
村上さんは入社以来、主に大阪設計課に所属。世界トップクラスのシェアを誇るステンレス製マグネットポンプの設計に携わった。当時は、石油化学業界のプラントで使われる大型製品が大半。10台、20台とまとめて依頼が来たが、材料や大きさ、能力、配管などがすべて異なった。仕様書だけでも相当な量だ。要求は詳細に書かれていないため、特にプラントの場合、海外仕様を把握していなければ仕事にならなかったという。
「大型製品は、軸受の種類が多く、仕様も特殊。それに合う部品を設計するだけでも大変でした」
設計は、生産工程にも配慮が必要だったが、これは京都設計課での経験が役に立った。およそ1年間、汎用性の高い製品を顧客仕様にカスタマイズする設計を担当。さらに貸し出し用大型ポンプの分解・組み立て・検査にも携わった。
「京都で実際に製品に触れ、工場でモノづくりの工程を見ることで、三次元をイメージしながら図面を描けるようになりました」


最も成長を実感したのは10年目。ヨーロッパに輸出する際に必要な安全規格CEマークとATEX仕様の製品を任されたときだ。危険性を低減するリスクアセスメントを行ったが、納品までには通常の倍の時間を費やした。
ポンプは、電動モーターに接続された軸と一緒に内部のインペラー(羽根車)が回転し、液体を送る構造になっている。この回転によって、万が一、熱や静電気が一定量以上発生すれば、引火の恐れがある。こうした仕様に関することや実際に工場で稼働した際のリスクについて一つひとつ実験と検証を繰り返し、第三者に安全性を訴える方法を模索していた。
「この隙間は数ミリ違うといった差なので、見た目は従来の製品とほとんど変わりませんが、苦労が多かった分、大きな達成感を得ました」
顧客から安全性を要求されることが増えたが、それ以上に厳しい目をもって確認し、顧客が気づいていない側面からの提案が積極的に行えるようになったのだ。
これらの実績を評価され、2010年から主査に昇格。メンバーが設計した図面のすべてを確認するポジションだ。単にミスを指摘するだけではなく、その原因を本人に考えさせ、ポンプの基本構造まで遡り、理解を促した。また、日頃からメンバーに声をかけ、相談しやすい雰囲気をつくるように心がけた。
さらに村上さんが自主的に取り組んだのは、設計マニュアルの作成だ。ミスの傾向を分析し、改善策を広めることで、製品の品質向上へと大きく貢献し、メンバー一人ひとりの成長も感じられた。
現在は主査をしながら、難易度の高い製品の設計を手がける。特に液化ガスなど、温度が少し上がると性質が変化するようなものは、精密な温度設定が要求され、今でも容易ではないと語る。
「大型製品の完成品までを自分がつくれることがやりがいです」
村上さんも世界トップクラスの実績を支える主要なメンバーの一人として、さらなる技術向上を目指し続けている。
