

リーマンショック以前の設備投資水準を目指す国家戦略と、長年の超円高から一転し持続的な円安で増える輸出――。モノづくり大国・日本が再び描き始めた成長軌道の中核を担うのが、世界でも有数のGRP(域内総生産)を誇る関西エリアの製造業です。メーカー志望で「機電系技術者として、活躍したい」と思っている学生の皆さんにとって、「知らなかった」で終わらせるにはもったいない、関西のモノづくり産業の強みと魅力をご紹介します。

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ジアの玄関口・関西国際空港、国際港湾の阪神港など産業基盤となるインフラが充実し、大学・最先端研究機関が集積する関西エリアには、電気機器・一般機械(家電、原動機、建設用・農業用機械)・化学・医薬品などの各分野で、世界的な企業が存在しています。特に機械・電子系分野では、全国シェアの60%超を占める(※)リチウムイオン電池をはじめ、エネルギー関連産業の開発・生産を担うプラットフォームとして、大きな存在感を発揮しています。
関西に本社を置く製造業はいま、生産能力と競争力の向上に向け、海外と国内の両面展開で、全国平均を上回る積極的な設備投資を進めています。海外拠点は、アジアを中心とする成長市場の旺盛な需要をチャンスに変えるのが狙いです。一方で国内拠点は、技術・商品開発のイノベーション力、多品種・小ロット・短納期を可能にする高い生産性などを強みに、さらに海外拠点のマザー工場としても、新たな価値や高付加価値を創出する技術力が再評価され、その活用プロジェクトが活性化しています。
輸出・輸入に占めるアジアの比率が高く、今後も持続的な成長が予想されることに、外資系企業も注目しています。関西に進出した外資系企業の多くを製造業が占めるなど、関西のモノづくり力は世界的にも期待が集まっています。
※経済産業省「平成24年生産動態統計」より算出


では、これから期待の業種は何でしょうか? 例えば、電機・電子、機械などのメーカーは、グローバル競争の中で先進技術を意欲的に生み出し、新製品の開発に注力しています。国内の有力大学との産学連携も活発で、その中にはまさに夢の技術がたくさんあります。今後、あらゆる分野で技術革新の波がやって来るといっても過言ではないでしょう。

元々、関西には世界ナンバーワン、オンリーワンの技術・製品が目白押しです。世界に通用する固有の技術を活かした事業を通じて、堅実な経営を続けている企業が数多くあります。電機・電子、機械のほかに、化学、金属などにも優良企業は多く、企業研究を進めていくと、「こんなスゴイ企業があったのか」と驚かれるはずです。
よく誤解されがちなのが、化学・素材メーカーなどでは「機電系出身者は入社してもメインプレーヤーになれない」ということ。しかし、実際はそんなことはありません。たしかに新素材の探索など基礎研究は化学の専門家の領域でしょう。しかし新製品は研究所で開発された後、量産のための生産設備が欠かせません。設備設計や施工管理の中心的な役割を担うのが機電系の技術者です。
また、近年は新製品を早期に市場に出す必要性から、基礎研究の段階から生産技術の専門家が関わるケースが増えています。さらに、環境対策を踏まえた既存設備のリニューアル、そして海外拠点での新規工場の立ち上げなど、機電系の活躍の場は増える一方です。

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電系技術者の可能性は大企業だけでなく、中堅・中小企業でも見逃せません。関西の元気な中小企業の中には、社長のリーダーシップのもとで得意分野を伸ばし、自社独自の技術・製品の開発に力を入れているところがあります。
インターネットの普及で情報の広がりが早い今、その気になれば中小企業でも最先端の技術をいち早く導入することが可能な時代です。しかも、意思決定が早い上に、組織的に小回りが利く中小企業の方が、革新的な技術・製品を生み出す上ではむしろ好都合といえます。
就職活動ではまずは先入観を持たずに、数多くの出会いを心掛けることが大切です。大企業から中堅・中小まで、勉強のつもりでさまざまな会社を訪ねてみましょう。聞いたことのない社名の会社でこそ、思わぬ発見がきっとあるはず。そして、それが自分の未来を開くチャンスにつながるかもしれないのです。
