薬学・医療系
INDEX
どんな会社があるのか?
製薬業界はグローバル化が進む中で、メガファーマと呼ばれる国際的巨大企業間の競争が激しく、新薬開発ではベンチャー企業が急成長することもあるなど、非常にアクティブな市場環境にある。また、専門化した治療薬やジェネリック、OTCなどの製品分野も拡大を続けている。感染症パンデミックでは、ワクチンや治療薬開発で、国際経済を牽引するほどの規模の競争が行われている。
高齢化社会の到来によって医療費支出も伸び、製薬業界や医療機器業界の成長性は高い。薬学系学生は、食品、化粧品・家庭用品、健康関連製品などのメーカーなどでの採用例も増えている。薬剤師業務は、病院、調剤薬局、ドラッグストアなどで幅広くある。
医療系職(医師、医療技師、看護師、介護職)は、病院、介護施設などの医療現場のほか、医療機器メーカーや製薬会社、健康関連企業にも活躍フィールドは広がっている。
- メーカー
- 農林・水産、食品、化学・石油、薬品・化粧品、精密・医療機器
- 流通・小売
- 百貨店・スーパー・コンビニ、専門店
- サービス・インフラ
- 医療機関・調剤薬局、福祉サービス、専門・その他サービス、コンサルティング・シンクタンク・調査
- ソフトウエア・通信
- ソフトウエア・情報処理・ネット関連
- 官公庁・公社・団体
- 官公庁・公社・団体
どんな仕事があるのか?
薬学系では、製薬会社での医薬品の開発、製造のほか、医療機器や食品、化粧品会社でも同様の業務で採用されることもある。製薬会社の臨床開発業務や、MR(医薬情報担当者)も広く人材を求めている。
薬剤師資格を取得できる場合は、従来からある薬剤師業務、病院の院内薬局、調剤薬局のほか、ドラッグストアも求人は多い。高齢化社会で医療・健康関連市場は拡大しているので、薬剤師以外でも広い意味での化学の知識や医療知識を活用して営業や企画などで活躍の道もある。
医療系学生には、病院などの医療機関や介護施設で、医師、医療技師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護職、歯科衛生士などとして働くほか、医療機器、介護機器・製品の製造や技術開発に携わるなどの仕事がある。
該当する職種
MR
何をやる仕事?
MRとは、Medical Representative(医薬情報担当者)の略。自社が開発した医薬品情報(効能・特質・使用法など)を、医師や医療スタッフに伝える業務。MRが提供した情報を元に、顧客が製品を発注することで業務が成り立つ。一般顧客ではなく医師や薬剤師などを相手にすることが多いので、高度な専門知識を備えている必要がある。自社製品はもちろん、競合製品についての理解も必要となる。なお、MRになるにはMR認定試験に合格する必要がある。製薬会社では受験対策など資格取得支援制度がある。
また、医療機器営業は、薬品ではなく医療機器を販売する業務。巨大な機器から消耗品まで、取り扱い品目は会社によって異なる。医療機器は精密機械のため、導入準備やアフターサービスまで営業担当が関与することも多い。自社製品だけでなく、他社製品や業界動向の知識は欠かせない。
一方で業務のIT化、オンライン化が急速に進んでおり、従来の対人折衝から大きくビジネス形態が変化する途上にある。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 薬学部を中心とした理系が有利とされるが、文系出身者も少なくない。
- MRの場合、入社後にMR資格認定試験に合格することが必須。会社に教育制度がある。
- 営業的なセンスが重要なので、高いコミュニケーション能力と、顧客と信頼関係を築ける接遇能力が必要。
- 業務のIT化が急速に進んでおり、ITスキルの重要度が非常に高まっている。
- 顧客が専門家である医師や医療職なので、常に最新の医療関連情報を収集し、知識習得を心がける。
薬剤師
何をやる仕事?
