を利用せずに就職活動
生まれつき股関節に障がいがあるFさん。
「先天性股関節脱臼という障がいがあるが、日常生活で特別な配慮が必要というわけではなく、また、周囲にも同じ症例でありながら、障がい者手帳を持っている人、持っていない人がいるため、障がい者雇用を意識することなく、就職活動を進めました。
一般枠での就職活動、そして入社のため、通院の必要がある場合は有給休暇を取ることで対応。周囲には障がいといわず、生まれつきのケガのようなものと伝え、認知してもらっています。重たいものは持たなくていいよといった声かけを自然にいただいているので、現状、職場に不満などはありません」

男性のシルエット

途中から手帳を利用して就職活動
生まれつき心臓に障がいがあり、ペースメーカーを入れているFさん。
「フットサルサークルに所属し、週4で塾講師のアルバイトをするなど、アクティブな性格のため、一目見たかぎりでは、障がい者には見えないと思います。ただ、年に数回の通院の必要があり、数年に1回ペースメーカーの取り替え等の手術入院をしなくてはならないという配慮が必要でした。
就職活動の開始時は、障がい者雇用の存在を知らず、一般枠での就職活動を進めましたが、たまたま大学のキャリアセンターで就職活動相談会が実施された際、自身の心臓のことを話すと、障がい者雇用でエントリーすることを薦められました。
それ以降は、障がい者雇用でのエントリーと一般枠でのエントリーを併願し、雇用体系や仕事内容が自分に合っているほうの選考フローを進みました。一般枠では、面接が進むにつれて、自身の障がいのことを話すという自分なりのやり方を確立しています。最終的には、障がい者雇用枠でエントリーした企業に入社したが、一般枠での待遇、仕事内容と同じ条件で仕事しています」  

まとめ

ここまで、障がい者手帳を使う・使わないという選択のメリット・デメリットやその事例を紹介してきましたが、前提としてこの選択に悩む方は、他者から見てすぐには障がい者と分からない学生に限られてくるでしょう。精神的な障がい、または心臓にペースメーカーを入れている、人工肛門を装着しているといった身体的な障がいなどが当てはまります。
自分が障がい者であることがすぐには伝わらないことは、就職活動において有利に働く面もあれば、不利に働いてしまう面もあります。ただ、おすすめとしては「入社後の働きやすさ」に意識を向けて選択してほしいと考えます。
事例にあるように、障がい者であっても一般枠と同じ条件で採用し、障がいに対する配慮を障がい者雇用枠と同じように準備するという企業も増えてきています。「我が社で活躍できる人材だ! 期待しているよ!」という評価を受け、社会に羽ばたく学生が増えることを楽しみにしています。  

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