
社会に出て見つけた「やりたいこと」
銀行員から公認会計士へ
政治経済学部 2011年卒業
キャリア観形成に資する情報の提供を目的としているものであり、
早稲田大学キャリアセンターが掲載企業への就職を推奨しているわけではありません。
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EY新日本有限責任監査法人(以下、EY新日本)の栗栖加奈さんはもともと地方銀行に勤務していたそうですが、受験勉強のサポートを受けながら監査法人で働ける「監査トレーニー制度」を活用して公認会計士試験に合格し、現在は大手企業の監査業務に携わっています。公認会計士を目指したきっかけやトレーニー時代の経験、そして現在の業務にかける意気込みなどについて伺いました。

2011年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。同年、地方銀行に就職。2017年にEY新日本に入社。翌年公認会計士試験に合格し、2020年に公認会計士登録。現在は監査チームのシニアスタッフとして大手企業の法定監査などに従事している。
新卒で入社した銀行での営業経験。
公認会計士を目指すきっかけに
以前は地方銀行に勤務しており、主にリテール営業として資産運用や相続など、お客様の目的に合わせて金融商品などを販売していました。そのときに税理士やFPなどさまざまな資格を持つ専門家と一緒に仕事をする機会がありました。彼らがいるとお客様の理解も深まり納得して取引いただける場面が多く、専門的な知識の必要性や資格を持つことの効果を感じていました。そこから自分もいずれは士業を目指してみたいと思うように。また、学生時代の同級生が公認会計士として監査法人で活躍しており、若いうちから大手企業の要職の方々に対して堂々と仕事をしている様子を耳にし、公認会計士という仕事に興味を持つようになりました。
ただ、すでに社会人になって数年経っていましたし、地方銀行で働きながら公認会計士試験の勉強をするのは難しいと考えていました。何か良い手がないものかと考えていたときに見つけたのが、EY新日本の監査トレーニー制度でした。これは資格試験の勉強をしながら実務経験を積める制度のことで、キャリアを中断せず勉強できること、法人説明会でさまざまな経歴を持っている人がいることに魅力を感じ、2017年にトレーニーとしてEY新日本に入社しました。

仕事と勉強を両立し合格。
常に専門知識をアップデート
トレーニー時代は、平日は9時半の出社前に1~2時間ほど勉強してから就業し、17時半に終業後4~5時間ほど勉強していました。学生時代、勉強はほどほどだった私にとっては、人生で最も勉強した日々でした。でも家族や周囲の皆さんも応援してくれましたし、公認会計士試験の前に休暇を取れる制度を活用できたのもありがたかったですね。また、実際に監査業務を経験しながら勉強に打ち込むことができるので、勉強にも身が入りやすく、その内容をスムーズに理解できたように思います。
トレーニー時代から一貫して担当しているのが法定監査業務です。法律によって開示が義務付けられている、上場会社をはじめとした企業の財務諸表などが、ルールに則って、適切に作成されているかどうかをチェックするのが主な仕事です。財務諸表はステークホルダー(投資家や債権者、取引先など)の意思決定につながる重要なものなので、日々責任感を持ってこの業務に臨んでいます。
担当している業界はエンターテインメントや飲食、ウェブ広告、小売など幅広く、それぞれの業界の内情を知ることも重要です。監査業務の基本的な流れは変わらないのですが、業界特性を知っていないと、どういったところにリスクがあるかを把握できず、不正などを見落とすことにつながってしまいます。
もちろん最新の会計基準や法改正のアップデートもしていかなければならず、合格後も「思った以上に勉強していかなければいけないな」と感じたものです。

相談しやすいチームづくりを。
クライアントとは信頼関係を
監査が当初の計画通り進まないことは多々あります。例えばクライアントのビジネスや業績、組織体制に影響を及ぼすような状況が生じれば、追加の監査対応の検討など監査計画の見直しを適時に行っていく必要があります。クライアントのスケジュールと監査チームのスケジュールにずれが生じ、人員不足や時間に追われることもあります。言葉にすると簡単なようですが、監査報告書の提出期限は決まっており、限られた時間の中で対応すべきことは非常に多く、自身の力不足に頭を抱えることも多い毎日です。
そのような状況を乗り越えるために大切なのは、周囲とのコミュニケーションです。チームにおいても、クライアントに対しても、活発なコミュニケーションとお互いの信頼関係がなければ、環境の変化や相手の意向、動向をタイムリーに把握することができず、トラブルにつながりやすくなってしまいます。コミュニケーションは監査を進めていく上で最も重要な要素だと感じています。
現在は現場主査という、監査現場の取りまとめ役もしています。メンバーが相談しやすく働きやすいチームづくりはもちろん、上司とのコミュニケーション、クライアントからの相談事や質問への対応など、さまざまなことを取りまとめ、調整していくことが求められるので、日々奮闘しています。

やりたいことが見つけられず焦った大学時代。
スタート遅くても関係ない
大学時代は居酒屋でアルバイトをし、卓球サークルで活動しながら、政治学ゼミで学び、楽しい大学生活を送っていた一方で、大学3年生の就職活動時は、自分が何をやりたいかを見つけることができず焦っていました。しかし、私のように最初からやりたいことがはっきりしていなくても、実際に働き始めたり、環境が変わったりすることで見えてくることもあります。
公認会計士は、学生のうちから努力して合格し、卒業と共にキャリアをスタートする人も多く、そういった人たちと比べれば私の会計士としてのスタートは遅いです。しかし、年齢は関係ないと言えるのもこの資格の魅力。そんな私にしか語れない経験や人間味もあると思うので、大切にしていきたいです。
監査業務は、世間からすればきちんと行っていて〝当然〟の仕事。今後は自信をもってこなせるようになると共に、さらに一歩踏み出し、M&Aをはじめとしたアドバイザリー業務などにもチャレンジしてみたいと思っています。他方、監査業務のデジタル化にも興味があり、AIや監査ツールの開発などに関わってみたいという思いも。EY新日本には、独立も含め、さまざまなチャレンジを応援してくれる風土があるので、今はとにかく自身のスキルを磨くべく、毎日の仕事に全力で取り組みたいと思っています。

政治学科では現総長の田中愛治先生のゼミに所属していたのですが、ビックリするほど優しい先生で、私の卒業単位を真剣に心配していただいたことは忘れられません。
また、好きな場所といえば、中央図書館が思い浮かびますね。学生時代には友人たちとテスト前に勉強をしたり、資料を探しに行ったりしていました。静かで居心地が良いので、卒業後も公認会計士試験の勉強に取り組んだりしていたほどです。サークル活動に関しては、卓球同好会に所属し、卓球そのものが楽しかったのはもちろん、練習後の飲み会が最高に楽しいひと時でした。私のお気に入りの居酒屋は学生に優しくて、いろいろと融通を効かせてくれたので、楽しい思い出がたくさん詰まっています。中央図書館にも久しく行っていないので、学生時代の仲間たちと一緒に出かけてみたいですね。