薬剤師は、医薬品の調合や確認を行うスペシャリストであり、所属する組織によって業務は異なる。調剤は、医師の出した処方箋に基づき薬品を調合し、患者への服薬指導を行う業務。調剤薬局や院内薬局に勤務する。薬局やドラッグストアでは、処方箋が不要の薬品についての服薬指導や接客を行う。要指導医薬品のような、有資格者がいないと販売できない薬品もある。ドラッグストアでは、医薬品以外にもさまざまな取扱商品があるので、一般商品の販売も行う。
薬剤師業務ではないが、企業に勤務して、専門的な薬学知識を活かして医療系専門職として活躍する道もある。MRや治験コーディネーター、医療コンサルタントなど、さまざまな可能性がある。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 薬学部薬剤師養成課程(6年制)を修了し、薬剤師国家試験に合格することが必要。
- 常に新しい医療情報、薬品情報などを積極的に収集する姿勢。
- 患者や顧客との意思疎通ができるコミュニケーション能力。
登録販売者
何をやる仕事?
登録販売者とは、OTC医薬品(Over The Counter【カウンター越しの】の略。医師の処方箋がなくても購入できる薬のことで、要指導医薬品と一般用医薬品がある)の一般用医薬品のうち、第2類医薬品と第3類医薬品の販売が認められた専門資格を有する者のこと。以前は薬剤師しか販売できなかった一般用医薬品の第2類医薬品と第3類医薬品だが、2006年の薬事法改正によって、その販売を認められた登録販売者が誕生した。
流通している一般用医薬品の多数を占めるのが第2類医薬品と第3類医薬品であることや、薬を扱う店舗がドラッグストア以外にもスーパーマーケット、ホームセンター、コンビニエンスストアなどに広がっているため、登録販売者のニーズは高まっている。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 登録販売者試験に合格することが必要。試験は誰でも受けられる。
- 登録販売者試験に合格した後、販売従事登録証を得て仕事をするには過去5年以内に2年以上の実務経験が必要となる。実務経験がない場合は、登録販売者として働き始めて2年が経つまでは、「研修中」として業務可能。
- 薬品に関する基本知識など専門知識だけでなく、店舗勤務が前提となるため、顧客とのコミュニケーションや店舗運営業務全般についても能力が求められる。
介護職・ヘルパー
何をやる仕事?
介護職は、高齢者や障害者の自立を支援する仕事で、具体的には、食事、入浴、排泄、着替え、散歩、買い物の手助け、さらに家族に対する介護方法のアドバイスなどを行う。高齢者福祉施設や障害者福祉施設などの社会福祉施設、老人保健施設や療養型病床、病院や医療施設が活躍の場で、ケアワーカー、ケアスタッフ、介護職員、介助員など呼び名はさまざまだ。
また、在宅の高齢者や障害者宅を訪問してサービスを提供する「ホームヘルパー」も、介護に携わる職種。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 福祉に関する国家資格として「社会福祉士」、介護に関する国家資格として「介護福祉士」がある。「社会福祉士」や「介護福祉士」を名乗って仕事をするには国家資格を取得している必要がある。
- ホームヘルパーになるには、「介護職員」として働くための資格を持っている方が有利。実際の求人では、未経験者や無資格者もOKとして募集しているケースもあるが、仕事内容が制限されてしまうこともあるので、まずは「介護職員初任者研修」を取得することが望ましい。
- 自治体や各種の団体で実施している「介護職員初任者研修」を受講し、修了試験に合格すると、「介護職員初任者研修」の資格が取得できる。
- 福祉士、介護士、ホームヘルパーの仕事においては、他人に対する思いやりの心が基本となる。
医療ソーシャルワーカー
何をやる仕事?
「医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)」は、医療と福祉を結び付けるプロフェッショナルとしてニーズも高く期待も大きい。医療機関や福祉関連施設などで患者やその家族から寄せられる、経済的・心理的・社会的な相談に乗り、問題解決を図り援助することで社会復帰を促進するのが仕事。相談には、「医療費が払えそうにないが何か方法はないか」、「転院後のリハビリ施設を紹介して欲しい」、「退院後に家族が在宅での介護に不安を抱えている」といった具体的な悩みもあれば、「誰かと話したいけど話し相手がいない」、「心配事が多くてどうしたらいいか分からない」といった精神的なものも多く、患者の病状や状況によってさまざま。まずは相手の話をよく聞き、悩みや相談内容を理解することから始まり、ケースバイケースで問題解決を図る対応力や解決力が求められる。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「医療ソーシャルワーカー」には、福祉にかかわる専門的な知識が必要になる。公益財団法人社会福祉振興・試験センターが試験を行う「社会福祉士」や「精神保健福祉士」といった国家資格を求められることが多い。
- 社会福祉や老人福祉に関する知識に加えて、心理学や相談内容に関連する法律など幅広い知識が求められる。
- 問題解決のために、さまざまな関係機関やスタッフに連絡・相談を行うことが多い。自らネットワークを構築していくリーダーシップやコミュニケーション能力は重要になる。
- さまざまな状況を抱えた患者の社会復帰に向け、ライフプランを構築するプランニング力も必要。
理学療法士
何をやる仕事?
