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最終更新日:2024/7/5
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部署名技術部音響課
勤務地東京都
大学卒業後3年ほど、フリーランスの舞台音響家として活動していましたが、得るものと共に失うものも多く、生き方に迷うことがありました。そんな中、大学時代の恩師から職員募集のお話を伺ったのが、新国立劇場を志したきっかけです。調べてみれば、新国立劇場は貸劇場の公演だけでなく、自主制作の公演を行っており、常に一流の舞台が生まれ、上演されていく場所でした。職としての安定も理由のひとつでしたが、直接作品に関わり、よりよい舞台を追求できる場であるということが最大の魅力でした。
主な業務としては、主催公演の音響デザインやオペレート、劇場の音響機材の管理、貸劇場公演での制作元から来た音響スタッフのサポート、設備の改修などに向けた書類作成といったものです。音響ブースから「観客の心が動いた」と感じられた瞬間が何よりも嬉しく、ときには自身も一緒に震えたりしながらオペレートをすることもありますが、舞台は人によって見えるものが変わる鏡のようなものですから、そういう時こそ冷静さを忘れてはいけないと己を戒めています。初めて担当した演劇公演の音響デザインが、小劇場では珍しいセンターステージ(中央の舞台を客席が囲む形)の形状でした。四方向の客席それぞれに向けたスピーカーを仕込むため、美術や照明との兼ね合いや、機材の数量やスペックの限界、作業時間などの現実的な制約と、やりたいことの折り合いをつけ、着地点を探すのがとても大変でした。不思議なことに翌年も同じ舞台形状の公演の担当が続き、反省を活かすことができました。
演劇のフルオーディション企画や、古典オペラやバレエの新演出など、古いものを守り伝えていくだけでなく、変化を恐れず新しい試みを行っていく、子供や学生など新たな層に舞台に触れる機会をつくるなど、社会に対して重要な役割を担っている劇場のひとつだと思います。それに加え、労働環境の改善や、育休取得の推進なども行っており、安心して働ける場にしていこうという気概を感じます。
高校演劇の延長で芸術学部の演劇学科に入りましたが、当初は演劇のどの仕事をしたいかを決めかねていました。大学の先輩やフリーランスの方に仕事を頂きながら、演出部、映像、音響と渡り歩いた結果、最もしっくりきた音響に落ち着きました。フリーランスになるつもりでしたので、大学生活の後半は最低限の単位を取りつつ、就職活動の代わりに、ほとんどの時間を学外の演劇の現場で過ごしました。
大学に入ってすぐに「舞台は総合芸術である」と学びました。劇場で働いていると、俳優や技術スタッフだけでなく、営業、会計、広報、設備管理、外部の保守点検業者など、様々な人が関わることで公演が成り立っていることを肌で感じます。年数を重ねる中で他部署との連携が重要となる業務の割合も増え、今後は目の前にある作品だけでなく、視座を高め、劇場全体のことを捉えて行く必要があると感じています。私は偶然好きなことと仕事が一致しましたが、同僚の中には「音響は初めて」「以前は違う仕事をしていた」というような背景の持ち主もいて、必ずしも経験が必須というわけではありません。舞台芸術を上演し、受け継いでいくことは、科学の発展と同様に、過去と現在、未来を繋げ、より良い世界を作っていく助けとなる仕事です。志ある方が勇気を持って飛び込んでくれることを期待しています。