
清水さんが社会人としてのスタートを切ったのは、同社の研究開発型生産拠点である西丹波工場。入社以来、煎餅やおかきなど米菓の製造に携わっている。
「入社後は生地の『焼き工程』、餅生地ラインの『蒸練工程』を経験した後、2012年の9月から新しく導入された餅生地ラインの『のし工程』を担当。ローラーで薄く伸ばされた生地をお煎餅の形に型抜きする工程の管理が主な業務です。季節・気温などその時々の諸条件に注意を払い、常に生地の状態をチェックしつつ重量や水分量の数値を微調整しながら、ベストな状態に仕上げていきます。生地づくりは品質を左右する重要な工程。焼きやすく、不良が少ない生地づくりを心がけています」と話す清水さん。
とはいえ、生地は生き物。同じ生地、同じ機械でつくっても、全てが同じように焼き上がるとは限らない。最終的には生地を手で触った感触で判断する職人技のような仕事に難しさとやりがいを感じている。


生地づくりは生産ラインの上流に位置する重要な工程。その後の焼き具合や煎餅の仕上がりにも大きく影響してくる。「焼き工程」から生地ラインの「蒸練工程」へと担当が変わった時は戸惑いの日々だったという。
「形になったものを焼くのとは違い、まだお煎餅の原型ができていないところから生地をつくりあげていくのは非常に難しかったですね。餅を蒸して出しても、最初はその餅の良し悪しもわからない。水分量は合っているのか、堅いのが良いのか柔らかいのが良いのかも全くわからず、毎日が試行錯誤の連続でした。後工程で不良が出ないように、餅を触った感触だけで水分量を調節していく先輩の姿を見て、自分の力不足を痛感しました。でもそれだけに奥が深いし、挑戦しがいのある仕事だとも思いましたね」
清水さんは生地の「蒸練工程」を経験したことにより、この仕事には理論に基づいた経験と職人的な感性が重要なことを身を持って感じたという。
職人技が求められる米菓づくりには様々な苦労を伴うが、ヒット商品や話題の商品の生地づくりに携われるのは技術者として大きなやりがいだという清水さん。今生産を手がけているのはロングセラー商品の「嵯峨乃焼」だ。
「自分がつくった商品を家族や友人に食べてもらい、『本当においしい』『いつも食べているお煎餅と全然違う』と言ってもらうとすごく嬉しいですね。また、明日から頑張ろうという意欲が湧いてきます。まだまだ新しい餅生地ラインを上司のサポートなしで管理するのは難しいですが、一日も早く一人で任されるように頑張りたいです。夢は、人に感動を与え、幸せにできる新商品を開発すること。そのために様々な経験を積み、職人としての技術と感覚を磨いていきたいですね」
上司・先輩からの手厚い指導を受けながら米菓職人として、機械系エンジニアとして着実に成長を続ける清水さん。また一歩、確かな進化を遂げようとしている。