理学療法とは「病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人や障害の発生が予測される人に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法」のこと(公益社団法人日本理学療法士協会のWEBサイトより)。医師の指示の下に理学療法を用いて、身体が不自由になった患者の機能回復を図るのが「理学療法士」(英語のPhysical Therapistを略して「PT」とも呼ばれている)の仕事。
一般病院やリハビリテーション施設、福祉施設などに勤務し、主に、寝返る・起き上がる・立ち上がる・歩くといった日常生活に必要な基本動作の改善を目指し、社会復帰を手助けする。身体の自由が利かない患者に対して根気強くリハビリテーションを行うので、辛抱強く常に前向きで仕事に取り組む姿勢が重要となる。
また、患者だけでなく、患者と日常的に接する時間が長い「看護師」に身体の支え方を指導したり、ほかの「療法士」などと連携を取りながら業務を行ったりすることがある。なお、座る・立つ・食べる・歩くといった基本的な身体機能の回復を目指す「理学療法士」のほかにも、しゃべる力や聞く力の改善を目指す「言語聴覚士」や、手芸や工芸などでより複雑な身体の動きができるようリハビリテーションを行う「作業療法士」といったスペシャリストもいる。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「理学療法士」になるには、厚生労働省が行う「理学療法士国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 相手の気持ちや立場を理解するといった気配りが求められる一方で、時には厳しく指導することも求められる。責任感や使命感も必要。
- 患者や患者の家族はもちろん、医師や看護師などの医療スタッフとの連携も大切なので、コミュニケーション能力は重要。
- 目に見える変化や回復までは時間がかかる。じっくりと長期間患者と接しながら、反応や変化を見つけ出し、リハビリテーションのレベルを少しずつ上げていく根気強さも求められる。
視能訓練士
何をやる仕事?
「視能訓練士(CO:certified orthoptist)」は、医師の指示の下、視能検査や視能訓練を行う。視能検査とは、視力、視野、眼圧、色覚、光覚など目の機能に関する検査。検査結果は医師に報告され、診断・治療に生かされる。視能訓練とは、両眼の位置(視線・眼位)にずれが生じる斜視のため、立体的に物が見えない、物が二重に見えるといった症状や、視力が低い弱視の視機能を改善するための訓練のこと。
視能訓練士は、医師と相談の上、訓練プログラムを作成し治療機器や器具を操作して視機能回復に取り組む。また近年は、高齢化による白内障・緑内障の発症や、糖尿病などの生活習慣病による視力低下といった患者が増えている。こうした患者に対して、視力の維持、回復訓練、症状の進行を抑えるための指導(リハビリテーション指導)を行ったり、早期発見・早期治療の観点から地域や学校、職場などで行う集団検診に参加したりするケースも増えている(検診業務)。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「視能訓練士」になるには、「視能訓練士国家試験」に合格する必要がある。
- 患者は小さな子どもから高齢者まで幅広く、検査やリハビリにおいて安心感を与え、正確にこちらの意図を伝えられるコミュニケーション力、相手の症状を感じ取る洞察力が重要。
- 検査に使われる機器は年々、高度化、複雑化しており、眼科学や検査データの分析だけでなく機器の特性や操作方法も習得する必要がある。
作業療法士
何をやる仕事?
