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つなぐ。始まる。

つなぐ。始まる

Izmit Bay Crossing Bridge Project Story

トルコ・イスタンブールの南東およそ50kmに位置するイズミット湾。
この南北をわたる吊橋『イズミット湾横断橋』を建設したのがIHIインフラシステムだ。
全長約2,682mとトルコでは最長、世界でも第4位(2016年6月の開通時点)の長さを誇る
吊橋建設という巨大プロジェクトの全貌にせまる。

トルコ・イスタンブールの南東およそ50kmに位置するイズミット湾。
この南北をわたる吊橋『イズミット湾横断橋』を建設したのがIHIインフラシステムだ。
全長約2,682mとトルコでは最長、世界でも第4位(2016年6月の開通時点)の長さを誇る
吊橋建設という巨大プロジェクトの全貌にせまる。
Before
After

Before

イズミット湾横断橋の位置

Chapter01

トルコ最長の吊橋建設に向けて、
巨大プロジェクトが始まった

2023年に建国100周年を迎えるトルコ共和国。経済成長著しいトルコでは、“Vision 2023”を国策に掲げ、国を挙げてさまざまな分野での発展を目指していた。この“Vision 2023”実現において「最初の完成物のひとつとなる」とエルドアン大統領が語ったのが『イズミット湾横断橋』である。トルコにとって、この吊橋は今後の発展の命運を握る重要なプロジェクトのひとつと位置づけられていたのだ。
『イズミット湾横断橋(正式名称:オスマン・ガーズィー橋)』は、トルコ最大の都市イスタンブールと第3位の都市イズミルを結ぶ高速道路の一部として計画された。そのスケールは全長2,682m、主塔高252m、主塔間1,550m。完成すればトルコ最長、主塔間の長さでは世界第4位の吊橋を建設するという国家規模の巨大プロジェクトである。IHIインフラシステム(以下IIS)は、この巨大プロジェクトを3年6カ月という短期間で実現するため、その総力を結集して臨んだ。

IHIが1980年代に施工した第2ボスポラス橋

Chapter02

トルコでの高い知名度と
短工期プランで受注を果たす

『イズミット湾横断橋』は、BOT案件としてトルコ・イタリアのJV(ジョイントベンチャー)が受注し、そのJVから建設が発注される方式がとられた。BOTとは、民間事業者が公共施設の建設から、運営、維持、管理までを引き受けて、一定期間の事業終了後に所有権を国や地方自治体に譲渡する事業形式である。つまり建設費を完成後の運営による収益で回収することになるため、民間事業者にとっては建設期間を短期間に抑えて運営期間を長く確保すればするほど収益が上がる。当然、発注者であるJVは、より短期間で施工できる業者を選ぶ。
受注に向けたライバルは中国や韓国の企業だ。IISは詳細な検討を重ね、短工期で建設するプランを提案。さらにIHIグループとトルコの関係は古く、1974年、98年には新・旧ゴールデン・ボーン橋、1988年には第2ボスボラス橋の施工実績があり、トルコの交通インフラ整備に大きく貢献してきた。こうした実績はトルコでも広く認知されており、培ってきた現地政府や企業との信頼関係も後押しとなり、2011年9月、受注を勝ち取った。

主塔基礎の製作風景

Chapter03

世界初となる「免震」構造の
吊橋実現に向けて

『イズミット湾横断橋』建設に必要なコンクリート、鋼材は膨大なスケールになる。橋梁建設において、工期に与える物量の影響は大きく、いかに構造を最適化し物量を抑えた設計が出来るかがプロジェクトの成否を握る。それだけではない。施工の安全性や、将来の維持管理の容易さをも押さえる必要があり、安全・安心・品質のすべてを確保することがミッションとなった。
たとえば、耐震性である。トルコは世界有数の地震国であり、1999年にはイズミット湾においてM7.5のコジャエリ地震が発生し、17,000人以上の死者が出ていた。橋梁は、緊急車両の往来など有事において重要な社会インフラとなる。『イズミット湾横断橋』には、大地震にも耐える高度な耐震性と100年以上の耐久性が求められた。工期と品質を担保するため、IISは主塔基礎となる構造物に、世界でもほとんど例のない免震構造を採用。吊橋への適用は世界初であり、画期的な構造の吊橋実現を目指した。架設から運用までの長期間にわたり、自然環境や事故などさまざまな状況を想定しながら分析・予測を行い、ときには大胆・斬新なアイデアを採用して設計検討を進めた。

After

Construction Summary

  • 【工事概要】
  • 発 注 者
    トルコ共和国運輸海事通信省道路総局
  • 事 業 者
    Otoyol Yatirim ve Isletme A.S.
    (BOT事業者)
  • 吊橋施 工 者
    IHIインフラシステム
  • 工 事 名
    イズミット湾横断橋建設工事
  • 工事範囲
    吊橋部の上下部工の設計、製作、
    架設一式
  • 橋  長
    2,682m
  • 主 塔 高
    252m
  • 中央径間
    1,550m(世界第4位の吊橋)
  • 幅  員
    35.93m
  • ※BOT(Build Operate Transfer):民間事業者が公共施設の建設を行い、維持・管理・運営し、
    事業終了後に所有権を国や地方自治体に譲渡する事業方式。
Entry