「作業療法士(OT:Occupational Therapist)」の仕事は、心や身体に障害がある人に対して、日常生活に必要な能力を高める訓練や指導を行うこと。食事やトイレといった生活の中で行われる活動である「応用能力」、地域活動や就労・就学の準備のための「社会生活適応能力」の維持や改善を目指す。
主な勤務先は、一般病院やリハビリテーション施設、高齢者施設、心療クリニック、養護学校などで、医師や看護師、理学療法士、介護福祉士などと連携を取りながら、患者それぞれの障害の程度に応じてメニューを作成し、リハビリテーションを行う。具体的には、患者の趣味や嗜好などを考慮して、手工芸(折り紙・木工・陶芸・編み物など)や芸術(音楽・絵画・塗り絵・書道など)、遊び(囲碁・将棋・トランプ・パズルなど)、スポーツ(ダンスやゲートボールなど)といったさまざまな作業活動を通じて「機能」や「能力」の改善を進めていく。
なお、「理学療法士」は、繰り返しの歩行訓練や温熱マッサージといった目に見える物理的な療法によって、歩く・立つ・座るといった基本的な動作機能の回復を目指しているが、「作業療法士」の場合は、患者が興味を持てそうな各種の作業活動を通じて、日常生活をスムーズに送るためのより細かく応用的な心身の回復を目指しており、心理学的要素も取り入れられている。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「作業療法士」になるには、厚生労働省が行う「作業療法士国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 患者の年齢や障害の程度はさまざまで、相手の状況に応じて個々にリハビリテーションメニューをつくれる洞察力や応用力が必要。また、繰り返し説明や作業を行うことも多いので、根気や責任感、使命感も求められる。
- 患者や患者の家族はもちろん、医師や看護師などの医療スタッフとの連携も大切なので、コミュニケーション能力は重要。
- 目に見える変化や回復までは時間がかかる。じっくりと長期間患者と接することで、反応や変化を見つけ出し、リハビリテーションのレベルを少しずつ上げていく粘り強さも求められる。
社会福祉士
何をやる仕事?
「社会福祉士(SW:Social Worker)」は、精神保健福祉士、介護福祉士とともに福祉の国家資格(通称三福祉士)の一つで、ソーシャルワーカーともいわれている。社会福祉士の仕事は、身体的あるいは精神的な障害、環境上の理由などが原因で、日常生活に何らかの支障がある高齢者や障害者、子どもなどの相談に乗ったり、助言や指導を行ったりすること。まずは、利用者本人や家族と面談し、どのような要望があるのか、それに対してどういった福祉サービスを提供できるのかを具体的に相談し、個別の支援計画書を作成する。
一人ひとりに合ったサポートの方法を考え、日常生活の質の向上を目指す。その上で、補助金の受給や施設への入居、補聴器や車いすなどの支給、介護士の派遣をはじめとした福祉サービスを受けられるように援助を行うことで、問題の解決を図る。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「社会福祉士」になるには、「社会福祉士国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 人と接するのが得意であることが重要。利用者や家族と、さまざまな社会福祉施設や行政機関との橋渡し的な業務が多い。多くの人と接することが苦手では務まらない。
- 相談相手は何らかの問題を抱えており、最適な支援や助言を行うには相手との信頼関係が欠かせない。相手の話をしっかりと聞き、ニーズを酌み取りさまざまな角度から問題解決に当たる積極性も求められる。
言語聴覚士
何をやる仕事?
「言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)」は、「言語障害(普通に話せない・話が理解できない・文字が読めない)」、「聴覚障害(話し声や音が聞き取れない)」、「音声障害(声帯を失い声が出ない)」、「嚥下(えんげ)障害(食べ物をうまく飲み込めない)」といった症状に対応するスペシャリスト。病院やリハビリテーション施設が主な勤務先となる。
生まれつきの障害や、脳梗塞・脳卒中などの病気や事故などによる後遺症で、「失語症」や「先天性難聴」のように、話すことや聞くことに不自由がある人たちに対して、言語能力や聴覚能力の回復を目指してリハビリテーションを行う。具体的な業務は、「検査」、「評価」、「プログラムの作成」、「トレーニングの実施」。まずは、患者の障害について詳しく調べ、分析することが重要。
例えば、言葉を話せなくなる症状には、心理的なものも含めてさまざまな原因がからみあっていることも多い。さまざまな「検査」を行いながら問題の原因を探り、状況を把握して「評価」を行う。その後、医師の診断や検査結果から治療方針を決定し、一人ひとりに合った「プログラムの作成」をする。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「言語聴覚士」になるには、厚生労働省が行う「言語聴覚士国家試験」を受験し合格する必要がある。
- 患者の年齢や障害の程度はさまざまで、状況に応じた対応が求められる。状況をしっかり判断できる洞察力が必要。また、繰り返し説明や作業を行うことも多いので根気や責任感、使命感も求められる。
- 患者や患者の家族はもちろん、医師や看護師などの医療スタッフとの連携も大切なので、コミュニケーション能力は重要。
- 目に見える変化や回復までは時間がかかる。じっくりと長期間患者と接することで、反応や変化を見つけ出し、リハビリテーションのレベルを少しずつ上げていく粘り強さも求められる。
精神保健福祉士
何をやる仕事?
「精神保健福祉士」は、社会福祉士、介護福祉士とともに福祉の国家資格(通称三福祉士)の一つで、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)とも呼ばれている。社会福祉士が福祉全般を担うのに対して、精神保健福祉士は精神障害者の福祉や保健分野に特化した専門家で、医師や看護師のように治療を専門に行う医療専門職ではない。精神上の障害があって治療を受けていたり、社会復帰の促進を図る施設に入所したりしている人たちの相談に応じ、助言や指導、日常生活へ適応するために必要な訓練などを行う。
福祉専門職として医療機関と家庭、地域社会との橋渡し役として活躍している。なお精神障害とは、統合失調症、アルコールや麻薬などによる急性中毒やその依存症、知的障害、うつ病や認知症といった精神疾患のことをいう。
精神保健福祉士の仕事は、病院内での限られた人たちとの作業ややりとりが中心というイメージがあるが、地域の作業所や病院、行政機関などの施設を広くサポートすることが求められる仕事であり、積極的な活動が期待されている。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 精神保健福祉士になるには、「精神保健福祉士国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 外見で判断するのではなく相手の人格全体を尊重する人権意識は極めて重要。また、本人や家族だけでなく、医療機関や福祉施設、行政機関との橋渡し的な業務も多いため、積極的に多くの人と接するフットワークも求められている。
- 社会福祉の中でも精神障害者が抱えている問題はとりわけ複雑で、社会復帰にも困難が伴うことが多い。常に相手に寄り添いながら優しい心で接し、社会復帰を目指す必要がある。
看護師
何をやる仕事?
病院やクリニックなどで医療補助や患者のケアを行う「看護師」。医師の指示に基づいて、外来患者の診療をサポートしたり、入院患者の看護や援助を行ったりする。患者の病状を医者に報告したり、患者の健康管理や療養の相談、心のケアを行ったりと、医療現場でとても重要な役割を果たしている。
また、患者だけでなく、患者の家族へ連絡を取ったりケアを行ったりすることも多い。さらに、患者と近い立場で接するので、患者の異変に一早く気付くことになる。医師や看護師が少なくなる夜勤時などには、患者の容態によって、その場で適切な対処を求められることもある。医師と同様に人の命を預かる責任の重い仕事だ。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 看護師になるには、厚生労働省が所管する「看護師国家試験」を受験し、合格しなければならない。
- 年齢や性別、病気や症状の異なるさまざまな患者がいるので、小さな変化も見逃さず、常にどういう状態なのかを観察し把握する洞察力。また、症状や状況を患者から聞き出すコミュニケーション能力も重要。
- 患者や患者の家族との関係においては、厳しい現実に向き合わなければならないことも多い。相手を気遣う気持ちはもちろん、はっきりと事実を告げる精神力、状況をしっかりと説明できる力なども必要。
- 人の生命にかかわる可能性のある難易度が高い、幅広い業務を正確かつ迅速にこなす能力。
救急救命士
何をやる仕事?