After

トルコの工場での主塔パネル製作

Chapter01

IISの技術力で、
現地での包括的な生産管理を実現

2012年7月、現地での準備工事が始まった。現地事務所や宿舎、護岸や吊橋建設に必要な設備の建設・整備からスタートし、続いて、吊橋の基礎を製作する仮設ドックの建設が進む。そして2013年1月、本契約が結ばれ正式着工となった。建設に携わるIISの社員たちは、広大なイズミット湾を前にその使命の大きさを胸に刻んだ。
7月から吊橋の主塔や橋桁の製作が始まった。主塔と橋桁を合わせた鋼重量合計は54,000tである。現地のサブコントラクターに一括発注し、2工場での製作体制を敷いたが、大多数のトルコ業者には吊橋の施工経験がない。そのため、日本から技術者を派遣して、技術指導のみならず製作要領書の作成や工場のレイアウト計画まで含めた品質・工程管理を徹底。海外工場での包括的な生産管理を実現した。またプロジェクト遂行にあたり、多くの専門下請会社を起用したが、現地作業員にとっては不慣れな作業も多く、途中工程の遅れが生じたこともあった。しかし、IISは製作方法や体制、管理方法に試行錯誤を繰り返し、作業員のパフォーマンス向上を実現、巻き返しを図った。2014年12月には主塔を、2015年6月には橋桁の製作を完了した。

地上110mにおける主塔ブロックの架設

Chapter02

厳しい気象条件にも総力を結集して
困難を跳ね返す

工場で完成した主塔のブロックは、海上輸送により架設地点へと運ばれ、2014年7月には主塔の1段目が架設された。主塔下部はブロック、上部はブロック側面のパネルがクレーンで引き上げられ、精度を確認しながらタワーとして積み上げられていく。この光景は、橋梁建設に関わるIIS社員にとっても、現地作業員にとっても感慨深いものとなっただろう。だが、プロジェクトはこれから佳境に入る。
主塔が完成すると次はケーブルの架設となる。まずはケーブル架設の足場となるキャットウォークが引き出された。メインケーブルの全長は約3,020mという長さで、直径約6mmの鋼線を束ねたストランドを一本一本引き出していく。昼夜を徹した作業により、2015年12月には100本以上のストランドを束ね、直径約800mmのケーブルが完成、橋桁の架設へと進んだ。工事は順風満帆だったわけではない。冬期のイズミット湾は荒れることもあり、強風により作業の中断を余儀なくされることもあった。しかしIISは、日本からも応援を派遣するなど総力を結集。過去の吊橋工事と比較しても群を抜いたスピードで、2016年6月末の開通に向けてラストスパートをかけた。

吊橋完成を祝して

Chapter03

世界中を「つなぐ」。「始まる」。
それがIISの使命

2016年6月30日、トルコで最長の橋となる『イズミット湾横断橋』の開通式が、トルコ共和国エルドアン大統領をはじめ、多くのトルコ政府要人、日本の駐トルコ共和国日本国特命全権大使、在イスタンブール総領事などの出席のもと盛大に執り行われた。
橋が架かることで、地元はもちろんトルコ国民の暮らしは確実に豊かになる。『イズミット湾横断橋』の開通により、従来はフェリーの利用で約1時間を要していたイズミット湾の通行は約6分へと大幅に短縮した。さらに本橋を含めた約420kmの高速道路が開通すれば、イスタンブールとイズミル間の移動時間も最大10時間から約3.5時間へと短縮され、モノや人の流れが劇的に変わることになる。人々の暮らしだけでなく、企業の誘致や観光振興といった地域活性化、経済発展まで、トルコのさらなる発展への貢献が大きく期待されている。 このプロジェクトは、IISにとっても意義のあるプロジェクトとなった。トルコ最長、世界第4位という巨大な吊橋を、IIS単独で建設したという実績とそこで得た経験は、未来に「つなぐ」新たな「始まり」となった。IISは、これからもさらなるグローバル展開に挑戦し、世界の発展に貢献していく。

Before

Construction Summary

  • 【工事概要】
  • 発 注 者
    トルコ共和国運輸海事通信省道路総局
  • 事 業 者
    Otoyol Yatirim ve Isletme A.S.(BOT事業者)
  • 吊橋施 工 者
    IHIインフラシステム
  • 工 事 名
    イズミット湾横断橋建設工事
  • 工事範囲
    吊橋部の上下部工の設計、製作、架設一式
  • 橋  長
    2,682m
  • 主 塔 高
    252m
  • 中央径間
    1,550m(世界第4位の吊橋)
  • 幅  員
    35.93m
  • ※BOT(Build Operate Transfer):民間事業者が公共施設の建設を行い、維持・管理・運営し、
    事業終了後に所有権を国や地方自治体に譲渡する事業方式。
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