病人やけが人を医療機関に搬送するまでの間、応急措置を施し、プレホスピタルケア(病院前救護)を行う。国家資格「救急救命士」が必要。
救急救命士は消防士の一種であり、医師の指示の下、生命の危機回避のための救急救命措置を行う。止血や呼吸のための気道確保、輸液ほか、医師の指示による特定医療行為も救急車内で行うことができる。
専門知識はもちろん、生命に直結する深い責任感、また救急という時間との勝負もあり、冷静な判断力など、危機における高い対応能力が求められる。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 消防士の一種のため、まずは消防士になり、救急業務実務経験を積んだ後、養成課程を経て「救急救命士」の資格を取得する。あるいは専門の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格後、消防士採用試験を経て就く道がある。
- 緊急事態に対応するため、時間、場所、天候を選ばない対応を行う。過酷な条件に対応できることはもちろん、消防士でもあることから体力は必須。
- 患者本人が十分な意思疎通を取れないときや、家族との連携が必要とされる場合もあるなど、緊急時に冷静かつ共感を伴った接遇ができる高いコミュニケーション能力が求められる。
- パンデミックなど、同時に多数の対応を求められるような新たな状況も生まれるなど、予定通り、想定内では進まない事態にも対応できる高い適応能力も重要である。
介護福祉士
何をやる仕事?
「介護福祉士」はケアワーカー(CW:Care Worker)とも呼ばれ、社会福祉士、精神保健福祉士とともに福祉の国家資格(通称三福祉士)の一つ。日常生活が不自由な高齢者や、身体や精神に障害がある人たちに、食事や入浴、トイレの介助などを行い、できる限り自立した生活を送れるように手助けするのが主な仕事。
介護を必要とする人たちやその家族に対して、日常生活でどのように介護をすればよいかという相談に応じたり、提案をしたりといった役割も担っている。なお、介護福祉士は、専門の養成施設や学校を卒業するか、長時間の実務経験を経て国家試験に合格する必要がある。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 介護福祉士になるには「介護福祉士国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 人を世話するのが好きな人が向いている。常に人と接するため、人が好きであることは大前提。一方でストレスがたまる仕事でもあり、自分の気持ちをコントロールしてストレスをうまく発散できることも大切。
- 福祉に対する情熱を持ち、常に相手の立場に立って物事を考え、相手を包み込む包容力が必要。一方で、介護の現場は生易しいものではなく非常に厳しい。肉体的にも精神的にもタフでなければならず、忍耐力も求められる。
診療放射線技師
何をやる仕事?
病院などの医療機関で検査に欠かせない放射線装置(レントゲン撮影機器やCTなど)を使い検査を行うプロフェッショナルが「診療放射線技師(RT:Radiological Technologist)」。医療において放射線を使う行為はもともと医者が担当していたが、医療の専門化が進んできたこともあって、放射線を使った機器の操作は、高度な放射線検査の技術を身に付けた「診療放射線技師」がもっぱら行っている。
主な勤務先は病院や診療所になるが、医療機器メーカーの開発部門、原子力発電所、検査機関などもある。放射線装置といえば、X線撮影(レントゲン撮影)がよく知られているが、今ではX線を使って身体の断面を撮影するCT(コンピューター断層撮影)検査のほか、微量の放射性物質を含む薬を用いて臓器の働きを検査したり、癌の診断にも有効なRI(ラジオアイソトープ)検査、磁石と電波を使って身体の断面を撮影するMRI(磁気共鳴画像)検査についても「診療放射線技師」が操作を行っている。
こうした操作を行うには、放射線の専門知識はもちろん、解剖学や生理学などの知識も必要。さらに、こうした機器はコンピューターによって制御されているので、コンピューターの取り扱いや知識に馴染むことも求められている。また、微量とはいえ、X線や放射性物質の取り扱いには危険が伴うため、慎重さや注意力は極めて重要になる。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「診療放射線技師」になるには、厚生労働省が行う「診療放射線技師国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 放射線医療に関する専門知識、医学・生理学・解剖学などの知識、コンピューターに関する知識など、幅広い知識の習得と学習が求められる。
- 検査に不安を抱く患者の気持ちを和らげる気配りや会話術に加え、スムーズに検査を行う説明力やコミュニケーション能力は重要。
- 検査中に異変がないかを見極める注意力と洞察力も必要。
臨床検査技師
何をやる仕事?
医師の指示に基づいて、病気の診断に欠かせない臨床検査を行う専門家が「臨床検査技師」(MT:Medical Technologist)。主な勤務先は病院やクリニック、検診センターとなるが、ほかには製薬会社や病院などから検査業務を委託されている検査センターなどが挙げられる。病院を訪れた患者の病状が軽症だったり、診断しやすいものならば、医師はすぐに治療や薬の処方を行う。
しかし、診断がつきにくかったり、病気の進行具合を調べる場合には「臨床検査」を行う。こうした検査はもともと医者が行っていたが、医療の専門化が進んできたこともあって、高度な機器の操作術や検査知識を身に付けた「臨床検査技師」が、もっぱら行っている。
「臨床検査」には、検査方法によって「生体検査(生理学的検査)」と「検体検査」の2種類があり、「臨床検査技師」はいずれの検査も担当する。前者は、患者に対して機器などを使って直接行うもので、「心電図検査」、「脳波検査」、「呼吸機能検査」などがある。後者は、「検尿や検便」、「血液検査」、「免疫検査(血液を用いて感染症やアレルギーを調べる検査)」、「病理検査(組織や細胞を採集して異常がないか調べる検査)」などが主なもの。医師は、こうした検査から得られたデータや問診などを基に治療方針を決定する。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「臨床検査技師」になるには、厚生労働省が行う「臨床検査技師国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 機器の操作方法や取り扱いに関する専門知識はもちろん、医学・生理学・解剖学などの知識や、コンピューターに関する知識など、幅広い知識の習得と学習が求められる。
- 検査を正確に素早く実施することと同時に、細かなデータを分析するために几帳面でミスのない仕事ぶりが求められる。
- 検査に不安を抱く患者の気持ちを和らげる気配りや会話術に加え、スムーズに検査を行う説明力が求められる。
- 検査では、医師や看護師と密で正確な連携を取ることが大切。協調性やコミュニケーション能力は重要。
臨床工学技士
何をやる仕事?
「臨床工学技士(ME:Medical Enginee/CE:Clinical Engineer)」は、医師の指示に基づいて、重要な医療機器を取り扱う専門職。機器の操作はもちろん、いつでも安心して使えるよう機器の保守・点検も行っている。勤務先としては、病院やクリニック、医療機器メーカーなどが多い。
「臨床工学技士」が取り扱う医療機器は、患者の生命を左右しかねない重要な機器ばかりなので、指示の聞き間違いや操作ミスといった人的エラーは絶対に許されない。責任感と使命感をもって仕事に臨む心構えがなければならない。
医療機器は日々進化し、高度化・複雑化している。「臨床工学技士」は、新しい機器が導入される際に、医療機器メーカーと打ち合わせをしたり、医師や看護師使い方をレクチャーしたりする機会も増えている。高機能な機器を専門に取り扱う「臨床工学技士」が医療現場で果たす役割は高まっており、チームで治療を行うことが多い現在の医療現場に欠かせない存在といえる。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 「臨床工学技士」になるには、厚生労働省が行う「臨床工学技士国家試験」を受験し、合格する必要がある。
- 機器の操作方法や取り扱いに関する専門知識はもちろん、医学・生理学・解剖学などの知識、コンピューターに関する知識など、幅広い知識の習得と学習が求められる。
- 機器の操作では、医師や看護師と密で正確な連携を取ることが大切。協調性やコミュニケーション能力は重要。
- 命に直接かかわる機器の操作を行うので、その責任は非常に重い。ミスを絶対に起こさないという強い気持ちと慎重さは極めて重要。
歯科衛生士
何をやる仕事?
看護師が医師の治療をサポートするように、歯科医師の治療をサポートするのが「歯科衛生士」の仕事。仕事の内容は多岐にわたるが、大きく分けると、「診療補助」、「予防処置」、「保健指導」の3つの仕事がある。診療補助は、文字通り歯科医師の医療行為を補助する仕事で、指示を受けて治療の一部を担当する。診療中に器具を渡したり、バキューム(治療中に唾液や水を吸い込む機器)を操作したりといった行為などがある。また、治療器具の洗浄や、治療後の後始末なども歯科衛生士の仕事。
予防処置は、歯科の2大疾患といわれる虫歯や歯周病などの予防処置を行う仕事。機械や器具を使って歯石や歯こうを除去したり、虫歯の進行を抑えるフッ素薬などを塗ったりする。保健指導は、患者だけでなく幅広い層の人たちに、虫歯や歯周病にならないための口腔ケアの方法を指導する仕事。保育所、幼稚園、小学校、高齢者施設などに出向いて、上手な歯ブラシの使い方や、食べ方や噛み方などの口腔ケアの方法を指導することも多い。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 歯科衛生士になるには、大学や短大、専門学校などの歯科衛生士養成校を卒業し受験資格を得て、厚生労働省が実施している歯科衛生士国家試験に合格しなければならない。
- 狭い口の中で薬を塗ったり、歯石を取り除いたりといった作業になるので、手先の器用さも求められる。
- 口腔に関する知識だけでなく、基本的な介護の知識や技術を持ち合わせていると役立つ。
- 歯科医師と一緒に治療に当たることが多いので、医師が何をしようとしているかを見通して動くことが求められる。知識だけでなく、知識を上手に生かせる、いわゆる「気が利く」ことが重要。
マッサージ師・はり師
何をやる仕事?
「マッサージ師(あん摩マッサージ指圧師)」は、基本的には器具を使わず、手のひらや指で身体のツボを押したり、もむ・さする・なでる・たたくなどで刺激を与えて血行を促進し、身体のコリや痛みを和らげ症状を緩和する。東洋医学に基づく施術で、自然治癒力や免疫力を高めることで治療を行う。
「はり師」は、髪の毛の太さほどの細いはり(鍼)を使い、全身にあるツボの中から患者の症状に応じたツボを刺激、血流のバランスを整えコリを和らげることで症状を改善する。鍼を刺すことによる直接的な痛みはなく、中には鍼に電流を通して治療を行う場合もある。
いずれも国家資格が必要な仕事で、資格取得には指定された専門の学校で一定期間学習した後に国家試験を受けて合格する必要がある。
どんな能力やスキルが求められるか?
- 幅広い年齢層の患者にアドバイスやカウンセリングを行うのでコミュニケーション能力は重要。また、患者の身体に直接触れて治療を行うので、言葉遣いはもちろんだが、何気ない気配りや配慮も求められる。
- 資格取得後もそれぞれの専門知識や技術を継続的に向上させつつ、解剖学や衛生学、整形外科学といった知識の取得も必要。
- 東洋医学や東洋療法への高い関心。
- 一日に何人も治療するので体力は必須。また、手の感覚を基にツボの位置や患部の状態を探るので、指先の感覚が鋭く手先が器用でなければ務まらない。
公認心理士・臨床心理士
何をやる仕事?
「公認心理士」と「臨床心理士」は、いずれも心理職の資格としてよく知られている。「公認心理士」は、2017年に公認心理士法が施行され、2018年に第1回の試験が行われた比較的新しい資格で、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識および技術をもって、心理状態の観察や結果の分析、相談や助言、指導などを行うのが主な業務。なお、「公認心理士」は心理職では初めてとなる国家資格(文部科学省と厚生労働省の共管)で、民間資格である「臨床心理士」とは異なる。
「臨床心理士」は、民間資格ながら、「公認心理士」が新設される以前は心理職の代表的な資格として長い歴史があり、日本臨床心理士資格認定協会が行う「臨床心理士資格試験」に合格する必要がある。臨床心理学に基づく知識や技術を生かして、人が抱える心の問題に向き合う専門家で、主にカウンセリングを通じて相談者が抱える問題を知り、様々な心理学的療法で解決に向かうようサポートを行う。
「公認心理士」と「臨床心理士」の勤務先には、医療機関の精神科や心療内科、精神保健センター、福祉施設、教育機関、一般企業、刑務所や少年院、更生施設などがあり、活躍の場は多い。
どんな能力やスキルが求められるか?
- いずれの資格も、日常的に研鑽を積み、相談者の心の問題を解決できるように調査や研究を怠らないことが重要。親身になって話を聞き、時には相談者と同じ目線で共感できることも求められる。
- 相談は決して軽い内容でないことが多いので、冷静に話を聞き適切で具体的なアドバイスが行える気持ちの強さが必要。また、気持ちの切替えが上手くできないと自らがストレスを抱えることもある。
- 「公認心理士」は「公認心理士試験」に、「臨床心理士」は「臨床心理士資格試験」に合格しなければならない。